新卒採用戦略の立て方|成果につながる6ステップと実践事例を完全解説

公開日: 2025年04月28日


新卒採用戦略の立て方|成果につながる6ステップと実践事例を完全解説

なぜ今、新卒採用に「戦略」が必要なのか?

「とりあえず毎年同じ流れで新卒を採っているけれど、本当にこのやり方でいいのだろうか?」

そんな不安や迷いを抱えている人事責任者・経営者の方も多いのではないでしょうか。少子化や就職活動の早期化など、近年の新卒採用市場は大きな変化の中にあります。従来の“なんとなくの採用”では、必要な人材を確保できない時代に突入しているのです。

本記事では、採用を「経営課題の解決手段」として位置づけ、単なる設計にとどまらない“体制と運用まで見据えた採用戦略”を6つのステップで詳しく解説します。

目次

新卒採用市場の変化と「戦略」の必要性

まず押さえておきたいのは、新卒採用が「売り手市場」であり続けているという点です。大学生の就職希望者数は年々減少傾向にあり、企業側の採用競争は激化。さらに、就活の早期化・長期化により、大学2年生の夏や秋から動き出す学生も増えています。

このような状況下で、場当たり的なアプローチをしても「優秀な学生にはそもそも会えない」「せっかく会っても内定辞退される」といった事態が起こりがちです。

応募が来ない、内定辞退が多い理由は「戦略不在」かもしれない

よくあるご相談として、

  • 母集団が集まらない
  • エントリーはあるがターゲット層ではない
  • 内定を出しても辞退されてしまう

といった課題がありますが、これらは単発の施策で解決するものではありません。採用全体の設計(=戦略)に立ち返る必要があります

たとえば、自社が本当に求めている人物像を明文化できていなかったり、他社と比較されたときの“訴求ポイント”が不明瞭だったりすると、選ばれる企業にはなれません。

経営戦略の一部としての「採用戦略」

新卒採用は単なる人員確保ではなく、将来の幹部候補や会社のカルチャーを担う人材との出会いの場でもあります。だからこそ、経営と地続きの目線で「どんな人材を、いつ、どのくらい、どのように採用するか」を設計することが不可欠です。

採用のやり方に“戦略”があるかないかで、出会える人材の質も、入社後の定着・活躍も大きく変わってきます。まさに、いま新卒採用に戦略的視点を取り入れることは、未来の企業競争力を高めるための投資だと言えるでしょう。

新卒採用戦略の立て方|基本ステップで抜け漏れ防止

「戦略が必要なのはわかったけれど、実際には何から始めればいいのか分からない…」
そう感じている方に向けて、ここでは新卒採用戦略を立てる際の基本ステップを6つに分けてご紹介します。抜け漏れを防ぎながら、自社にとって最適な採用計画を設計するための道筋を確認していきましょう。

ステップ①:採用の目的とゴールを明確にする

まず最初に行うべきなのが、「なぜ採用を行うのか」「どのような人が必要なのか」を明文化することです。
ここが曖昧なままだと、場当たり的な採用になり、ミスマッチや早期離職につながるリスクが高まります。

単なる人員補充ではなく、事業や組織の未来にどのように貢献してほしいかを軸に設計しましょう。

▼目的設定は“経営課題の言語化”から始まる

アールナインでは、採用を「人手不足の穴埋め」ではなく、経営課題の解決手段のひとつと位置づけています。
そのため、戦略の出発点として、以下のようなフレームで採用の目的を明確にします。

フレーム項目内容例
経営戦略今後3年間で新規事業を立ち上げ、売上を120%成長させる
組織課題プロジェクトを推進できる若手リーダー層が不足している
採用目的新規事業を牽引できる若手リーダー候補の採用
求める人物像課題解決型の思考ができる/自走力がある/変化を楽しめる

こうした設計を行うことで、採用活動が経営と地続きの戦略として機能し、現場や経営層との連携もスムーズになります。

▼ゴールは“いつまでに・誰を・何名”を具体化する

目的とあわせて重要なのが、ゴールの数値化とスケジューリングです。
たとえば、

  • 「半年以内に◯名の採用を完了させたい」
  • 「4月入社に間に合うよう◯月までに内定承諾を得たい」

といったように、採用完了の期限と必要人数を具体的に設定することで、次のステップ以降(チャネル設計・スケジュール設計)がぶれなくなります。

▼このステップを疎かにすると…

目的が曖昧なまま採用を始めると、

  • 「なんとなく良さそう」で採用したが早期離職してしまった
  • 想定よりもカルチャーが合わずチームに馴染めなかった
  • 配属部署と採用担当者で「欲しい人材像」がずれていた

