リーダーシップを育むPM理論とは|優れたリーダーの5つの特徴


リーダーシップを育むPM理論とは|優れたリーダーの5つの特徴

会社という組織での活動において、絶対に必要とされるのがリーダーシップを持った人です。
リーダーシップを発揮する人間がいなければ、組織で一つの目標を成し遂げることはできません。

リーダーシップを考えるうえで理解しておきたいのが「PM理論」です。
PM理論とは、リーダーがとるべき行動に着目した行動理論の1つです。

PM理論を理解することで、リーダーに必要な要素や、実際にとるべき行動が見えてきます。

理想のリーダーを輩出するうえでは、リーダーがどうあるべきかをしっかりと把握しておく必要があります。

今回の記事ではPM理論の概要から、結果を出し続けるリーダーを輩出するための具体例までを解説します。

この記事を読んでいただくことで、PM理論についての正しい知識を理解し、組織を成功へと導くリーダーを輩出する方法について理解できます。

PM理論とは

PM理論の2つの要素

PM理論とは「リーダーがとるべき行動に着目した行動理論の1つ」です。

PM理論では、下記2つの要素を切り口として定義しています。

  • 「P:目標達成機能」 (Performance)
  • 「M:集団維持機能」(Maintenance)

まずは、それぞれの要素について解説いたします。

「P:目標達成機能」 (Performance)

P機能(Performance function:目標達成機能)とは、「目標を達成するため」のリーダーシップです。成果を上げるために、リーダーに必ず求められる機能のことを指します。

例えば、P機能を備えたリーダーは、指標の設定、目標達成のための計画立案、部下への業務采配などを行い、なんとしてでも目標を達成しようとします。

スタッフの育成や現場業務の進捗管理といった面でもリーダーシップを発揮することができます。

「M:集団維持機能」(Maintenance)

M機能(Maintenance:集団維持機能)は、「組織をひとつにまとめる」ためのリーダーシップです。
成果を継続して出し続けるために必要不可欠な機能を指します。

例えば、M機能を備えたリーダーは、部下との信頼関係を良好に保ち、チームワークを維持・強化することができます。

部下ひとりひとりへの声がけや配慮が必要な場合や、チーム内で起こった人間関係トラブルを解決する際にリーダーシップを発揮します。

成果を出し続ける組織には、良好な人間関係、結束したチームワークが不可欠です。

PM理論が提唱する真のリーダーとは

リーダーに求められる能力として、前述した2つの要素の必要性を提唱しているのがPM理論です。

リーダーは、P機能(Performance function:目標達成機能)だけ高くても、M機能(Maintenance:集団維持機能)だけ高くても、結果を出し続けることはできません。

この2つの機能を兼ね備えた人材こそ、真のリーダーと定義しています。

PM理論の詳細は下記記事をご参照ください。

https://r09.jp/2019/05/23/pmriron/

PM理論は「パパ・ママ理論」とも呼ばれる

PM理論は「パパ・ママ理論」と呼ばれることもあります。

これはPM理論の提唱者である、三隅二不二氏が下記のように発言したことがきっかけとなっています。

“目標達成機能であるP機能は、父親のように力強いリーダーシップ
集団維持機能であるM機能は、母親の母性のように受容してくれるリーダーシップ。

父性と母性を引き合いにだした、とても分かりやすい例えです。

リーダーには、父親のように時には厳しく指導してでも目標を達成させる力と、母親のように何があっても支えるという受容性の2つの側面が必要だということです。

PM理論の説得力を高めるリーダーシップに関しての研究結果

PM理論自体は日本の社会心理学者である三隅二不二氏が提唱していますが、他の研究結果からも、PM理論の説得力の高さを確認することができます。

リーダーシップの研究では、1940年代までリーダーとしての能力は「生まれ持った性質」を前提とすると考えられていました。

しかし、研究が進むにつれて、学者たちは「先天的性質」ではなく「行動」へと目を向けるようになります。

リーダーシップに関しての研究では、下記の代表的な研究結果があります。

「オハイオ州立大学研究モデル」です。

アメリカのオハイオ州立大学の心理学者シャートル(C.Shartle) らが「リーダーの行動を測定する信頼できる尺度を作成する」ことを主眼に行った調査で、リーダーの行動を詳細に記述する質問票を用い、職場における観察調査やインタビューを綿密に行いました。

その結果、観察から生まれたリーダー行動の項目数は1,700にもなりました。
しかし、そのうちの半数以上の行動は「構造作り」と「配慮」の2つに集約されることが明らかになりました。

