【解説】採用ペルソナの作り方8ステップ
「この人を採用したい」と思う人から応募がこない。採用後、実際に働いたが期待する能力が発揮できず早期退職してしまった。このような経験をお持ちの採用担当者の方は多いのではないでしょうか。
人材採用の難易度は年々上がり続けています。昔のように、求人広告さえ出せば人が集まるようなことはありません。昨今では、優秀な人材を獲得している企業と、人材獲得に課題を抱えている企業の格差が広がっています。
優秀な人材を獲得している企業と、人材獲得に課題を抱えている企業には”採用戦略”に大きな違いがあります。
それは、「採用マーケティング」を導入しているか否かです。
採用活動においても、マーケティングの手法を取り入れることが効果的です。どのような人材に応募して欲しいのか、欲しい人材へどのように自社の魅力を伝えるのか。このようなポイントをマーケティングの観点から整理することで採用効率を高めることができます。
そこで大事になるのが、採用マーケティングとしての「ペルソナ設計」です。冒頭であげたような、求める人材からの応募数の減少や採用後のミスマッチの多くは、採用活動における「ペルソナ設計」で解決することができます。実際に採用で結果を出している企業では、漏れなくペルソナ設計を導入して採用活動を行っています。
今回の記事では、採用ペルソナを作るメリットや採用ペルソナの作り方、採用ペルソナを活かした採用活動などを解説いたします。この記事を読むことでペルソナに刺さる採用活動ができるようになり、採用率と定着率の向上が見込めるようになります。
Contents
採用ペルソナとは
マーケティングにおいて「ペルソナ」とは、商品やサービスを利用する”具体的な人物像”を意味します。
ペルソナとはラテン語の「persona」から来ており「仮面」を意味する言葉です。元々はマーケティング活動で頻繁に使用される言葉であり、”具体的な生活”がイメージできるよう詳細まで描いたユーザー像を、仮想の人物として定義したものを指します。
年齢、性別、職業、住所、趣味、家族構成などを詳細にイメージしていくことで、訴求すべき相手を明確化し、相手が求める訴求内容を整理することができます。
訴求すべき人物像が明確になれば、商品やサービスの方針にもブレがなくなります。
このマーケティングの視点を採用活動に置き換えると、ペルソナとは「自社が採用したい人物像」と定義できます。
本来、採用活動では、求職者が応募することにメリットを感じなければ成立しません。自社が求める人材に響くメリットを正しく訴求するためにも、まず自社の魅力を伝えたい人物像を明確にすることが重要となります。
ペルソナとターゲットの違い
よく耳にする言葉で「ペルソナ」と「ターゲット」がありますが、この2つには大きな違いがあります。それは、どこまで細かく設定していくかという”解像度”の違いにあります。
具体的に例をあげて説明します。
ペルソナは人物像の指向性、価値観、行動特性などの詳細を設定し、特定の一人を作り上げるのに対し、ターゲットは年代や性別、居住地、年収など、ある程度幅をもたせた大まかな情報を基準とした設定です。ターゲットはペルソナほど細かく設定はされません。
要するに、1人の人物をどこまで鮮明にイメージできるかどうかが、ペルソナとターゲットの違いになります。
【ターゲットの場合】例: 40代、年収500-600万円、管理職経験者
【ペルソナの場合】例:35才、女性、既婚者、年収460万円(賞与込み)、転職経験2回、休日は読書やNetflixを見るなどインドア派
採用活動において採用ペルソナを設計する3つのメリットとは?
