職場のワーキングマザーを活かす上司のマネジメント術
厚生労働省が2017年6月に発表した平成28年版(2016年版)「国民生活基礎調査の概況」によると、共働き世帯数は1129万世帯と過去最高になり、専業主婦がいる世帯は664万世帯と減少の一途をたどっています。
専業主婦が当たり前だった1980年代の調査では専業主婦がいる世帯数が1114万世帯、共働き世帯が612万世帯(1980年)だったため、この35年間で、その割合がほぼ逆転し、今や「共働き」が一般的であることを改めて実感します。
しかし、経済協力開発機構が発表した「雇用アウトルック2015」では、子どもを持つ女性の就業率は52%、うち正社員はわずか8%です。共働きが一般的とはいえ、子育てしながら働く正社員のワーキングマザーはまだ少数であり、その対応に「正直どうしていいかわからない」職場も多いのではないかと思います。
そこで今回は、職場のワーキングマザーを活かす上司のマネジメントのポイントについて、まとめてみました。
「子どもがいてもバリバリ派」か、「できるだけ楽に派」か?
「ワーキングマザー」と一言でいっても、彼女たちの育児をしながら働くことに対する価値観は本当に人それぞれです。
子どもがいても独身時代と同じようにバリバリと仕事をしたい、責任感のある仕事を任されたいタイプもいれば、家庭を優先したいから仕事はセーブしたいタイプもいます。また、多くはないですが「正社員の立場は捨てたくないけど、子どももいるしそんなに仕事もしたくない」という「ぶらさがり社員」タイプもいるでしょう。
出産前にバリバリ働いていた人全てが、同じように働くことを望んでいるかというとそうとも限らず、「子どもが生まれたら、子どもを優先したくなった」と働き方に対する考えが変わる人もいます。
このように価値観は人によって異なるので、彼女たちを活用したいのであれば、まずは「ワーキングマザーだから○○だろう」というステレオタイプに当てはめない、先入観で決めつけないよう意識しましょう。
「気遣い」のさじ加減も人それぞれ
子どもを出産した後にどのように働きたいかが人によって異なるからこそ、気遣いのさじ加減も人によって変える必要があります。
よくありがちなのが、「子どもが小さくて大変だから、仕事はこれくらいがいいだろう」「早く帰れるほうがいいだろう」と、「よかれ」と思って責任やリスクの軽い簡単な仕事をまわしたことが、「子どもがいてもしっかり働きたい」というワーキングマザーのモチベーションを削いでしまうというパターンです。
一方で、「私は子どもがいるので、そんなに仕事を任されても困ります。時間通りにきっちり帰ります」というワーキングマザーもいます。
任せてモチベーションがあがるタイプなら、子育てしながらでも責任をもってできる業務や、子育てしながらでも仕事が遂行できるようなサポートが必要ですし、「ほどほどにしたい」タイプならそれなりに業務量を加減しなければなりません。
このようにワーキングマザーへの気遣いのさじ加減は人によって、調整する必要があるのです。
ワーキングマザーの「考え」をじっくり聴いてみましょう
ワーキングマザーの価値観は人それぞれで、気遣いも人によって調整が必要…となると、「そんなこと言ったって困るよ、どうしたらいいかわからないよ」という方も多いのではないでしょうか。そんなときこそ、ぜひ本人がどのように考えているか、その考えを聞いてみてください。
「産休・育休前には話をした」といっても、実際に出産し、子育てをしたら考えが変わることもありますので、職場復帰したら改めて確認することが必要です。さらにいざ業務を始めてみて、仕事と家事・育児を両立してみたら、また考えが変わる可能性もありますので、復帰して数か月後に改めて話を聴くことも大切です。
この時に、「子育てが大変だろうから」「子どもが小さいのだから、どうせ無理だろう」と決めつけて話をするのではなく、子育てのサポート環境がどのような状況で、本人がどのように働きたいと思っているのかを確認するように意識しましょう。
要望や期待をきちんと伝えることも重要
ワーキングマザーを活用するために上司ができることは、彼女たちがどのように業務に関わりたいと考えているのか、どれくらいの時間を業務に費やせるのかを話し合い、確認した上で、気遣いしすぎたり、戦力外にしたりすることではなく、まずは社員としてやってほしいことを期待することだと思います。
そして期待や要望を伝えた上で、ワーキングマザーたちの意向と現実の子育て環境をふまえながら、「それができないのなら戦力外」ではなく、「どこまでなら期待や要望に応えられ、彼女たちの意向も実現できるか」「職場でどこまでならサポートできるか」とお互いにできることを一緒に探っていくことが、ワーキングマザー1人1人の活躍の場を創り出すマネジメントのポイントといえるでしょう。