定着率を高める効果的な新人教育とは?~新入社員の意識調査から読み解く~
今回は、効果的な新人教育、新入社員フォロー研修の在り方や指導方法について、今年の新人の傾向を踏まえながら考えていきます。
コロナ禍でオンラインの新人研修が増加しています。今後もこの傾向は続くと思われますが、「新入社員の傾向」を意識して研修のカリキュラムや全体のプログラムを設計・実施することはこれまでと同様変わりません。
今年の新人が「働く上で大切にしていること」や「職場や上司に期待していること」、「仕事をする上で不安に思っていること」などを紹介しながら、定着率が高まる新人への教え方についてポイントをお伝えします。
Contents
2020年度新入社員の意識調査の結果とは?
2020年6月3日に発表された”2020年新入社員意識調査”アンケートにおいて、特に印象的で研修内容に活かせる結果をご紹介いたします。(出典:”【調査発表】 2020年新入社員意識調査” 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ )
【理想の職場】は「アットホーム」
困っている時はお互いに助けあったり、考えや価値観を押し付けない個性を尊重する「アットホーム」な環境を求める傾向にあります。
逆に、活気がありお互いにライバルとして切磋琢磨し合うような環境はあまり求められていない結果となりました。
また、アットホームで「失敗を気にしない」環境があれば、チャレンジ精神がもてるという意見も多くありました。
個人プレーよりもチームプレーを好む傾向があり、「一つの目標に向かって皆が一致団結して進めていく」環境を望む声も多く聞かれました。
【理想の上司像】は「相談にのる」「フォローする」「褒める」
「メンバーが困っている時は相談にのりフォローしてくれる」上司が1番人気です。続いて、ほぼ同数で、「よい点があれば積極的に認め、褒める」という関わり方をおこなってくれる上司が2番人気となりました。
一方で「仕事の進め方は本人の考えややり方を尊重して任せる」上司が最下位となり、個人を尊重してほしいと思いつつも、仕事の全てを任せられるのは嫌だという特徴がみられました。
このことから、上司は部下に対して仕事に関する丁寧な指導を行い、良い点は褒めて伸ばすこと。そして、苦手な仕事や難しい仕事にはしっかりフォローを行い、困った時には親身に相談にのる姿勢が求められていると言えます。
【仕事上での不安】は「仕事」「人間関係」「環境の変化」
「仕事についていけるか」が1位となる傾向は変わらないものの、今年の特徴として「先輩・同僚とうまくやっていけるか」「自分が成長できるか」「生活環境や習慣の変化に対応できるか」のポイントがここ数年で一番増えている傾向にあります。
コロナ禍において研修も仕事もオンラインで対応することが多く、職場のコミュニケーション不足による不安も隠せません。また、自分はが他の新入社員と比べて仕事が身についているのか、成長できているのかが不透明であることによる不安の声も多く聞かれました。
【伸ばしたいこと】は「プレゼンテーション」「論理的思考」「文章力」
「コミュニケーション」と「専門知識」が1位と2位を占める中、この10年間でのポイント伸び率が最も高かったのが「論理的思考」。次いで「プレゼンテーション」「文章力」の順となりました。
最近では採用試験で「論理的思考」を求める問題も多く、仕事上でも必要なスキルであることを多くの新入社員が理解していると言えるでしょう。また、この10年間伸び続けている項目として「文章力」があります。もはやビジネスのコミュニケーション手段の主流は電話ではなくメールやチャットであることの表れで、今後も必要不可欠なスキルになるでしょう。
定着率を高める効果的な新人教育のポイント5つとは?
それでは、これらの意識調査結果を効果的に新人教育に活かし、定着率を高めるポイントを5点お伝えします。
①「個人」ではなく「チームプレー」
ビジネスマナーのロールプレイングや論理的思考で考えさせる研修では、他者と比べたり競い合いながら身につけていく機会も多いと思いますが、その場合は「個人同士」を競い合わせるのではなく「グループワーク」で学ぶほうが効果的と言えるでしょう。お互い助け合いながら課題に取り組む方がプレッシャーも少なく安心感をもって取り組め、本来の力を出しやすくなるでしょう。
オンライン上でグループワークが難しい場合は一人ずつではなく全員で一斉に取り掛かることをおすすめします。
②「新人が伸ばしたいスキルの習得」をカリキュラムに導入する
ビジネス上のコミュニケーションツールやアプローチの方法も大きく変化を遂げる中、新人が求めている「文章力」は必須のスキルとなっています。スマホ世代はメールの書き方を知らないことも多いですので、ビジネスメールやチャットのルールも合わせて研修内容に取り入れるとよいでしょう。
また苦手とする分野よりもまずは「興味のある・伸ばしたい分野」「得意とする分野」を先行してカリキュラムに導入してあげると、新入社員全体のモチベーションもあがり、効率的な研修運営につながります。
③研修後は一人ひとり個別にフォローする
研修後には必ずアンケートをとり、本人の習得度合いを確認しましょう。またその結果をもとに上司や先輩が個別に相談にのり、難しかったところや理解できなかった点をフォローする体制を整えておくとよいでしょう。
④入社後1年間は同じ質問をされても受け入れる
簡単な雑談もままならないコロナ禍において、改めて職場での「雑談力」の重要性を認識された方も多いのではないでしょうか。
職場でのコミュニケーションをまだ構築できていない新入社員の中には、電話やメールで聞くほどでもないちょっとした質問を抱え込んだままの方もいるかもしれません。特異な状況で入社された今年度の新入社員においては、特に「今さら」「また」と思う質問でもぜひ毎回丁寧に答えていただければ信頼関係を構築することにもつながります。
⑤研修後もフォローする、褒める
新人研修が終わったら、できればすぐに一人立ちさせずに上司や先輩にいつでも相談・フォローできる体制をつくります。新人が研修で学んだことを実務で活かすことができたら、上司や先輩は躊躇なく褒めてあげましょう。さらに業務以外のささいなことでも相談にのる姿勢をみせると、新人も安心してチャレンジ精神をもち自分から一人立ちしようと努力するでしょう。
まとめ
いかがでしたか?「仕事は盗むもの」「先輩の背中を見て学べ」という時代もありましたが、ここ数年の新人の特徴から「褒めて伸ばす」方が長い目で見て効率的な指導方法と言えるでしょう。
研修を効率的に実施するためのキーワード「フォローする」「相談にのる」「褒める」にぜひ取り組んでみてください。ポイントは「何事も丁寧に」行うことです。以前から取り組んでいるという方も、つい形式的に行ってしまうフォローでは逆効果です。ご多忙の中大変かとは思いますが、新人のうちにしっかりと丁寧な指導ができれば、定着率も高まり、ゆくゆくはあなたの右腕となりあなたを助けてくれる存在になってくれることでしょう。