新入社員のメンタル不調を引き起こす2大原因とは?企業ができる予防対策と実施ポイント


新入社員のメンタル不調を引き起こす2大原因とは?企業ができる予防対策と実施ポイント

新入社員の方は、今春から入社して4ヶ月近くが経過しましたね。少しずつ慣れてきたころに出やすい不調。

今回は「新入社員のメンタルヘルス不調の原因と対策」について考えていきます。

この記事を通して

  • メンタルヘルス不調の原因となるストレスについて知る
  • 新入社員のメンタルヘルス不調を引き起こす2大背景や抱える不安を知る
  • 新入社員のメンタルヘルス不調の予防に必要な知識、かかわりを知る
  • 新入社員とコミュニケーションを取る際に心がけたいこと

について知ることができます。

明日から取り組むことのできる実践方法も載せますので、少しでもお役に立てれば幸いです。

メンタルヘルスは心の健康状態のこと

まず、メンタルヘルスの言葉の確認ですが、「心の健康状態」のことです。ストレスがなく、気持ちよく健やかな精神状態で過ごせている場合は、良好なメンタルヘルスを維持できていると考えられます。また、この「心の健康」にはストレスが大きく関係しているとも言えます。

メンタルヘルスと大きくかかわっているストレスとは?

次に、「心の健康」に影響するストレスを少し詳しく見ていきましょう。

「ストレス」という用語は、もともと物理学用語であり、物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態です。ストレスを風船にたとえてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。

医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激を「ストレッサー」と言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応を「ストレス反応」と言います。

職場では、仕事の量や質、対人関係をはじめ、さまざまな要因がストレッサーとなりうることが分かっています。※1

つまり、ストレスとは、「ストレッサー」と「ストレス反応」という2つ相互作用でできており、普段、口にするストレスは、人間関係や仕事上の問題、家庭の問題などの「心理・社会的ストレッサー」を指していると考えられます。

ストレッサーは他にも「物理的ストレッサー」、「化学的ストレッサー」といったものもあります。

そして、このストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。

心理面でのストレス反応には、活気の低下、イライラ、不安、抑うつなどがあります。身体面でのストレス反応には、体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こりや下痢、不眠などさまざまな症状があります。また、行動面でのストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などがあります。※2

加えて、脳は身体からの不調を伝えるサインを無視して動き続けるサインを出し続けます。

このように、状況改善を図れないままストレス反応下のもと長期的に活動を続けると、心身が疲弊しメンタルヘルス不調につながる可能性が高いです。

未然に防ぐためにも自らの不調に気づくことが大切ですが、本人だけに任せておくと、身体症状が出ていても気のせいだと思ってしまうことや、よくあることと見過ごされることもあるので、周りが注視することも非常に重要です。

また、同じような刺激であってもストレッサーになる場合とならない場合があることや、人によって、ストレスの感じ方は異なるなど個人差が大きいことも留意するポイントでしょう。

【参考】※1、2 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「1 ストレスとは」https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/

新入社員がメンタルヘルスの不調を訴える2大背景や入社後の不安とは?

大学などを卒業後、社会に出るという大きな変化を体感する新入社員の不調原因には、大きく以下2つの背景が影響していると考えられます。

  1. 入社後のギャップ「リアリティー・ショック」による影響
  2. 新型コロナウィルスによる環境変化の影響

詳しく見ていきましょう。

1 入社後のギャップ「リアリティー・ショック」による影響

「リアリティー・ショック」とは、理想と現実のギャップによりショックを受けることです。

例えば、入社前のイメージや思い描いていた仕事と現実との違いを働く中で感じ、消化しきれず不安や喪失感などを強め、ときに離職までにいたる問題を指します。

学生から社会人へのステップを移行する中で大きな変化とともにこのようなギャップも感じるので、心理的なプレッシャーは大きいかと想像します。

実際、調査でも入社後、報酬・昇進・仕事のやりがい・働きやすさなど、何らかの事前イメージとの齟齬(リアリティ・ショック)をうける新社会人は76.6%に及ぶことが出ています。

報酬・昇進昇格のスピードについて特にイメージよりも悪かったと感じている割合が高かったり、仕事のやりがいや達成感などの仕事内容についてもギャップを感じている人が多いという部分からも、リアリティー・ショックが高いことは、職場でのネガティブな感情を導いている要因のひとつと考えられます。※3

