部下の指導で怒るのって大丈夫なの?怒ることの影響や対策について紹介!


部下の指導で怒るのって大丈夫なの?怒ることの影響や対策について紹介!

古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスは次のような言葉を残しています。

「怒ることは誰にでもできる。ただ怒るのは簡単なことである…しかし適切な相手に、適切な程度に、適切な場合に、適切な目的で、適切な形で怒ることは容易ではない」

そして、現代のビジネスシーンにおいても部下の指導で怒るという場面はあると思います。

しかし、「どのように怒れば良いのか?」「そもそも怒る指導法は正しいのか?」といった悩みを抱えているビジネスパーソンが多いのも事実。ということで、今回は部下の指導において「怒り」が与える影響について紹介したいと思います。

怒ることのメリット

ビジネスや教育の現場では怒ることがマイナスに捉えられることもありますが、必ずしもマイナスというわけではありません。「喜怒哀楽」という言葉があることからもわかる通り、人間にとって「怒り」というのは基本的な感情の1つ。

怒りという感情が生まれる際は、その人の本音が出やすいものです。適切に伝えることができれば、日頃思っている本音を伝えることで、部下と人と人の付き合いができることもあります。また、仕事や案件に対する真剣さや重要度が伝えることもできるでしょう。

しかし、暴言は職場の生産性を下げる

しかし、ここで注意しなければいけないことがあります。それは、自分の感情に任せてはいけないということです。

怒る 自分本位で感情に任せてする行為
叱る 相手本位で相手の気づきや成長を促す行為

「怒る」と「叱る」をこのように対比して語られることもありますが、部下や職場の成長ではなく、自分自身の感情を吐き出しただけの「暴言」は組織の生産性を下げるという研究もあります。

ジョージタウン大学のクリスティーン・ポラス教授は、暴言が生産性に与える影響を研究し、次のような結果を導き出しました。

暴言が生産性に与える影響

・直接暴言を吐かれた人は、処理能力が61%、創造性が58%下がる。
・自分に対してではないが、自分の所属しているグループに対して暴言を吐かれた人は、処理能力が33%、創造性が39%下がる。
・他人が暴言を吐かれるのを目撃しただけの人でも、処理能力が25%、創造性が45%下がる。
(※処理能力は「アナグラムパズルの成績」、創造性は「ブレインストーミングで提案できたアイデアの数」が基準)

特に注目すべきは、暴言を言われた部下だけではなく、その暴言を目撃したチームのメンバーの処理能力や創造性も落ちてしまうということです。自分の感情の発散で組織全体の生産性を下げてしまわないように注意が必要と言えます。

自主的に動ける組織は生産性が高い

また、怒りによる組織マネジメントは専制型のリーダーシップにつながり、組織が疲弊していってしまうこともあります。実際に、アメリカの心理学者レヴィンがアイオワ大学で行った実験では次のような結果が出ています。

専制型リーダーシップ 未熟で安定していない組織で緊急な意思決定を下す必要がある状況では成果を発揮する
民主型リーダーシップ 短期的には専制型リーダーシップより生産性が低いが、長期的には高い生産性をあげる

マネージャーが自分の感情を適切にコントロールできずに感情的になってしまうと、専制型のリーダーシップを招き、結果的には中長期的な生産性を落としてしまう危険性を孕んでいます。

怒りをコントロールするアンガーマネジメント

「本当は怒りたくないけど怒ってしまう」
「怒らない方が組織のためになるのは分かっている」
「部下に怒った後に後悔する」

という悩みを抱えている方もいるでしょう。そんな、あなたにオススメなのがアンガーマネジメントです。

アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで始まった方法論で、怒りを予防したりコントロールすることを目的としています。具体的には次のようなことを実践し、明かりを予防したりコントールしたりします。

・「カッとなってしまう」怒りの衝動をコントロールする
・無駄に怒らないように「許容範囲」のゾーンを広げる
・怒りの引き金となることを関係者に共有する
・怒り方のブレをなくす

アンガーマネジメントはビジネスだけでなく教育やスポーツの領域にも取り入れられており、徐々に広がりを見せています。日本アンガーマネジメント協会では、無料の診断テストや入門講座などの用意がありますので、気になる方はアクセスしてみてください。(日本アンガーマネジメント協会:https://www.angermanagement.co.jp/)

怒りに任せることにはデメリットしかない

冒頭で紹介したとおり、怒りという感情自体はマイナスなことではありません。怒りの感情の中にはあなたの「不快」「不安」「期待への裏切り」といった隠れた本音があるはずです。

その隠れた感情と向き合うことは重要ですが、怒りの感情をそのまま外に出してしまうということにはデメリットしかありません。一度冷静になり、自分も部下も良い方向に向かう方法を考えましょう。