といったミスマッチが起こりがちです。
逆に、採用の目的を組織全体で共有し、明文化しておくことが、すべての戦略設計の土台になります。

 ポイントまとめ

  • 採用は「経営課題の解決手段」として捉える
  • 目的設定は、経営戦略 → 組織課題 → 採用目的 → 求める人物像 の順に整理
  • ゴールは「誰を・いつまでに・何名」まで数値で明確化
  • 目的・ゴールの共有が、ミスマッチ防止と戦略実行のカギになる

ステップ②:求める人材要件を明確にする

採用戦略を成功させるには、「どんな人に来てほしいか」を具体的に定めることが欠かせません。
ここで重要なのは、スキルや学歴などのスペック情報にとどまらず、価値観・思考傾向・カルチャー適応性までを含めた“深い設計”です。

▼「活躍人材」の共通点から逆算する

まずは、社内で実際に活躍している社員を棚卸し、共通する特徴を洗い出します。

  • どんな価値観を持っているか
  • どのような場面で強みを発揮しているか
  • 周囲とどのような関係を築いているか

こうした特徴をベースに、“自社らしさ”にフィットする人物像=採用ペルソナを構築していきます。

▼アールナインの視点:カルチャーマッチは“行動”で定義する

アールナインでは、カルチャーフィットを「なんとなくの雰囲気」ではなく、行動ベースで言語化しています。

具体的には:

設計プロセス実施内容例
社員アンケート・1on1面談の実施価値観・判断基準・行動特性をヒアリング
活躍人材の共通項を抽出例:曖昧な状況でも前向きに動ける/地道な努力を積み重ねられる
カルチャーの“行動定義”を文書化面接官や現場と共有し、評価基準として活用

これにより、感覚に頼らない評価基準が確立され、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります

▼共通認識が“採用体験”の一貫性をつくる

ペルソナ設計は、採用担当だけでなく、面接官・現場マネージャーと共有することが極めて重要です。

アールナインでは、以下の観点で人材要件の解像度を高めています:

  • どんな価値観や判断軸を持つ人か
  • どのような情報に反応しやすいか(SNS/動画/ストーリー性など)
  • 入社後にどのような成長可能性があるか
  • どのタイミングで離脱しやすい傾向があるか(行動心理の把握)

こうした情報を人材要件に落とし込むことで、求人文・面接設計・フォロー内容まで、全ての施策に一貫性が生まれます

ポイントまとめ

  • 人材要件は「スペック」だけでなく「価値観・行動特性」まで描くことが重要
  • 活躍社員の棚卸し → カルチャーマッチの言語化が、採用の精度を高める
  • 面接官や現場とも共通認識を持ち、選考体験に一貫性をもたせる
  • 結果として、「この会社は自分を理解してくれている」という候補者体験をつくれる

ステップ③:現状の課題と環境を分析する(内部/外部)

採用戦略を立てる上で不可欠なのが、現状把握と課題の見える化です。
感覚や憶測ではなく、データと実態の両面から現状を分析することで、的確な改善策と戦略が導き出せます。

▼まずは採用フローを「数値」で棚卸しする

以下のようなKPI・歩留まりデータを時系列やチャネル別に整理することで、ボトルネックや改善余地が見えてきます。

  • エントリー数・通過率・内定率・承諾率などの数値
  • 辞退発生タイミングと理由
  • 採用にかかった費用(媒体別、工数別)
  • 内定者・新入社員の離職率やオンボーディング状況

これらの情報を可視化することで、単なる結果分析ではなく、課題の構造と因果関係が見えてきます。

▼アールナインの視点:「演繹×帰納」で戦略を設計する

アールナインでは、現状分析において2つのアプローチを併用しています。

アプローチ概要
演繹的アプローチ経営・組織戦略から“理想の人材像”を導き出し、現場とのギャップを測る
帰納的アプローチ実際に活躍している社員の特徴や採用データから“成功パターン”を抽出する

両者を組み合わせることで、「あるべき姿」と「現場のリアル」をつなぐ実行可能な戦略設計が可能になります。

▼競合比較で“選ばれない理由”を可視化する

現状分析には、自社の中だけでなく、競合他社との比較視点も重要です。

たとえば:

  • 自社にしかない魅力は何か?
  • 選考スピードや面接対応の丁寧さに差はあるか?
  • 辞退者は他社のどこに魅力を感じていたのか?