【参考】※3 パーソル総合研究所×CAMP共同調査 就職活動と入社後の実態に関する定量調査 2019年 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/assets/reality-shock.pdf

2 新型コロナウィルスによる環境変化の影響

加えて、昨今のコロナ禍での環境変化も大きく影響しています。

2020年3月に実施した内閣府の「働き方改革の取組に関する企業調査」の「テレワークができる環境下での課題」として、「社内での気軽な相談・報告が困難」、「取引先等とのやりとりが困難」、「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」といった部分が不便な点で挙げられています。

この調査は、新入社員に限らない調査になりますので一概には言えませんが、既に社会人として活躍している人たちにとって課題となっている訳ですから、新入社員にはより大きな影響を及ぼしているのではないかとも考えられます。

現在、新入社員は社内の人間関係の構築ができあがっていない状態で、組織の中でのふるまいやコミュニケーションを図る必要に迫られています。これまでのテレワークや在宅勤務から出社スタイルに移行する中で、新しい環境に順応できるかなど不安を感じることは当然のことだとも言えます。

一方で、従来の出社スタイルであれば、同時期に入社した新入社員とも自然と交流したり、大学時代の友人と会ったりすることでリフレッシュしたり、仕事と遊びのメリハリを出すことが容易でした。

今のような緊急事態宣言の行動規制下では、なかなか多くの人と一気に会うことが難しい状況だからこそ、ストレス過多になりがちだとも想像できます。

入社後の新入社員が抱える不安としては、株式会社日本能率協会マネジメントセンター「イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2020」報告書※4 によると、こちらにも、コロナ禍における「働く」変化が大きく出ています。

配属前の不安としては、「テレワークについて」が顕在化しており、「職場の人間関係」や「配属先の業務遂行を通じた成長」に関する回答結果が課題や不安として挙げられています。

これは、テレワークなどの推進で対面の機会が減ったことや、例年に比べて配属時期の後ろ倒しなどが影響していると考えられます。例年とは異なり、入社早々にオンライン研修や個人学習などで待機を余儀なくされた新入社員がいたことも影響しているのでしょう。

加えて、配属1~3ヵ月後の不安としては、業務経験が少なく、職場における自らのキャリアが描けていないことなども挙げられています。「働く」を通して、出社スタイルのように自然と職場で異なる世代と交流する機会が減ったことも関係していると考えられます。

以上のことから、例年以上に個別対応や定期面談など、丁寧なフォローアップが欠かせないポイントであることもお分かりになるのではないでしょうか。

【参考】※4 株式会社日本能率協会マネジメントセンター「イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2020」報告書

新入社員のメンタルヘルス不調の予防に必要なこと

これまで、メンタルヘルスやストレス、新入社員が不調を訴える背景や抱える不安を見てきましたが、メンタルヘルス不調予防には企業側の理解が重要だと改めて感じていただけたのではないでしょうか。

まず、かかわりをより深めるために、ストレスやメンタルヘルスについての知識を身につけることをお勧めします。

例えば、「メンタルヘルス・マネジメント®検定」は、働く人たちの心の不調の未然防止と活力ある職場づくりを目指して、職場内での役割に応じて必要なメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得できるものになっています。※5

学びを通じて、社内のメンタルヘルス対策の推進、部門内、上司としての部下のメンタルヘルス対策の推進、組織における従業員自らのメンタルヘルス対策の推進などを体系的に身に付けることができるので、組織内で施策を検討する際にも大いに役立つと感じます。

加えて、「こころの耳」を通じて知ることもすぐにできることです。

「部下を持つ方へ」(https://kokoro.mhlw.go.jp/manager/)では、部下への配慮などのポイントを知ることができます。

他にも、東京都労働相談情報センターより「働く人のメンタルヘルスガイド」

https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/2021_mentalhealth_guide.pdf)も毎年出ています。

メンタルヘルスに関する法律やストレスチェック制度のあらまし、4つのメンタルヘルスケアの推進など具体的な進め方、相談窓口などの詳細も掲載してありますので、目を通すことも有効でしょう。

【参考】※5 メンタルヘルス・マネジメント®検定試験(主催:大阪商工会議所)https://www.mental-health.ne.jp/about/

新入社員のメンタルヘルスの不調にいち早く気づくためには?

