Googleが重視する心理的安全性とは?社員の生産性を高める方法
「思ったことは何でも言ってね」。部下にそう伝えても、なかなかアイデアや意見がでてこないと感じることはありませんでしょうか。退職する社員にヒアリングすると、「実は今まで言いづらくて….」「怒られると思って…」というような本音を教えてくれることもあります。そのような不安を抱えている状態では、生産性の高い仕事をこなすことはできません。
今回はGoogleが重要視する「心理的安全性」という観点から、生産性を高める方法を解説していきます。
Googleが重要視する心理的安全性とは
ビジネスの場では、課題に対しての解決案や、新規事業のアイデアなど自由な発想が求められます。心理的安全性は、Googleが「成果の出るチームの共通点」として重要視するものの1つです。
2015年にGoogleは成功するチームを作るための「5つの鍵」を公開しています。この「5つの鍵」というのは、高い生産性を出すために必要な5つの要素です。そして、その中でも「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」とGoogleは提唱しています。
心理的安全性とは、“対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方”であるとGoogleは説明しています。つまり、“無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ”と信じられるかどうかを意味します。このように、過度な不安のない状態でこそ生産性をあげることができると考えています。
出典: Google re:Work
4つの不安がもたらす影響
心理的安全性を阻害する要因として下記の4つの不安要素があります。
・無知だと思われる不安
・無能だと思われる不安
・邪魔をしていると思われる不安
・ネガティブだと思われる不安
それぞれの不安の内容ともたらす影響について順番に解説していきます。
・無知だと思われる不安
無知だと思われる不安があると、不明確なことでも質問することを躊躇してしまいます。それにより、良く分からないまま業務を進めてしまったり、内容が分からないまま会議に参加してしまうようなことが起こります。そして、不明確なことを放置することにより大きなミスにつながる可能性もあります。
・無能だと思われる不安
無能だと思われる不安があると、自分の失敗や能力不足を隠すような行動をとってしまいます。それにより、本人の成長を妨げるだけではなく、ミスの隠蔽が大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
・邪魔をしていると思われる不安
邪魔をしていると思われる不安があると、意見出しを遠慮するようになります。自分が発言すると邪魔だと怒られてしまうのではないかと感じ、積極的な発言ができなくなります。それによりチームから創造的なアイデアが生まれなくなります。
・ネガティブだと思われる不安
ネガティブだと思われる不安を感じると、建設的な方向に進めるための反対意見だとしても、否定的な発言をすることに対して躊躇してしまいます。それにより、確信をついた協議ができなくなってしまいます。
このような不安の要素を取り払い、心理的安全性を確保することが生産性を高めるうえでは必要です。心理的安全性を初めて提唱したエイミー・C・エドモンドソン教授は、心理的安全を確保することによって、以下の7つの明確なメリットがもたらされると言っています。
- 率直に話すことが推奨される
- 考えが明晰になる
- 意義ある対立が後押しされる
- 失敗が緩和される
- イノベーションが促される
- 成功という目標を追求する上での障害が取り除かれる
- 責任が向上する
このようなメリットが、生産性を高める要素へ繋がります。
チームの心理的安全性を確認する方法
現在、チームの心理的安全性がどのような状態であるかは、以下の7つの質問で確認することができます。
- チーム内でミスを起こすと、よく批判をされる
- チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる
- チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある
- チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある
- チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい
- チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない
- 現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる
この7つの質問で、ポジティブな回答が多いチームは「心理的安全性」が高いといえます。一方、ネガティブな回答が多いチームは「心理的安全性」が低いと考えられます。このような質問から分析し、メンバー一人一人が自分の意見を恐れることなく言える環境かを確認していく必要があります。
心理的安全性を高める方法
心理的安全性を高めるには下記のようなアプローチが効果的です。
- 組織で意見を交換する機会を設ける
- メンバーにチームの貴重な一員であると認識してもらう
- 反対意見を歓迎する
- リーダーが自ら失敗談などを話し、他者が発言しやすい雰囲気を作る
- 悪い知らせの報告、率直な意見をした時には感謝を示す
心理的安全性は1日で高めることはできません。信頼関係から成り立つものであるため、上記にあげたような工夫を日常の業務で行い、信頼を積み上げていくことが必要です。
また、Googleでは1on1ミーティングにも、次のようなことに意識をおいています。
- マネジャーは、週に1回・1時間、すべてのメンバーと1on1を行う
- 1on1はマネジャーではなくメンバーの時間
- 基本的にはメンバーが話したいことを話してもらう
- タスク(作業)を管理するための打ち合わせではない
- 時にはプライベートな悩み相談の場となることもある
このような工夫や配慮により、チームメンバーとの信頼関係を厚いものにしています。
心理的安全性=馴れ合いではない
最後に心理的安全性を理解するうえで抑えていただきたいのが、心理的安全は決して馴れ合いのためではないということです。チームの信頼関係を築いたうえで自由な発想を意見し、時には反対意見を言うことも大事です。
多くのチームでは、本当はこう思うけど⚪︎⚪︎さんの気持ちを害してしまうので言えないといったような遠慮してしまう場面が見られます。しかし、それでは生産的な仕事をすることはできません。信頼関係のもと、思ったことを言える環境こそが良い環境です。
まとめ
「対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方」=「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だと信じられるかどうか」
◇4つの不安がもたらす影響
「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」
◇チームの心理的安全性を確認する7つの質問
1. チーム内でミスを起こすと、よく批判をされる
2. チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる
3. チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある
4. チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある
5. チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい
6. チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない
7.現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる
◇心理的安全性を高める方法
「組織で意見を交換する機会を設ける」「メンバーにチームの貴重な一員であると認識してもらう」「反対意見を歓迎する」「リーダーが自ら失敗談などを話し、他者が発言しやすい雰囲気を作る」「悪い知らせの報告、率直な意見をした時には感謝を示す」
◇心理的安全性=馴れ合いではない
今回は心理的安全性について解説いたしました。「⚪︎⚪︎と思われてしまう」というような不安は、どこの職場でも多くの人が抱える問題だと思います。だからこそ、リーダーはそのような不安をなくし、生産性の高いチームを作る努力が必要です。強制された環境では、自由闊達なアイデアは生まれません。心理的安全性が守られた、生産性の高い環境を作っていきましょう。