アールナインでは、辞退者インタビューを外部パートナーが実施することで、学生の本音や企業イメージのギャップを把握し、以下のような改善に活かしています:

  • 訴求ポイントや説明会資料の改善
  • 面談・面接で伝えるべきメッセージの最適化
  • フォロータイミングの見直し

このように、現状分析は単に課題を洗い出すだけでなく、「何を伸ばせば勝てるか」を見極める工程でもあります。

ポイントまとめ

  • 感覚ではなく、数値と実態に基づいてボトルネックを可視化
  • 経営戦略と現場の実態をつなぐ「演繹×帰納」の2軸で分析
  • 辞退者の声や競合比較を通じて、選ばれる/選ばれない理由を深掘る
  • 分析は“課題発見”だけでなく“成功再現”の手がかりにもなる

ステップ④:戦略・方針を策定する

現状の課題や人材要件を明確にしたら、次は「誰を・どの手法で・いつ・どのくらい採用するか」という戦略方針の具体設計に移ります。

ここでは、“どのチャネルで、どのように接点をつくり、どう動機づけていくか”を設計図レベルで組み立てることが重要です。

▼アールナインの視点:「目的×コスト」でチャネルを選定する

採用チャネルの選定では、単に「流行っているから」「他社も使っているから」ではなく、目的とコストのバランスで戦略的に選ぶ必要があります。

アールナインでは、以下のようなマッピングでチャネルを分類しています

このように目的別・コスト別に整理することで、限られたリソースでも効果的なチャネル設計が可能になります。

▼成果を分ける“チャネルの組み合わせ設計”

チャネルは単体で使うのではなく、課題に応じて複数を組み合わせて使うことで、相乗効果が生まれます。

アールナインの支援事例では、次のような“戦略的組み合わせ”が成果につながっています:

課題組み合わせ戦略例
認知不足で応募が来ないナビ媒体 × SNS発信 × 自社HP改善 → 接触機会を増やし認知を最大化
面談離脱が多いDR × タレントブック × カジュアル面談 → 個別性+共感で歩留まり改善
内定辞退が多い紹介会社 × 動画コンテンツ × 定期LINEフォロー → 不安払拭と安心形成

重要なのは、「目的ごとにチャネルを使い分け、接点を意図的に設計する」ことです。

▼外部パートナーを“戦略的に使う”という選択肢

限られたリソースの中で成果を出すには、すべてを内製しない=戦略的な外部活用も視野に入れるべきです。

たとえばアールナインでは、以下のような業務を外部化することで、人事が“戦略”に集中できる体制を整えています。

  • DRやスカウト送信の代行
  • 面談・面接の同席
  • 内定者フォローやモニタリングの設計・運用
  • 応募者へのアプローチ文面・訴求コンテンツの制作

外注は“手放すこと”ではなく、自社の目的を達成するための手段の一つと捉え、適切に組み込むことがカギです。

ポイントまとめ

  • チャネルは「目的×コスト」で整理し、効果的に選ぶ
  • 複数チャネルの組み合わせで課題解決力を高める
  • 外部パートナーの力を活用し、戦略遂行に集中できる体制をつくる
  • チャネル戦略は、採用成果を左右する“実行の根幹”

ステップ⑤:採用プロセスとスケジュールを設計する

採用戦略の実行を成功させるには、年間スケジュールと選考プロセスの設計が不可欠です。
特に近年は、学生や転職希望者の意思決定がより早く・鋭くなっており、“スピード感”と“接点密度”の両立が成果を分けるポイントとなります。

▼採用目標から逆算したKPI設計を行う

たとえば、最終的に5名を採用したい場合:

  • 最終面接通過:10名
  • 一次面接通過:30名
  • エントリー数:100名

といったように、各フェーズごとの歩留まりと必要数を算出し、KPIを基準に採用プロセスを設計します。
これは、単なる数合わせではなく、工数や日程確保のリアリティを持たせるための設計図となります。