採用活動において採用ペルソナを設計することで、以下のようなメリットがあります。
- 採用活動で自社が求める人物に対して、魅力的な訴求ができるようになる
- 社内の関係者間で「求める人物像」の認識がすり合うため、議論、意思決定の方向にズレがなくなる
- 入社後の定着率が高まる
1. 採用活動で自社が求める人物に対して、魅力的な訴求ができるようになる
ペルソナ設計で求める人物像を明確化することにより、求める人物に響く魅力的なアプローチができるようになります。
ペルソナ設計を行わない場合は、幅広いターゲットへ、ぼんやりとした内容を訴求することになりますが、明確なペルソナがイメージできていると、提供すべき情報の取捨選択ができ、特定の人物像に対して深く刺さる内容を訴求することができます。
例えば、「成長できる」という抽象的なメッセージから、「⚪︎⚪︎について成長ができる」など、より具体的なメッセージを発信できるようになります。
2. 社内の関係者間で「求める人物像」の認識がすり合うため、議論、意思決定の方向にズレがなくなる
「採用したい人物像は明確で、関係者間での認識も一致している」と思っていても、実際に言語化してみるとズレが生じているケースは多々あります。
その理由は、年収や過去の仕事での経験など、一部の情報のみでターゲット設定しているからです。
認識にズレをなくすためには、より詳細にペルソナを定義することが必要です。
認識のズレがなくなることで、採用活動での議論や意思決定を円滑に進めることができるようになります。
3. 入社後の定着率を高める
ペルソナ設計により求める人物像を明確化しておくことで、入社後のミスマッチを大幅に減らすこともできます。
性格や価値観なども採用前に求める要素を定義しておくことで、応募者が入社後に活躍できるまでを鮮明にイメージした採用活動ができます。
そのため、ミスマッチによる早期退職がなくなり、中途入社者の定着率を高めることができます。
採用ペルソナの3つの構成カテゴリ
採用ペルソナを構成する要素は、おおまかに下記3つのカテゴリーに分類できます。
- プロフィールに関する情報
- 職歴に関する情報
- パーソナリティに関する情報
以下が各カテゴリーの要素例です。
1. プロフィールに関する情報
- 年齢
- 性別
- 学歴
- 居住地
- 家族構成
2. 職歴に関する情報
- 業種
- 役職
- 年収
- 資格
- 業務上の経験
3. パーソナリティに関する情報
- 価値観
- 人柄
- 性格
- ライフスタイル
- 趣味
ペルソナ設計では抽象的ではなく、具体的なイメージを持って作り上げることが重要です。
この中で最も定義が漏れてしまいがちなのが、”パーソナリティに関する情報”です。
人物像を思い描くうえでは、ペルソナの価値観や人柄なども大切ですので、
必ず漏れのないよう定義していきましょう。
採用活動におけるペルソナの作り方8ステップ
それでは、採用活動のためのペルソナの作り方について解説していきます。
ペルソナを作る際は、以下の8ステップで進めていきます。
- 経営陣や現場担当者から必要な人材の要素をヒアリングし、ニーズを洗い出す
- イメージする人物像の条件を書き出して整理する
- 求める人物像がなぜ転職しようとしているのか考える
- 求める人物像が自社に応募する理由を考える
- 仮の採用ペルソナを設定する
- 仮の採用ペルソナを経営陣や現場担当者に確認し、最終調整をする
- 採用ペルソナが固まったら、実際の採用活動に活用していく
- 採用ペルソナを見直し修正する
1. 経営陣や現場担当者から求める人材の要素をヒアリングし、ニーズを洗い出す
ペルソナ設計をするうえで最初のステップは、求める人材の要素をヒアリングしていくことからです。
会社と現場それぞれが求める人材の要素を詳細にヒアリングしまとめていきます。
ここで重要なのが、前述した採用ペルソナの構成要素に沿ってヒアリングすることです。
スペック面だけでなく、性格や価値観などパーソナリティに関わる部分もしっかりと確認していく必要があります。