「構造作り」というのは、組織が確実な成果を上げられるよう、インフラを整えたり、部下の課題管理を徹底する行動を指します。
「配慮」というのは、部下と相互に信頼し合い、より良い人間関係を維持しようとする行動を指します。

PM理論に当てはめると、「構造作り」がP機能(Performance function:目標達成機能)、「配慮」がM機能(Maintenance:集団維持機能)に該当します。

このようにPM理論は他の研究結果からも、説得力が高いことが確認できます。

優れたリーダーの5つの特徴

リーダーには、P機能(Performance function:目標達成機能)、M機能(Maintenance:集団維持機能)のどちらも必要であるということを解説しましたが、ここから更に具体的に、優れたリーダーの特徴について解説いたします。

優れたリーダーには、下記のような特徴があります。

①自ら率先して行動ができる
②配慮ができる
③広い視野と、深く考える思考力を持っている
④柔軟性がある
⑤問題解決力がある

①自ら率先して行動ができる

リーダーは、組織全体を目標達成へと引っ張っていかなければなりません。
そのために必要なのが、まず「自らが率先して行動する」ことです。

進み方、進む方向が分からない組織を、自らが動くことで道を切り開いていきます。
新規プロジェクトや、社内で新しい施策が導入された際は、人に指示を出す前にまず自分が参加する姿勢が大事です。

リーダーが動くことにより、部下も安心して動けるようになります。

②配慮ができる

リーダーは、自分の部下に対して配慮することが必要です。

仕事で結果を出すことは絶対に必要ですが、結果を出すためには、「心理的安全性」がある環境で業務をできるかどうかが重要です。

部下の体調や抱えている悩み、人間関係など全体を見渡す広い視野を持ち、配慮していく必要があります。

数字だけを見るのではなく、裏にある背景にも配慮したうえで部下と向き合っていかなければなりません。

活き活きとした組織を作るために、リーダーに絶対必要な能力です。

https://r09.jp/2021/04/30/column-0060/

③広い視野と、深く考える思考力を持っている

リーダーは常に広い視点で把握し、細かな変化にも気づける力が必要とされます。

前述した「配慮」にも関係しますが、リーダーは自分の部下が今どのような状況で、どのような問題を抱えているのかを把握しておく必要があります。
レポートだけを見るのではなく、実際に自分の目で見て、直接、部下と話すことも必要です。

また、得た情報から、なぜこのような問題が起こっているかを考える力も必要です。
表面的に見て対応するのではなく、問題の原因、や問題が起こった背景をふまえ、深く考える思考力が必要とされます。

④柔軟性がある

リーダーには、物事を柔軟に考えていく力も必要です。

自分の固定観念にとらわれていては、部下からあがってくる提案や意見をフラットに受け止めることができません。

現場に必要なアイデアは、現場スタッフでないと思い浮かばないことも多々あります。

ですから、自分の経験や知識からだけで良し悪しを判断するのではなく、現場や部下からの貴重な声を改善に活かしていくためには、フラットに部下の声を聞き入れる柔軟性が必要です。

⑤問題解決力がある

組織では多くの問題が起こります。
リーダーは、起こり得る問題に対して、責任を持って問題を解決していかなければなりません。

問題となっている事象を理解し、問題の原因を分析し、解決策を考えていく必要があります。
問題解決力があるリーダーこそ、結果をだせるリーダーです。

組織の結果は、リーダーの問題解決力にかかっていると言っても良いでしょう。

PM機能の伸ばし方具体例

次は、リーダーのPM機能を伸ばしていく具体的な方法について解説いたします。

P機能(目標達成機能)、M機能(集団維持機能)のそれぞれの要素に分けて解説いたします。

P機能(目標達成機能)を伸ばす2つのポイント

P機能(目標達成機能)は、ノルマや成果を達成させるための力です。
P機能(目標達成機能)として「組織の目標達成や課題解決を行う」ためには、2つのポイントがあります。

