【採用担当者必見】採用要件の決め方5ステップ
企業が採用活動をする際、人材を獲得する判断の基準となるのが「採用要件」です。
自社が求める人材を獲得するためには、自社にあった採用要件を定義する必要があります。
採用要件が不明確な場合、採用にミスマッチが生じ、採用の目的を達成することはできません。
給与面、必要資格などはもちろん、行動特性についても多角的かつ明確に定義していく必要があります。
採用要件を決めるポイントがよく分からないまま、項目を大まかに決めてしまっている企業も少なくありません。
今回の記事では、採用要件の重要性や設定方法、決める際の注意点などについて解説していきます。
採用要件を新たに設定する際や、見直す際に参考にしていただければと思います。
採用要件とは
採用要件とは、採用活動の際に自社が求める人材の要素を定義したものです。
つまり、自社がどのような要素を持った人材が欲しいのかを言語化し、採用の判断基準にしたものです。
中途採用で言えば、関連業務の経験、資格の有無、行動特性などを採用要件に入れることが多くあります。
採用要件が不明確な場合、各採用担当者の価値観や所感により採用判断をしてしまいがちです。
各担当者で軸の違う採用判断をしていては、自社の採用目的を達成することはできません。
採用要件を明確に定義することで、採用活動の関係者間で共通の認識を持つことが可能となります。
そして、採用担当者の所感という曖昧なものから脱却し、企業としてブレのない一貫性のある採用活動を行うことにも繋がります。
採用要件が明確になればアプローチすべき人材も明確となり、採用活動のスピードが加速します。
採用面接においても、採用担当者が見るべきポイントが明確になるため、効率的な採用面接が可能となります。
このように採用要件を決めることで採用活動の方針が一本化され、スピード感のある採用活動ができるようになります。
採用要件を定義する3つの重要性
採用要件の重要性について、もう少し深堀りして解説していきます。
採用要件を定義する意味としては、下記のような理由があります。
1. 採用関係者間で共通認識を作れるため、軸を持った採用活動ができる
2. アプローチすべき指標が決まることで、効率的かつスピーディーな採用活動ができる
3. 採用時のミスマッチを減らすことで、早期退職のリスクも低減できる
1. 採用関係者間で共通認識を作れるため、軸を持った採用活動ができる
前述したように、採用要件を定義することで、採用関係者間で共通認識を作り、軸を持った採用活動ができるようになります。
採用可否を判断する明確な基準がなければ、採用担当の所感や好み、または価値観やその時の気分によって判断にブレが生じてしまいます。
それでは選考を公平にすることはできず、結果的に自社が欲しい人材かどうか正しく判断することもできないため、採用戦略を成功させることはできません。
採用関係者間で同じ方向を向くことで、個人の判断に依存することなく、組織として軸を持った採用活動ができるようになります。
このように組織として採用活動ができる仕組みを作っておけば、万が一、採用担当者が交代するような状況になった場合も、大きな修正なくスムーズに採用活動を続けることができます。
2.アプローチすべき指標が決まることで、効率的かつスピーディーな採用活動ができる
採用要件を定義することで採用活動の判断軸が明確になり、効率性も上がりスピーディーな採用活動ができるようになります。
何を基準に採用活動をするべきかが見えていなければ、進む方向を模索しながら活動していかなければなりませんので、ロスとなる動きが生じます。
採用要件が定義されていれば、採用関係者間で議論する際も、共通認識を前提において話すことができますので議論の効率性が上がります。
また、採用要件を定義することは、採用面接においても大きなメリットがあります。
採用要件の定義なく面接をした場合、本来必要な情報を聞けなかったり、不要な質問が増えるなど、採用活動の精度として不安定なものになります。
採用要件が定義されていれば、求職者に対して不要な質問が減り、一次面接、二次面接などそれぞれのフェーズで確認すべき質問事項をクリアに設定できるようになります。
また、削減できた時間において採用担当者が他の対応に集中することができたり、求職者側からみても面接の印象が良くなるというメリットも生まれます。
3.採用時のミスマッチを減らすことで、早期退職のリスクも低減できる
あらかじめ設定した採用軸に沿って採用活動を行うことで、採用活動の質を高めミスマッチを減らすことができるようになります。
本来、獲得したい人材を獲得できる可能性が増すため、ミスマッチを減らし、入社後の早期退職リスクを減らすことにも繋がります。
採用要件を設定することにより、関連業務の経験や必要資格、自社のビジョンとのマッチング、価値観など、あらかじめ定義した採用要件をもとに自社とのマッチングレベルを定量化することができます。
逆に必要要件を明確に定義していない場合、突出した学歴や、大手企業の経験など、インパクトを受けやすいものだけに目が向いてしまい、本来、重視すべき要件を見逃してしまうことにも繋がります。
早期退職は、求職者にとっても自社にとっても損失です。
採用要件の設定により、採用の質を高めてミスマッチを減らすことは、採用活動においてとても重要な意味を成します。