また、自社の「できる人材」はどのような人材であるかを、経営陣や現場担当者にヒアリングすることも大事です。ヒアリングした際、「できる人材」という感覚が人によって異なることは往々にあります。この「できる人材」をヒアリングにより言語化して認識を整理していくこともニーズを固めるうえで重要です。
2. イメージする人物像の条件を書き出して整理する
経営陣や現場担当者へのヒアリングが完了したら、ヒアリングした事項を整理していきましょう。
ヒアリングした項目についてカテゴリー毎に要素を書き出していきます。
この時に、前述した採用ペルソナの構成要素を参考にしたチェックシートなどを作成しておくと、各項目に抜け漏れなく整理することができます。
3. 求める人物像がなぜ転職しようとしているのか考える
ペルソナ設計のための各要素の整理が完了したら、ペルソナがなぜ転職しようとしているのかを考えてみましょう。
ペルソナに刺さる訴求をするうえで、ペルソナの転職理由を考えることはとても重要です。
ペルソナの転職理由が明確になれば、転職する理由となった原因の解決を求人内容で訴求することができるからです。
【転職理由の例】
- 給料アップのため
- 自己成長(スキルアップ)のため
- やりがいが欲しいため
- 良好な人間関係を求めて
- 労働環境の改善のため
- 会社の安定性・将来性を求めて
4. 求める人物像が自社に応募する理由を考える
ペルソナの転職理由までイメージできたら、次はその課題解決をどのように提案するかを考えていきましょう。
課題解決となるポイントを上手く訴求できれば、ペルソナが自社に応募する理由づけとなります。
ペルソナの転職理由となるボトルネックを解決できないのであれば、ペルソナとなる人材が応募してくることはありません。
そのため、ペルソナの課題解決を考えることは大変重要です。
課題解決を考えるうえでのヒントとして、直近で入社した社員の入社理由をヒアリングすることも効果的です。何を基準に自社に入社したのか、どの点をポイントに入社を決めたのか、などをヒアリングしてみましょう。
中途入社者へのヒアリングによって、リアルな自社の魅力を把握することができます。
5. 仮の採用ペルソナを設定する
ここまでのステップで、ペルソナ設計を行うための全ての要素は揃いましたので、ここで1人の人物像が浮かぶように仮でペルソナを作っていきましょう。
他の担当者から視覚的にもわかりやすいようにパワーポイントなどの資料にまとめると良いでしょう。
6. 出来上がった採用ペルソナを検証する
ペルソナ設計が完了したら、経営陣や現場担当者にも確認してもらい、最終決定となります。
ここでズレが生じるものがあれば、適宜調整を行います。
7. 実際の採用活動に活かす
経営陣や現場担当者と採用ペルソナの共通認識がとれたら、いよいよ実際の採用活動に活かしていきましょう。
具体的には、求人票や面接シート、面接の質問などに反映していきます。
採用活動において、ぼんやりとした”良い人材”から、ペルソナ設定した具体的な人物像を獲得する動きへと変わります。
8. 採用ペルソナを見直し修正する
採用ペルソナは常に変化し続けるものです。会社方針や、現場状況の変化にあわせて、その都度、採用ペルソナも修正していく必要があります。
ペルソナとなる人物を採用したが、実際に働いてみたら自社とはマッチングしなかったという時は、原因を分析し採用ペルソナの設定も修正を図ります。
採用ペルソナ導入時の4つの注意点
ペルソナ設計をするうえで、以下4つ注意点があります。
- ペルソナを細かく設計しすぎない
- 必要のない要素を具体化しない
- 「MUST(必須)」「WANT(あると望ましい)」「NEGATIVE(不要)」を切り分ける
- 定期的にブラッシュアップしていく
1. ペルソナを細かく設計しすぎない
ペルソナ設計をする際は、詳細に設計しすぎないよう注意しましょう。
ペルソナはターゲットに比べ詳細に設定することで、絞った人材にアプローチできるというのがメリットです。
しかし、詳細に設定するがあまり、対象となる人材が限定されすぎてしまうことは問題です。