▼アールナインの視点:「スケジュールは戦略の一部」

アールナインでは、スケジュールを「単なるカレンダー」ではなく、候補者の意思決定をコントロールする戦略ツールと位置づけています。
以下の3つの視点を組み込むことで、印象・歩留まり・承諾率の改善につながります。

【1】“比較タイミング”を意識する

  • 同業他社の選考スケジュールを調査し、被らない時期に接点を持つ
  • 内定出しを早めに設計し、他社検討前に志望度を高めておく

→「比較される前に印象づける」ための先手設計がカギです。

【2】接点間隔を空けすぎない

  • 面談・面接の間が空くと熱が冷め、辞退や離脱が増える傾向に
  • 各接点のインターバルは原則1週間以内に抑え、テンポよく進める

→LINEや動画など、“短い接点”を挟む設計も有効です。

【3】満足度を高める体験設計

選考に対する候補者の満足度は志望度に大きく影響を与えます。
候補者の満足度を高めるためのポイントをいくつかピックアップします。

  • 最終面接を含め「6回以上の接点」を持たせる
  • 初回接点はカジュアル面談にする
  • 面接や面談の満足度を高める
  • 接点を実施したあとのフォローも欠かさない

▼社内の体制と“すり合わせ”て設計する

スケジュールは候補者だけでなく、社内体制との連携設計も重要です。

  • 面接官のスケジュールを事前に確保
  • 配属予定部署や経営陣との連携タイミングを明確化
  • 万が一の“落としどころ”やリスケ対応の余白を持つ

→「理想的な設計」ではなく、「運用できる設計」をつくることで、実行力が高まります。

ポイントまとめ

  • 採用KPIから逆算したプロセスと数値設計が必要
  • スケジュールは「戦略」であり、「印象設計」の武器になる
  • 候補者の選考に対する「満足度」を高めることを意識する
  • 社内体制とも連動した、運用可能なプロセス設計を

ステップ⑥:社内共有と体制づくり

採用戦略を立てて終わりではなく、それを実行できる社内体制と運用フローを整えることが、成果につながる最大のポイントです。
採用は人事部だけの仕事ではなく、「会社全体で取り組むべきプロジェクト」として捉えることが必要です。

▼面接官・現場・経営層との連携設計がカギ

以下のような社内連携を設計することで、一貫性のある採用体験と高い評価精度が実現します。

  • 面接官の評価軸統一・ロールプレイ実施
  • 配属予定部署とのペルソナすり合わせ
  • 経営層とのビジョン共有・登壇機会の設計
  • 採用広報への現場社員の巻き込み(座談会・SNS発信等)

こうした「巻き込み型採用」は、候補者の志望度にも好影響をもたらします。

▼アールナインの視点:体制構築は“再現性”のための仕組み化から

属人化を防ぎ、長期的に強い採用体制をつくるために、アールナインでは以下のような**“仕組み”の構築**に力を入れています。

項目実施内容例
ナレッジの明文化採用ペルソナ・評価基準・運用フローをドキュメント化
業務の仕組み化スカウト文面テンプレート、面談・面接のスクリプト化
評価体制の平準化複数評価者制、役割分担(見極め/訴求)を明確化
フィードバックループの設計振り返りMTGや辞退者インタビューによる継続改善体制

このように、「誰がやっても再現できる」「次年度にも引き継げる」状態をつくることが、強い採用チームの条件です。

▼候補者体験(CX)と定量・定性の振り返り

採用活動後には、以下の2つの視点で振り返りと改善を行いましょう。

  1. 定量データでの検証
    • 各フェーズの歩留まり
    • 応募チャネル別の効果
    • 辞退・内定承諾の比率推移
  2. 候補者体験(CX)の検証
    • 応募者アンケート
    • 面談中の温度感変化
    • 辞退理由の収集(第三者ヒアリング含む)

→アールナインでは、辞退・早期離職の理由を外部のプロによるインタビューで回収し、「伝え方」「期待値コントロール」「フォロー設計」への改善に役立てています。

ポイントまとめ

  • 採用は人事部門だけでなく「全社で取り組む体制づくり」が成果を左右する
  • 属人化を防ぐナレッジの明文化・業務の仕組み化が必須
  • 振り返りは「数値」だけでなく「体験」からも行うことで、次回施策の精度が高まる
  • 外部の力も活用し、継続改善可能な“採用組織”をつくることが最終ゴール

