公開日:2016.5.25
更新日:2020.9.28
元リクルートキャリアのトップ営業から、専業主婦になって数年。再び仕事復帰し、今では株式会社アールナインで新規案件を統括するマーケット開発部ゼネラルマネージャーとなった遠藤裕美。 採用と人材育成に関する企業の様々なニーズと、キャリアコンサルタントの多様な価値観に応えるため日々奔走しながら、遠藤が密かに感じている「幸せ」とは?
Contents
リクルートキャリアで記録を更新し続けたトップ営業は、 出産を機に潔く専業主婦になる
遠藤が新卒で入社した会社は、リクルートキャリア。最初の配属は、人と話す機会の少ない経理部門でした。
しかしもともと人好きだった遠藤は、仕事の合間に社内のリフレッシュルームに行っては営業部門の社員とよく雑談をしていました。いつの間にか社内に人脈を広げていくそのコミュニケーション能力を買われ、間もなく遠藤は営業部門へ異動。当時、社内では顧客企業と関係を築くのが難しいと言われていた金融業界担当の法人営業となりました。
ここでも遠藤は持ち前のコミュニケーション能力を発揮し、今までの社内の常識を翻して次々に顧客の懐に飛び込んで信頼関係を築き、新規求人を開拓。金融業界での売上記録を更新し続け、MVPを連続受賞する遠藤の活躍を、社内の誰もが期待していました。
ところが当の遠藤は、そんな期待も、いわゆる「バリキャリ」のキャリアもあっさりと捨て、結婚と出産を機に退職。トップ営業から、専業主婦になる道を選んだのです。
遠藤「子どもができたとわかった時に、仕事を続けようとは全く思いませんでした。私の母が専業主婦だったので、子どもが中学に入るまでは、私も専業主婦になろうって思っていましたから。やっぱり子供には、『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』を言ってあげたかったので」
こうして遠藤は、子育ての日々を満喫。子どもを遊びや習い事に連れて行く毎日に充実を感じながら、数年が過ぎました。子どもが小学校に入ると時間に余裕ができましたが、やはり「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を言いたかったので、自宅でできる在宅ワークを始めます。
思い描いていた子育てができる、専業主婦の生活。しかし、子どもに手がかからないようになってくると、どこかで物足りなさも感じるようになりました。
遠藤「完全に家にこもっていて、家しか居場所がなかったので、そろそろ社会と接点を持ちたいと思っていました。そんな時に、長井から『今何しているの?会社に遊びに来ない?』と声をかけられたんです」
株式会社アールナインを起業した長井亮と遠藤は、リクルートキャリア時代の同期。同期のよしみで、軽い気持ちで会社に足を運んだのが、その後の遠藤の生活を大きく変えることになったのです。
子育てしながら働けるなら…と復帰を決意
<2014年2月>アールナインランチ会
アールナインを訪ねると、リクルートキャリア時代に一緒に働いていた先輩もそこにいました。長井や先輩と話をするうちに、いつの間にかアールナインで仕事をする方向に話が決まっていきます。
遠藤「本当に遊びに来ただけだったので働くつもりもなかったのですが、たまたま自宅からオフィスまで30分くらいで何かあってもすぐに帰れるし、勤務時間も9~16時や10~17時とフレキシブルに対応してくれるというので、これなら子育てしながらでも働けるかなと。何より、オフィスで働いている人たちが本当に雰囲気よくて、やっぱり働くなら、気持ちのいい人たちと働きたいと思いました」
こうして遠藤は、本人も予期していなかったかたちで仕事復帰し、ワーキングマザー生活がスタートします。再び働くことを決めた背景には、経験のある人材ビジネスに対する思いもありました。
遠藤「経済って、ヒト、モノ、カネで成り立っていて、仕事はそのどれかに関わるものですが、私の場合は圧倒的に『人』が好き。仕事で同じ苦労をするなら、人に関することで苦労したいし、喜びたい。そしてできるだけ多くの人に関わりたいから、再就職するならやっぱり人材関連がいいとはずっと思っていました」
当初は、育児とのバランスも取りながら採用アウトソーシングの現場で、採用説明会の運営や面接代行を行っていた遠藤ですが、間もなく長井は遠藤の得意分野である法人営業を任せるようになります。リクルートキャリアで瞬く間にトップ営業となったように、ここでも遠藤は順調に実績を積み重ねていきました。