実際にペルソナ設計をした内容を見て、ペルソナに当てはまる人物は実際にはどのくらいの数の人材がいるかを考え、あまりにも限定されすぎているようなら条件を広げてみることが必要です。
2. 必要のない要素を具体化しない
前述したペルソナを細かく設計しすぎないという点にも関係する内容ですが、どの要素を詳細にしていくか、どのポイントをペルソナの要素とするかを考えることも重要です。
例えば、会社までに30分以内の通勤圏内に住んでいるという要素を求めたい場合、これ以上の深堀りは不要で、住んでいる市町村などをペルソナの要素として入れる必要はありません。
また、ペルソナ設計の要素として趣味を深堀りするような内容も、業務や社風に関連する意図がなければペルソナの要素として盛り込む必要はありません。
なぜその要素を盛り込むのか、なぜ詳細に定義する必要があるのかを考えながらペルソナ設計を行うよう注意しましょう。
3.「MUST(必須)」「WANT(あると望ましい)」「NEGATIVE(不要)」を切り分ける
ペルソナ設計をしていると、「あの要素も欲しい」、「この要素も欲しい」と理想像が膨らみすぎてしまうことがあります。
実際に、自社の求める全ての要素を持ち合わせた人材を獲得することは難しいです。
そのため、「MUST(必須)」の要素、「WANT(あると望ましい)」の要素、「NEGATIVE(不要)」の要素を切り分けていく必要があります。
書き出した要件に優先順位をつけ、上記のようなカテゴリーで切り分けていき、自社が求める現実的なペルソナを定義していきましょう。
条件を求めすぎた場合、業務に必要なスキルを持っていても条件の一部が合わないがために採用を見送り、その結果、機会損失を発生させてしまうこともあります。このような事態を避けるためにも、求める条件の優先順位決めを確実に行いましょう。
4. 定期的にブラッシュアップしていく
前述の『採用活動におけるペルソナの作り方8ステップ』でも解説しましたが、ペルソナは一度作って終了ではありません。
ペルソナの条件は日々変わっていくため、定期的な見直しが必要です。
そのためには、経営陣や現場担当者からのヒアリングを常に行っていき、最新のニーズでペルソナを更新していきましょう。
まとめ
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- 採用ペルソナとは「自社が採用したい具体的な人物像」のこと
- 採用ペルソナを作成する3つメリットは「採用活動で自社が求める人物に対して、魅力的な訴求ができる」「社内間で『求める人物像』に対する認識のズレがなくなる」「入社後の定着率が高まる」
- 採用ペルソナの構成要素をつくる主な情報は「プロフィール」「職歴」「パーソナリティ」
- 採用活動におけるペルソナの作り方8ステップ
-
- 経営陣や現場担当者から必要な人材の要素をヒアリングしニーズを洗い出す
- イメージする人物像の条件を書き出し、整理する
- 求める人物像がなぜ転職しようとしているのか考える
- 求める人物像が自社に応募する理由を考える
- 仮のペルソナを設定する
- 仮のペルソナを経営陣や現場担当者に確認し、最終調整をする
- ペルソナが固まったら、実際の選考に活用していく
- ペルソナを見直し修正する
-
- ペルソナ活用の注意点は、「ペルソナを細かく設計しすぎない」「必要のない要素を具体化しない」「『MUST(必須)』『WANT(あると望ましい)』『NEGATIVE(不要』』を切り分ける」
- 定期的にブラッシュアップしていく
以上が採用活動におけるペルソナ設計の解説です。年々難易度があがっている企業の採用活動ですが、このようにマーケティングの視点で求める人物像を明確化すると、ピンポイントでのアプローチが可能なため採用率や定着率を向上させることができます。
最初のペルソナ設計には多少の労力は必要とされますが、中長期視点で考えた場合、圧倒的に効率的な採用活動を行えるため、採用活動では優先して手をつけていきたい事項です。
採用マーケティングのペルソナ設計をうまく活用し、自社が求める人材の獲得率を飛躍させていきましょう。