それでは、メンタルヘルスに関しての知見を踏まえた上で、どのように新入社員とかかわっていくかを具体的に考えていきましょう。

真っ先に思い浮かぶのがコミュニケーションによるかかわりです。普段との様子の違いを感じられるように朝の挨拶や様子から変化を感じることや、新入社員が表情などから疲れを見せている時に、「よく眠れているか」といった自然なコミュニケーションを持つことが大切です。放置されていると感じさせない、そのような状況を防ぐためにもこのような声掛けは有効です。

また、新入社員の中には、学生時代に「豆腐メンタル」や「コミュ障」といった言葉が日常的に使われているように「メンタルヘルス」といった直接的な言葉に敏感な部分もありますので、直接的な表現ではなく、自然なやりとりの中で見抜くことがポイントになります。

新入社員とコミュニケーションを取る際に心がけたいこと

「コミュニケーション能力不足」が見られがちな新入社員ではありますが、一社会人として、どこからどこまで話していいのか戸惑っていることもあるでしょう。また、彼らの持つ固有の背景や価値観を知ることも重要です。

株式会社日本能率協会マネジメントセンター「イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2020」報告書によると、コロナ前から変わらない気持ちとしては、「自分のことを認めてくれる環境で、無理なく、無駄なく成長したい」といった部分が依然として強くあります。

また、自己肯定感・自己効力感が他世代に比べて低いことが顕著であり、この結果に紐付いて、「失敗したくない」「他人の評価が気になる」といった意識も強く出ています。

これらに加えて、Z世代、外国籍の留学生など多様なバックグラウンドを持つ新入社員も増えています。かつて描いた新入社員像ちとは異なっていること、多様化している背景や価値観を把握し対応することも意識したい部分です。人事部やマネジャー、先輩社員は、対話を意識したコミュニケーションを取ることも大切になるでしょう。

もちろん、世代間ギャップは出てくる部分もありますが、これらを踏まえつつ、「距離感の縮まり」を作り出していくことが不調防止に役立つとも言えます。

マネジャーや先輩社員から声かけすることで、安心できる雰囲気作りを是非行っていただきたいと思います。距離感は帰属意識などにも密接に関係し、新入社員の心に安定感をもたらしますので、ストレス要因を軽減することにつながります。

出社スタイルを取らないテレワークなど在宅勤務の場合、なかなか雑談をする機会が持てないこともあるかと思いますが、SlackやChatworkなどの社内コミュニケーションツールの活用や、個人が持っていた「暗黙知」を社内全体で共有する「ナレッジ共有会」といったイベントを実施するなど業務内外でのかかわりを複数持つようにすることも欠かせない視点です。最近では、アバターによる仮想オフィスでの展開などもコミュニケーション活性化への期待ができます。

新入社員のためのメンタルヘルス対策の具体例

企業側のフォローアップと共に重要なポイントは、新入社員自らがケアできることです。

このセルフケアは、厚生労働省による「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中の、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」に定められた「4つのケア」のうちの一つにもなります。

具体的には、以下の2点です。

  1. 心身のサインから自らのメンタルヘルス不調を気づけること
  2. コミュニケーションを取る方法を知る、考える

1. 心身のサインからメンタルヘルス不調を気づけること

例えば、

「仕事のことを考えてしまい、よく眠れない」
「翌日の仕事のことを思うと気詰まりがする」
「集中力が切れ、ミスが多くなる」
「仕事を思うようにできない」
「職場でのコミュニケーションが取りにくくなった」

といったサインから自らのメンタルヘルス不調に気づけること、対処方法、ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解を学ぶことがセルフケアになります。

参考までに、「こころの耳」(https://kokoro.mhlw.go.jp/selfcare/)では、

「15分でわかるセルフケア ストレスとつき合う方法」の中でも分かりやすく説明されていますが、ヨガやストレッチ、適度な運動、睡眠時間や気負わない人とのコミュニケーションなど気軽に取り入れやすい方法が説明されています。また、専門家に相談することも有効です。

2. コミュニケーションを取る方法を知る、考える

次に、伝えることの見直しも考えてみましょう。ただ話すことだけではコミュニケーションが取れることにならないということです。相手に伝わるように伝え方を工夫して話すことが大切です。その上で、アサーティブなコミュニケーションを身につけることも有効でしょう。