これら6つのステップを踏むことで、自社に合った採用戦略を設計できるようになります。
設計だけにとどまらず、実行と振り返りをセットで回すことで、より強固な採用基盤が構築できるでしょう。

実行段階で差がつく!採用活動フェーズ別の工夫ポイント

戦略を立てただけでは、採用はうまくいきません。
むしろ、「戦略をどう実行に落とし込むか」によって、採用成果は大きく変わります。ここでは、採用プロセスを4つのフェーズに分けて、それぞれの段階で意識すべき工夫ポイントを紹介します。

フェーズ1:認知獲得・母集団形成

優秀な学生に出会うためには、まず「知ってもらう」ことが第一歩です。今やナビ媒体だけでなく、SNS・採用動画・オウンドメディア・逆求人サイトなど、接点の多様化が進んでいます。

  • SNS活用(InstagramやXなどで社風・社員の姿を発信)
  • 社員インタビュー記事やYouTubeでの採用動画
  • ダイレクトリクルーティングやスカウト送信の活用

といった施策を、自社のターゲットやリソースに応じて組み合わせましょう。
「学生の目に触れる」「印象に残る」設計が、母集団形成の鍵になります。

フェーズ2:エンゲージメント強化・志望度向上

応募してくれた学生に「ここで働きたい」と思ってもらうためには、エンゲージメントの強化が必要です。

  • 社員との座談会
  • カジュアル面談
  • インターンシップや会社体験ワークショップ

など、双方向のコミュニケーション機会を増やすことで、学生の理解や納得感が深まります。

また、学生目線で不安や疑問に寄り添うような対話を通じて、「この会社なら大丈夫そう」という信頼感を生むことができます。

フェーズ3:選考プロセス設計・体験設計

選考段階では、「選ばれる企業」になるための“体験設計”が問われます。特に注目されるのは、

  • 選考スピード:テンポよく進むかどうか(他社に取られる前に動けるか)
  • 面接の質:学生を理解しようとする姿勢があるか、会社の魅力が伝わっているか
  • 一貫性:面接官ごとに評価軸がブレていないか

このように、選考そのものが学生にとって「企業を見極める時間」でもあることを意識しましょう。
特に、選考途中でのフィードバックやメッセージのやり取りが丁寧な企業は、学生からの評価が高まる傾向にあります。

フェーズ4:内定後フォロー・入社意向の維持

内定を出して終わりではありません。辞退防止や早期離職防止のためには、内定後のフォローが重要です。

  • 定期的な連絡(LINEやメールでのメッセージ)
  • 内定者懇親会・先輩社員との交流
  • 内定者インターンや事前研修
  • 不安や期待を聞く1on1面談 など

接点を切らさないことに加え、「この会社に入ったら、ちゃんと成長できそう」という将来像を描けるような情報提供も有効です。

特に、人事以外の社員が関わるフォロー施策は効果が高く、学生のエンゲージメント向上に繋がります。

これら4つのフェーズは、戦略を「行動」に落とし込む際のチェックポイントでもあります。どの段階に課題があるのかを見極め、フェーズごとに改善策を講じることで、戦略の実行力は大きく高まるでしょう。

2025年注目の新卒採用トレンドと手法まとめ

採用市場の変化は年々スピードを増しており、戦略的に採用活動を進めるには、最新のトレンドを押さえることが欠かせません。
ここでは、2025年卒以降に特に注目される新卒採用の手法・潮流をまとめてご紹介します。