そして入社から数か月後、遠藤は新規案件を統括するマーケット開発部マネージャーとなり、その後まもなくゼネラルマネージャーへ。専業主婦から一転、部長職のワーキングマザーとなります。数か月で生活が激変した環境で、家事と育児と仕事のバランスを保てた背景には会社や職場の理解がありました。
遠藤「今は子どもも中学生ですが、仕事復帰した当時はまだ小学生。私は、子どもが小学生のうちは必ず夕飯までには帰りたいと思っていたので、原則的にそうさせてもらいました。私が希望する働き方を皆が理解してくれて、勤務時間を柔軟に対応してくれたので、何とかバランスを取りながら続けられたと思います」
そして、このタイミングで仕事を始めたことは親子関係にもいい影響をもたらしました。
遠藤「私が働き始めたのは、子どもが小学校の高学年に差し掛かる頃。今までべったり一緒に過ごしてきた分、家にずっといたら子どもに口を出し過ぎて、ケンカも絶えなかったと思います。仕事をしていると、いい意味で適当というか寛大でいられるので、親子関係に適度な距離を保つためにも、子どもの自立を促すためにも、いいタイミングだったかもしれません」
様々な要素に後押しされて、遠藤の仕事復帰は一気に、かつ順調に進んでいったのです。
専業主婦を経験したからこそわかる いろんな立場の人の様々な思い
アールナインの事業は、パートナー契約する約200名のキャリアコンサルタントに採用・人材育成に関する仕事を紹介することです。企業とキャリアコンサルタントを繋ぐために、企業顧客だけでなくパートナーのキャリアコンサルタントにも日々向き合います。この時に、子育てに専念した専業主婦の経験が役に立っていると遠藤は言います。
遠藤「専業主婦の経験があったからこそ、人を立体的に見るというか、人生のいろんな価値観を理解できるようになったと思うんです。独身時代は、ただがむしゃらに働く価値観しか知らなかったですから。だから同じ部署の『人としてはいい人だけど仕事は遅い』という先輩に、『何でもっとちゃんとやってくれないんだろう』としょっちゅうイライラしていました。あまりに困って、入社2年目だったのに何歳も年上の先輩に厳しく詰め寄ったこともあります。
でも今なら、人生の中で仕事の捉え方は人それぞれで、いろんなペースで働くのもいいんじゃないかと思える。パートナー契約するキャリアコンサルタントの様々な価値観を受け入れ、その人の人生や生活を大切に思えるようになったのは、子育て中にいろんな家族に出会って、いろんな価値観を肌身で感じることができたからです」
がむしゃらに仕事をするだけが人生じゃない。その気づきは、トップ営業としてキャリアを積み重ねるだけでは、もしかしたら気づけなかったかもしれない。遠藤の今の仕事には、トップ営業としての経験も専業主婦の経験もどちらも同じように活かされていました。
実際にアールナインと契約するパートナーのキャリアコンサルタントの働き方は、本当に人それぞれ。業務委託として複数の企業をかけ持つフリーランスの人、子どもが園に行っている昼間の間だけ働きたい主婦、独立したばかりでとにかく多くの業務を経験したい起業家の卵など様々です。
求める仕事量も報酬も仕事内容も、人によって異なります。それぞれの希望に合わせて仕事を依頼していくのは、まるでパズルをするようで調整に労力がかかることがあります。それでもー。
遠藤「パートナーには『アールナイン』という仕組みをうまく利用して、自分が希望する働き方を実現してほしいと思っています。1人1人が望む働き方や、1人1人が望む経験がアールナインで叶えられるようにしていきたい。そのために私、いくらでも仕事を取ってきますので!」
子育てしながらできる仕事があれば、働きたい女性はたくさんいる。組織で働くのが苦手な人も少なくない。得意分野だけを極めていきたい人だっている。そんな自分のライフスタイルに合わせて働くことができれば、社会で活かせる能力はまだまだある。
自分も専業主婦時代に子育てをしながら社会と接点が持てる仕事を探して苦労し、アールナインで希望する働き方を応援してもらった経験があるからこそ、遠藤はそこに人一倍強い思いがあったのです。
人に関わる仕事は正面から向き合ってナンボ
真剣に疲れる、だから好き!
