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COLUMN   2017/8/25

できない部下を育てるには3つの「ギリギリ」を考えよう

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仕事のできない部下をどうやって育てればいいのか。
 
部下を持つ管理職であれば、幾度となくこの問題に直面すると思います。
 
部下を育てるには、適切な機会と目標を与え、それを支援していくことが重要ですが、よかれと思って与えた仕事が、部下の成長を妨げたり、不満やストレスの元になったりと、その「適切な機会」のさじ加減がなかなか難しいにも関わらず、「適切な機会の与え方」を学ぶ機会はなかなかありません。
 
実は「ちょうどいい適切な機会」は、部下の3つの「ギリギリ」を意識すると見つけやすくなります。その3つの「ギリギリ」とは何か、確認していきましょう。
 
 
 

1つめ:できるか、できないかの「ギリギリ」

 
1つめは、本人の能力を考えてできるか、できないかギリギリの線…という意味の「ギリギリ」です。
 
人は、「できるかできないか、ギリギリの線」を提示された時に最も努力し、頑張ります。易しすぎる目標だと手を抜いてしまいますし、難しすぎて達成困難な目標だと絶望的になり、努力することを諦めてしまうからです。
 
そこで、仕事ができない部下には、「一生懸命、頑張ればできる」今の能力よりも「少し上」の機会や目標を与えましょう。
 
例えば、今月の営業目標が1000万円で、残り3分の1の日程で500万円のヨミしかない部下に対しては、まずは700万円の売上を努力目標にしてマネジメントしていく、という具合です。営業のように数値化できない目標の場合にも、「少し頑張ればできる」くらいの難易度の課題を見極めましょう。
 
 
ただし、「少し頑張ればできる」というレベルの認識が、上司と部下で一致しているとは限りません。上司が「これくらいなら、頑張ればできるだろう」と思っていても、部下からすればとても難易度の高い機会や課題になっていることもありますし、反対に簡単すぎるのこともあります。
 
与えた機会や目標が部下にとって難しすぎたり、易しすぎたりしていないか、部下の様子をよく見て、確認することも忘れないようにしましょう。
 
 
 

2:自分の能力がギリギリ活かせる場がある…の「ギリギリ」

 
2つめの「ギリギリ」は、新しい分野で、自分の能力が活かせる場がギリギリ残っているという点での「ギリギリ」です
 
新しい課題、機会を与えるときには、「少し頑張ればできる」(=頑張らないとできない)ことも重要ですが、今までの自分の強みや得意なことが活かせる部分を少し残しておくようにしましょう。
 
 
この「ギリギリ」を事例から考えてみましょう。
 
入社4年目で、今成績が伸び悩んでいる営業社員のAさんは、顧客と仲良くなるのが得意なタイプの営業で、新規開拓先でも顧客とすぐに信頼関係を築き、業績を伸ばしてきました。
 
しかし、4年目に入り、既存顧客への深い提案が求められるようになると、顧客の状況を把握してニーズに合う製品を提案する力の弱いAさんは、業績が上がらなくなってきました。
 
このAさんにさらに成長してもらうための新しい機会や課題は、どのようなものだと思いますか?
 
たとえば、Aさんに情報の分析力や提案力をつけてもらいたいからといって、情報収集・分析、企画提案が業務に求められる企画部やマーケティング部に異動をさせてしまうと、Aさんはその強みである顧客対応力を活かすことができません。異動先の業務は全て新しいチャレンジの連続となり、相当な負荷となるでしょう。
 
また、企画提案力が求められるオーダーメイドの特注品を扱うような事業部の営業に異動させる方法もありますが、同じ営業とはいえ、営業スタイルだけでなく扱う製品も異なるため、今までの経験や知識が活かせる場は少なくなってしまいます。
 
このように「自分の能力を活かせる場がない」異動や機会は、「難しすぎる機会・目標」となってしまうので、逆効果になってしまう可能性が高いのです。
 
Aさんのケースでは、同じ製品を扱いながら、企画提案力が求められるような顧客構成に変えれば、同じ製品なので今までの製品知識が活かせるベストな異動になります。

そして、「顧客構成が違う=営業スタイルが違う」点が新たなチャレンジとなるので、「自分の能力がギリギリ活かせる場でのチャレンジ」となります。これは前述の、「少し頑張ればできる」(=頑張らないとできない)ギリギリの線にもなるわけです。

部下の成長を促したい場合には、このように今までの知識や経験が活かせる状況をギリギリ残しておくとよいでしょう。
 
 
 

3:「逃げ場がない」のギリギリ

 
3つめの「ギリギリ」は、「逃げ場がない」ということです。
今までのやり方でもなんとかできる、何とか乗り越えられるような状況であれば、部下は新しいチャレンジをするのではなく、今までのやり方で乗り切ろうとしてしまいます。

それでは、部下の成長を促すのは難しくなってしまうでしょう。

そこで、「今までの知識や経験」は活かせるけれど、「今までのやり方だけではできない」ように「逃げ場」をなくすことも大切です。

たとえば前述の営業4年目のAさんの例なら、「今までの顧客も担当させつつ、提案力が必要な顧客も担当させる」という機会の与え方も考えられるでしょう。しかし、これではAさんには「今までの顧客でなんとか業績をつくればいい」という「逃げ場」ができてしまいます。

そうならないためにも、「今までの顧客だけを頑張っても、目標は達成できない」という「逃げ場がない」状況を作る必要があります。

ただし、この「逃げ場がない」加減は、部下の能力や性格、経験によって異なります。「逃げ場がない」ことで追い詰められ過ぎていないか、または部下が「逃げ場」を作っていないか、きちんと部下の仕事の様子を見るようにしましょう。
 
 
 

できない部下を育てる時には「きちんと部下を見続ける」ことが大切

 
部下を育てるためにちょうどいい機会は、3つの「ギリギリ」を意識すると見つけやすくなりますが、この「ギリギリ」は部下の性格や能力、また状況の変化によって変わっていきます
 
年齢や経験年数が一緒だからといって、同じとも限りません。
また、最初はちょうどよい「ギリギリ」加減だったけれど、環境変化や市場変化によって目標や課題の難易度が上がり過ぎてしまったり、反対に簡単になってしまったりすることもあります。
 
そのため、与えた機会や目標や課題がその部下に合った「ギリギリ」の状態になっているかどうか、上司はしっかり部下を見続けていくことが大切です。
 
できない部下を、叱っても怒っても成長は望めません。叱って怒って成長が促せるくらいなら、今まで十分にその機会はあったはずです。そんな部下こそ、ここで紹介した3つの「ギリギリ」を意識して、新たな機会、課題、目標を与えてみましょう。
 
今までになかった成長が期待できるかもしれません。
 
 

(参考文献 「マネジメントの基礎理論」 海老原嗣生著 プレジデント社 2015)