トレンド①:ハイブリッド型採用の定着

コロナ禍で急速に進んだオンライン選考は、現在ではオンライン+対面を組み合わせたハイブリッド型として定着しつつあります。

  • オンライン:説明会・一次面接などで効率化
  • 対面:最終面接や職場見学でリアルな魅力訴求

学生も「一部はオンラインで済ませたい」「でも雰囲気は直接見たい」というニーズを持っており、柔軟な選考体験の提供が選ばれる理由のひとつになります。

トレンド②:ダイレクトリクルーティング(攻めの採用)の活用

ナビ媒体に頼るだけでなく、自社から能動的に学生にアプローチする**ダイレクトリクルーティング(DR)**も普及しています。

  • OfferBox、キミスカ、dodaキャンパスなどの逆求人型サイト
  • スカウトメッセージのパーソナライズ化
  • 優秀層への早期接触と囲い込み

といった施策により、「会いたい学生」に絞った効率的な採用が可能です。
また、ナビ非活用層(情報感度が高く自律的な学生)へのアプローチにも有効です。

トレンド③:ソーシャルリクルーティング(SNS採用)の強化

InstagramやX(旧Twitter)、TikTokといったSNSを使った情報発信型の採用活動も増えています。

  • 社員インタビューや働く様子の投稿
  • 就活アカウントの運用(就活生との接点を構築)
  • ストーリーズやリールを使った手軽な動画訴求

これらは「雰囲気が伝わりやすい」「気軽に情報を得られる」媒体として、学生からの支持が高まっています。
中小企業でも“知ってもらう”ための手段として効果的です。

トレンド④:カジュアル面談・座談会など“非選考接点”の充実

学生との信頼関係を構築するには、選考外の場で本音を引き出すことがカギです。
以下のような**「カジュアルな接点」**が増えています。

  • 1on1カジュアル面談(エントリー前後に実施)
  • 社員との座談会(職種・年代別に設定)
  • 就活相談イベント(企業からの売り込みをしない姿勢)

こうした場では、企業の人柄やカルチャーが自然に伝わりやすく、学生の志望度を高めるきっかけになります。

トレンド⑤:内定者フォローの強化と可視化

内定後の辞退防止に向けて、計画的なフォロー体制の構築が進んでいます。

  • 定期連絡・懇親会だけでなく、1on1ヒアリングやサーベイの実施
  • 内定者の心理状態を可視化し、フォロータイミングを最適化
  • オンライン内定者イベントや入社前研修の充実

特にフォローを“仕組み化”する企業が増えている点が、以前との大きな違いです。

これらのトレンドを全て取り入れる必要はありませんが、自社の採用課題やリソースに合わせて選択・組み合わせることで、より時代に合った、学生に選ばれる採用活動を実現することができます。

成功企業に学ぶ|戦略的採用の事例と失敗からの学び

戦略的な採用は、実際にどのような成果につながるのか。
ここでは、実際の企業事例をもとに「成功につながった取り組み」と、逆に「戦略不在によって生じた失敗」から得られる学びを紹介します。

成功事例①:全社巻き込み型で採用力を強化したメーカーA社

地方に拠点を持つ中堅メーカーA社では、数年にわたり「新卒が集まらない」「辞退率が高い」という悩みを抱えていました。
そこで採用活動を“人事部門だけの仕事”から“全社プロジェクト”へと転換。現場社員を巻き込み、以下のような施策を実行しました。

  • 現場社員による説明会登壇
  • 配属部門主導の座談会やインターン
  • 社員紹介(リファラル)制度の導入

その結果、学生からの信頼が増し、志望度・定着率ともに向上。採用目標も前倒しで達成するなど、戦略実行の好例となっています。

成功事例②:デジタル戦略で認知拡大に成功したスタートアップB社

B社は知名度の低さからエントリーが集まらず、毎年の採用が苦戦していました。
課題は「まず知ってもらう」こと。そこで、以下のようなデジタル戦略に基づくプロモーションを展開しました。

  • 採用オウンドメディアの立ち上げ
  • 社員ストーリー記事やSNS発信の強化
  • Wantedly等を活用したダイレクトリクルーティング

さらに、母集団形成後は内定者フォローを“専任担当が伴走する”体制を構築し、結果的に承諾率90%超を実現。
「認知〜志望化〜内定承諾」までの一貫した戦略設計が功を奏した事例です。

失敗事例:戦略不在により母集団形成も選考も機能しなかったC社

一方、業界大手ながら戦略設計をしていなかったC社では、「とりあえず例年通り」で進めた結果、次のような問題が発生しました。

  • ナビ媒体に出すも、ターゲット層の応募が集まらない
  • 面接官ごとに評価基準がバラバラで、通過者に偏り
  • 内定後のフォローが薄く、辞退者が続出

根本的な原因は、採用ターゲット・訴求軸・選考設計が曖昧だったこと。「場当たり的な対応の積み重ね」が採用全体の迷走につながった失敗例です。

成功企業に共通するポイント

いずれの成功事例にも共通しているのは、「課題を明確化し、目的に合わせて戦略を立てたこと」です。
また、実行フェーズでは社内リソースだけに頼らず、外部の専門パートナーを活用していた点も、成果につながる要因のひとつでした。