契約するキャリアコンサルタントが希望する多様な働き方を実現できるよう、遠藤の統括するマーケット開発部では、様々な新規案件を開拓していきます。決まったサービスの型があるわけではなく、採用・人材育成に関する業務でパートナーのキャリアコンサルタントができることなら何でも対応します。
仕事をカッコよくいうなら、企業のニーズにオーダーメイドで応えるサービスの企画開発。簡単にいうと、採用と人材育成に関する「何でも屋」です。
遠藤「案件は本当に様々です。一次選考の面接から採用説明会や書類選考の代行、転職エージェントのコントロール、リクルートの営業の新人教育もすれば、人事に欠員がでた企業に人事として常駐することもあります。何でもあり。だから、楽しいんです」
やがて遠藤は、日々企業の様々な課題に直面しながら、企業の担当者もあまり気づいていない人事の本質的な課題をアールナイン流のサービスなら解決できるという確信を持つようになります。
遠藤「話を聞くと、多くの企業で人事の採用担当が、本来注力すべき業務に注力できていません。
たとえば、採用業務のうち書類選考や一次面接はエントリー部分で候補者も多いので、対応に時間がかかりますが、この業務は『外部の人間でもできる仕事』です。採用担当が注力すべきは、エントリー部分の対応ではなく、一次面接を通過し、ある程度選ばれた人材をしっかりフォローして入社に繋げること。そこに注力できれば、企業はよりいい人材を採用できるようになります。
だから業務を分担して、『外部の人間でもできる仕事』をキャリアコンサルタントにシェアしてもらえば、人事は本来やるべき仕事に専念できるし、キャリアコンサルタントの雇用も生まれる。そして結果として企業の人事機能の質が上がり、企業はよい採用ができるようになる…と、いいことずくめなんですよ」
そこにやりがいを感じる一方、「いいことずくめ」の状況を実現していくには大変さも伴います。1つ1つの企業の要望と1人1人のキャリアコンサルタントの要望、それに真剣に向き合えば向き合うほど、調整に苦労することも少なくありません。
遠藤「でも、人に関わる仕事は正面から向き合ってナンボ。真剣に疲れるし、思いがすれ違って失敗もするけれど、それがすごく好きなんです。
企業にも、パートナーのキャリアコンサルタントにも、そして運用する社内のメンバーにも、誰にとってもWin-Winになるにはどうしたらいいのか。それを真剣に考えて人と正面からちゃんと向き合っていくことに、本当に幸せを感じています」
元リクルートのトップ営業から専業主婦、そしてアールナインの営業部長へと、華麗なる転身を実現した遠藤。
子どもが小さいうちは子育てに専念し、大きくなったら社会復帰するというのは、女性としての理想の働き方の1つとも言えます。そんな働き方を実現し、全ての経験が今に活かせているのも、いつでも「人」に真摯に向き合い、そんな遠藤を応援する環境があったからこそ。
だから遠藤は今、今度は自分が多くのキャリアコンサルタントの多様な働き方を応援するために、今日も奔走しているのです。