①明確にゴールを示し、ゴールへの意識を浸透させ、達成のイメージを持たせる
②ゴールに向けた行動を徹底させる

①明確にゴールを示し、ゴールへの意識を浸透させ、達成のイメージを持たせる

リーダーに求められるP機能(目標達成機能)では、明確なゴールを設定し、ゴール意識を自分の部下に浸透させ、ゴール到達までのイメージを持たせることが重要です。

一見、うまく機能しているつもりでも、目標設定が曖昧、伝達がしっかりなされていない、スケジュール管理ができていないなどの問題が生じることも多いです。

リーダーが責任をもって明確な目標設定をし、部下がわかるよう目標を浸透させていかなければ目標達成はできません。

目標を伝達する際は、「チームとしての目標」と、成約率や成果達成率といった「スタッフ個人としての目標」を明確にする必要があります。

目標への道筋をわかりやすくスタッフひとりひとりに説明を行い、浸透させるために繰り返し伝えていくことが重要です。

そのためにも、まず、自分自身が今何をすべきかの方向性をしっかりと理解し、正しくゴール設定をしていきましょう。

目標を達成するうえでは、組織の全員がひとつの方向に視点をあわせなければなりません。組織が一丸となるには、リーダーからの発信が必要不可欠です。

②ゴールに向けた行動を徹底させる

リーダーは目標意識を浸透させると同時に、部下に具体的なアクションを提示していかなければなりません。

目標達成に向け、部下にどのような行動を期待するかを提示していきます。部署全体の抽象的な内容だけではなく、部下ひとりひとりにあった具体的な指示を伝えることが重要です。

また、指示を出した内容は、リーダーが進捗管理を行う必要があります。指示を出した内容が問題なく進捗しているかを確認し、滞っている場合は部下にヒアリングを行い、わからないことや困っていることがないかなどを確認します。

このように具体的な行動へ落とし込むことで、ゴールに進んでいくことができます。

M機能(集団維持機能)を伸ばす3つのポイント

リーダーは、チーム全体の士気をあげたり、雰囲気を良くすること、スタッフ同士の人間関係を良好にすることなど、目標達成とは違う側面のマネジメントも行う必要があります。

目標達成能力が高くても、集団維持能力が足りなければメンバーの入れ替わりが頻繁に起こる組織となり、継続して結果を出すことはできません。

M機能(集団維持機能)として「組織の良好な状態を維持し続ける」ためには、3つのポイントがあります。

①部下の声に定期的に耳を傾ける
②リーダーとしての信頼を集める
③スタッフ同士の人間関係にも配慮をする

①部下の声に定期的に耳を傾ける

リーダーは部下の声に耳を傾けることが必要です。

部下はそれぞれが個別のスキルや考えを持っており、組織に対する意見もさまざまです。
業務に関して部下から質問や不満が生じることもあります。

そのような部下の声にも耳を傾け、しっかりと汲み取ることで、リーダーとしての信頼が得られると同時に、各メンバーが納得して働けるチームになります。
定期的に面談の機会を設け、リーダーが部下ひとりひとりと話す機会を作ると良いでしょう。

②リーダーとしての信頼を集める

上司へ不信感があると、組織が一丸となって同じ方向を目指すことはできません。

リーダーが組織を引っ張っていくためには、メンバーからの信頼が必要不可欠です。
このように信頼を集める力も、集団維持機能に該当します。

部下やメンバーから信頼されるリーダーになるには、仕事・人間性のどちらも理解される必要があります。
仕事でしっかりと結果を出すこと、1on1ミーティングなどで部下ひとりひとりと真摯に向き合うことのどちらも必要です。

③スタッフ同士の人間関係にも配慮をする

リーダーは、組織の人間関係が良好となるように配慮をしていく必要がもあります。

スタッフ同士の人間関係を把握して業務采配をしたり、ミーティング、ディスカッションなどを通しスタッフ同士の相互理解を深める機会を作ったりするのも良いでしょう。

日頃から、スタッフ同士の人間関係を広い視野で観察し、適宜、リーダーが調整に入ることが必要です。

まとめ

PM理論とは
P:目標達成機能」 (Performance)、「M:集団維持機能」(Maintenance)の2つの要素の必要性を提唱したもの。他のリーダーシップに関する研究結果からもPM理論の説得力の高さが確認できる。

・優れたリーダーの5つの特徴
①自ら率先して行動ができる
②配慮ができる
③広い視野と、深く考える思考力を持っている
④柔軟性がある
⑤問題解決力がある

【PM機能の伸ばし方具体例】
P機能(目標達成機能)を伸ばす2つのポイント

①明確にゴールを示し、ゴールへの意識を浸透させ、達成のイメージを持たせる
②ゴールに向けた行動を徹底させる

M機能(集団維持機能)を伸ばす3つのポイント
①部下の声に定期的に耳を傾ける
②リーダーとしての信頼を集める
③スタッフ同士の人間関係にも配慮をする

 

以上、今回はPM理論について解説いたしました。

PM理論を知ることで、リーダー個人の強み、弱みを整理し、足りない部分は伸ばしていくことができます。

また、PM理論を用いて、組織にいるリーダー陣の傾向を分析し、組織の課題として把握することもできます。

PM理論を活用しリーダーの能力を伸ばしていき、P機能、M機能を兼ね備えた結果を出し続けるリーダーを輩出していきましょう。

https://r09.jp/2019/05/23/pmriron/