このような事例から学べるのは、採用活動を“なんとなく”進めるのではなく、意図と設計を持って進めることの重要性です。
特に、社内にノウハウや人手が足りない場合には、外部との連携も視野に入れた戦略構築が必要だと言えるでしょう。

中途採用戦略との違いと共通点から学ぶ、新卒採用の特徴

「戦略的に採用活動を進めたい」と考えたとき、新卒と中途で何が違い、何が共通しているのかを整理しておくことは重要です。
このパートでは、両者の違いと共通点を対比しながら、新卒採用戦略を立てる際に意識すべきポイントを明らかにしていきます。

採用目的の違い|“即戦力”か“将来の戦力”か

  • 中途採用:不足しているスキル・経験を補うための即戦力補充が主な目的
  • 新卒採用:将来を見据えて、ポテンシャルの高い人材を育成前提で迎え入れる

新卒採用は、短期的な人員補充ではなく中長期の人材育成計画に基づいた投資的採用である点が大きな特徴です。

選考設計・判断基準の違い

  • 中途採用:職務経歴やスキルのマッチ度を重視
  • 新卒採用:過去の経験よりも価値観や将来性、カルチャーフィットを重視

中途では「できるかどうか」が評価基準になる一方、新卒では「伸びるかどうか」「合いそうかどうか」が判断軸になります。
そのため、新卒採用では評価基準の言語化と、面接官間の基準統一が戦略上欠かせません。

採用スケジュールと歩留まり設計の違い

  • 中途採用:常時採用や通年採用が基本。スピードが重視される
  • 新卒採用:年単位での計画が必要。歩留まりや内定後フォローも重要

新卒は、説明会→選考→内定→入社まで半年〜1年かけて計画的に進める必要があるため、戦略設計の複雑性が高くなります。
また、母集団形成から承諾率、辞退防止策まで一連のKPI管理が重要です。

共通点:採用成功のカギは「設計」と「体験」

新卒・中途を問わず、採用活動の成否は「誰を採るのか」「どう選ぶのか」「どう訴求するのか」の設計次第です。
そしてもう一つ、見落とされがちなのが“候補者体験(CX)”の設計。学生も中途転職者も、選考や接点の中で企業に対する印象を持ち、それが「この会社に入るかどうか」の意思決定に直結します。

  • 面接での対応の丁寧さ
  • 情報提供のタイミングと質
  • 不安への寄り添い

など、細かな接点一つひとつが、戦略に基づいた“体験価値”になっているかが共通の成功要因です。

経営判断としての“戦略設計”は共通項

新卒も中途も、採用は人材という“経営資源”をどう獲得するかという戦略そのものです。
「この層を採るべきか」「いつ採るか」「どこにアプローチするか」は、単なるオペレーションではなく、経営判断として取り組むべきテーマです。

特に新卒採用は、採ってから活躍するまでに時間がかかる分、先を見据えた設計力が求められる――それが最大の違いとも言えるでしょう。

このように、新卒と中途ではアプローチの仕方や設計の難易度は異なりますが、「戦略を持って採用に取り組む」という本質は共通です。
それぞれの特性を理解し、目的に応じた設計と体制を組むことで、安定した人材獲得が可能になります。

限られたリソースで成果を出す!採用体制と外部活用の考え方

「戦略を立てることの重要性はわかっている。けれど、そこに割ける人や時間がない…」
多くの企業にとって、新卒採用は“重要だけど専任がいない”領域です。
この章では、限られたリソースの中でも採用成果を最大化するために、どのような体制を築き、どこまで自社で担い、どこを外部に委ねるかを考えるヒントをお伝えします。

社内で成果を出すには「巻き込み」と「明文化」がカギ

少人数の人事体制で採用を成功させている企業には、共通点があります。それは、現場社員や経営層を含めた巻き込み型の体制を作っていることです。

  • 配属予定部署と連携して求める人物像を明確にする
  • 面接官に共通評価軸を共有し、判断の質を高める
  • 採用広報や座談会への社員協力を得る

といったように、「採用は人事だけの仕事ではない」という認識を社内に浸透させることがポイントです。

また、担当が変わっても対応できるよう、ナレッジの言語化・運用の仕組み化を進めておくと、長期的に安定した採用活動が可能になります。

すべてを内製しない、という戦略的発想

一方で、社内で担うにはどうしても難しい領域もあります。
たとえば…

  • SNSやスカウトツールなど、新しいチャネルへの対応
  • 選考調整や面談同席など、煩雑な実務の対応
  • 内定者フォローの仕組み化やモニタリング

これらは、社内にナレッジがない/時間が足りないという理由で対応が後回しになることも多い分野です。
このような場合、外部の専門リソースを部分的に活用することは、決して“逃げ”ではなく“戦略”です。