このやりとりは、他者も自分も大切にするコミュニケーションになりますので、ストレス軽減に役立つと考えられます。

上記2つのような方法を知り、セルフケアのみならず、これらを実践する機会を人事部側で定期面談や研修の中に取り入れることも非常に有効です。

社内外で活躍を期待される新入社員にとっても、社会人生活にうまく対処できる術を身につけられることは長期的視点で考えても、有益だと思います。

また、これらのストレスへの対処力を身に付けることで、レジリエンスを高めることにもつなげることになるでしょう。

レジリエンスとは「うまく適応できる能力」であり、変化の激しい社会に適用していく上でも大切にしたい能力です。

新入社員をメンタル不調に陥らせないために企業ができること

先ほどまでセルフケアをご紹介しましたが、「職場において4つのケア」の中には、

  • ラインによるケア(管理職や上司など)
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア(産業医、保健師、人事労務管理スタッフなど)
  • 事業場外資源によるケア(社外の専門的な機関や専門家など)

があります。これら4つのケアが、メンタルヘルス不調の予防につながると考えられています。

加えて、「外部のリソースを活用すること」もお勧めです。

弊社が実施した例としては、メンタルヘルス不調予防、早期離職防止を意識した事例がありました。

ビルメンテナンス会社の現場技術職の方を中心に1on1面談代行を通して、

第三者による面談を実施。対象は入社1~2年目の若手社員でした。

この面談の中で、引き出された悩みや不安の抽出をし、社員自身が抱えるモヤモヤしている思いの整理を行い、メンタルヘルス不調の改善や定着支援につながる施策を行いました。

また、第三者のプロが入ることで、安心安全の場で話しやすい環境を作り出せたこともより効果を高めることができました。

メンタルヘルス不調は新入社員だけでなく、組織全体の問題として捉えることも大切

メンタルヘルス不調は、早期離職など会社全体の損失に大いになり得ることも指摘しておきたいポイントです。本人のみならず、周囲にも大きなダメージとなりうることが調査結果でも出ています。中でも、メンタルヘルス低下時の生産性は健康時の53%とも言われており、通常時から半減していることが挙げられます。※6

これは、一社員の問題として捉えるのではなく、ひとつの契機として会社全体の課題と見て再点検することも組織運営上、重要だと考えられます。

実際、ストレスチェックテストは50人以下の小規模事業所での実施は努力義務でありますが、助成金制度があります。その他、関係のある助成金一覧もありますので、詳しくは、 「こころの耳」の「助成金制度」(https://kokoro.mhlw.go.jp/support/#head-1)をご確認ください。

メンタルヘルス不調を未然に防ぐ取り組みは、社員の定着支援に寄与するだけでなく、健康経営にもつながりますので、大切にしたい部分です。

【参考】※6 T-PEC EAP NEWS「特集 疾患・症状等が仕事の生産性等に与える影響に調査」を読み解く」2013年 https://www.t-pec.co.jp/wp/wp-content/uploads/2013/07/pdf_cept_20130715_26.pdf

まとめ

・メンタルヘルスは「心の健康状態」のこと・新入社員がメンタルヘルスの不調を訴える2大背景として、「入社後のギャップ「リアリティー・ショック」による影響」「新型コロナウィルスによる環境変化の影響」がある。例年以上に丁寧なフォローアップが欠かせないポイントでもある。

・新入社員のメンタルヘルス不調の予防には、企業側の理解が重要。ストレスやメンタルヘルスについての知識を身につけること。「メンタルヘルス・マネジメント®検定」「こころの耳」「働く人のメンタルヘルスガイド」などを活用しましょう。

・新入社員のメンタルヘルスの不調にいち早く気づくためには、自然なコミュニケーションによるかかわりを持つこと。

・新入社員とコミュニケーションを取る際には、かつて描いた新入社員像が異なっていることを踏まえた上で、多様化している価値観を把握し対応すること。

・新入社員のためのメンタルヘルス対策の具体例としては、自らがケアできるように、「心身のサインから自らのメンタルヘルス不調に気づけること」「コミュニケーションを取る方法を知る、考える」を知る機会を作ることも大切。

・新入社員をメンタル不調に陥らせないために企業ができることとしては、セルフケア以外にも「職場において4つのケア」の中での「ラインによるケア(管理職や上司など)」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア(産業医、保健師、人事労務管理スタッフなど)」、「事業場外資源によるケア(社外の専門的な機関や専門家など)」を活用すること。加えて、「外部のリソースを活用すること」もお勧め。

・メンタルヘルス不調は新入社員だけでなく、組織全体の問題として捉えることも大切。社員の定着支援に寄与するだけでなく、健康経営にもつながるので、大切にしたい部分。