採用代行をうまく使えば、戦略実行に集中できる

たとえば、採用代行(RPO)を活用すれば、面談・面接の代行、スカウト送信、内定者フォローの設計・実行など、戦略を実行するための手足を社外に確保できます。

こうすることで、人事は

  • 戦略の立案・ブラッシュアップ
  • 経営層や現場との連携
  • 採用方針の意思決定

といったコアな業務に集中できる環境が整います。

外部に依頼する=すべてを丸投げ、ではありません。
あくまで「自社の目的を達成するためのリソース拡張」と捉え、必要な部分だけを柔軟に任せることができるサービスを選ぶことが重要です。

「費用対効果」の視点で考える採用体制

採用活動において見落とされがちなのが、“コスト=金額”ではなく、“コスト=時間・労力・成果”であるという視点です。

  • 社内で採用業務に数十時間かけても成果につながらない
  • ノウハウがないまま取り組んでPDCAが回らない

こうした状況が続くのであれば、外部活用によって時間を買い、失敗リスクを減らし、意思決定の質を高めることが、結果として費用対効果の高い選択になります。

自社ですべてを完結することが難しい今、“全部やる”から“うまく組み合わせる”採用体制へ
社内外の力を適切に使い分けることで、限られたリソースでも、十分に戦略的な新卒採用を実現することが可能になります。

まとめ|新卒採用は「戦略×実行×体制」で勝負が決まる

本記事では、新卒採用戦略の重要性から始まり、具体的な設計ステップ、実行フェーズごとの工夫、最新トレンド、そして成功・失敗事例や体制づくりに至るまでを一気通貫で解説してきました。

ここで改めて、新卒採用戦略の本質をまとめておきます。

採用戦略の本質は、「計画された意思決定」の連続である

新卒採用において、“なんとなく例年通り”では、変化の激しい市場に対応できません。
どのような人材を、いつ・どのチャネルで・どんな手法で獲得するのか――この意思決定を1つひとつ設計していくことが、戦略です。

この“戦略”を描いたうえで、
● 実行に落とし込めているか(プロセス・KPI)
● 社内外のリソースをどう使うか(体制)
この2つを組み合わせることで、採用成果の差が生まれます。

戦略がある企業は、「選ばれる企業」になる準備ができている

母集団形成がうまくいかない、辞退が続く、定着しない──こうした課題の裏には、設計不足・体制不足が隠れていることがほとんどです。

逆に言えば、戦略に基づいた準備をしておくことで、

  • 出会うべき人材に出会える
  • 他社と差別化した魅力訴求ができる
  • 学生に「ここで働きたい」と思ってもらえる

といった状態が自然とつくられていきます。

自社リソースだけで限界を感じたら、“外部の力”も視野に

ここまで読んで、「やりたいことは見えたけれど、実行まで手が回らない」という方もいらっしゃるかもしれません。
そのときは、採用代行やプロの支援など**“部分的に手を借りる”という経営判断**も検討の余地があります。

採用は未来への投資です。限られたリソースの中でも、失敗リスクを抑え、着実に成果を出すための戦略と体制を整えていきましょう。

最後に

新卒採用は、目先の人員補充ではなく、企業の未来をつくる活動です。
採用戦略の立案・実行・改善サイクルを回しながら、社内に強い採用基盤を築いていくことで、激変する採用市場においても“選ばれる企業”であり続けることができます。

戦略の質だけでなく、それを“社内で回し、改善し続ける体制”を築くことこそが、長期的に選ばれる企業であり続けるための鍵です。ナレッジの明文化、評価基準の統一、CXの設計と振り返りまでを含めて初めて、採用戦略は完成します。

この記事が、貴社の新卒採用をよりよいものにするための一助となれば幸いです。

ryo-nagai

この記事の監修者:長井 亮

1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。