採用要件の決め方5ステップ
続いて実際の採用要件の決め方について解説します。
採用要件は、いくつかのステップを踏んで作っていきます。
どこかのステップが抜けていると、採用要件自体にも不足がでてきてしまいます。
すでに採用要件を設定している企業の採用担当者の方も、今一度、このステップを理解して、抜け漏れがないか確認していきましょう。
採用要件を決める際は、下記の5ステップで進めていきます。
1. 各部署へ現状の確認、要望のヒアリングを行う
2. 転職市場や景気の状況を把握する
3. コンピテンシーを設定する
4. 各項目の必要性を判断し、優先順位を決める
5. 具体的な人物像をイメージする
それでは順番に解説していきます。
1. 各部署へ現状の確認、要望のヒアリングを行う
採用要件を定義する際は、必ず現場からの意見を収集するようにしましょう。
採用活動は基本的に人事や経営層が中心になって行うことが多いですが、現場の考えるものと大きく乖離している場合もあります。
現場の意見を無視したまま採用要件を決めてしまうと、実務レイヤー(階層)に混乱をきたし、企業が理想とする目標を達成することはできなくなります。
現場では「どんな人材を必要としているのか」「どのような背景で人材を必要としているのか」などについてヒアリングをしていきましょう。
ヒアリングをする際は、下記のように具体的なヒアリングを行うのが良いでしょう。
・必要人数
・育成環境
・現場の状況
・業務に必要な経験
・業務に必要な資格
・人材を必要とする業務内容
・現場とマッチする価値観や性格
更に、必須条件と歓迎条件といった優先順位までヒアリングできれば、より効果的な要件定義が可能となります。
現場とは、採用要件を定義する時だけでなく、進捗状況の確認が必要な場合や、採用要件が決定した時点でも意見をすりあわせ共有していくようにしましょう。
密に現場と連携をとりながら、適宜修正していくようにしましょう。
また、ヒアリングする際は、現場責任者に聞くのはもちろんですが、可能であれば育成担当者や中間管理職の方にもヒアリングを行った方がいいでしょう。
実務に近い方のヒアリングを行うことで、より現場の状況を知ることができます。
経営層や人事が考える採用の必要性と、現場が考える必要性では、時間軸に差が生まれていることも多くあります。
経営層や人事は未来を意識した採用を考えているのに対し、現場は現状の改善を意識した採用を考える傾向にあります。
これは、どちらも必要な考えであるため、それぞれの意見を反映し、どちらか一方に偏りすぎない適切な採用活動を行っていきましょう。
2. 転職市場や景気の状況を把握する
採用要件を定義する際、転職市場や景気の状況を理解しておくことも必要です。
転職市場や景気を理解せず、自社内部だけで理想の採用要件を設定しても実現可能性の低いものになります。
転職市場のトレンドや状況は、日々変化しています。市場によって人材を獲得できるかどうかの難易度は大きく変わってきます。
現在は少子高齢化が進んでおり、これから求職者優位の売り手市場が加速すると予想されています。
そのため、企業としては優秀な人材を獲得するために、しっかりとした採用戦略をとっていかなければなりません。
求職者が企業に求める価値観も、年々変わっています。終身雇用が一般的であった時代が変わったことや、ワークライフバランスという価値観が浸透してきたこと、副業推奨といったようなものもトレンドの変化であると言えます。
このように市場トレンドを理解していないと、市場ニーズと相反した採用活動となってしまい、求める人物を獲得できないということに繋がります。
市場トレンドに敏感な企業は、求職者からの人気も高いです。市場トレンドの考え方を理解し、採用活動をする際に訴求していければ効果的です。
転職市場の状況は、業界や職種によっても様々であるため、自社の採用戦略にあわせて細かく分析する必要があります。
転職市場を知ることで、自社の採用要件が現実に沿ったものであるかどうかをチェックすることができます。
3. コンピテンシーを設定する
次に採用要件を定義する際に必要な、コンピテンシーの設定について解説していきます。
コンピテンシーとは、高いパフォーマンスをあげる人材に共通している行動特性のことを指します。
採用活動を行う際は、資格や業務経験ばかりに目が行きがちですが、実はそれ以上に大事なのは行動特性です。
パフォーマンスが高い人材には、結果を出すための行動の裏にある思考傾向や価値観に共通しているものがあります。
コンピテンシーの項目は企業によって異なりますので、自社にあったコンピテンシーの項目を設定する必要があります。
また、レイヤーや職種によって、コンピテンシー項目を細かく設定する必要があることも理解しておきましょう。
コンピテンシーを設定する際は、実際に自社で活躍している社員をピックアップし、共通する思考傾向や行動特性を分析しましょう。
その際、表面的な結果ではなく、行動の裏にある考え方や価値観を分析し、言語化していくことが重要です。
コンピテンシーを設定する際は、具体的な行動レベルまで落とし込みましょう。
コンピテンシーが詳細化されることで、自社の採用基準や評価に活用していくことができるようになります。
また、コンピテンシーを設定する際は、5段階や7段階などでレベル設定をしておくと、採用判断にも活用しやすくなります。
コンピテンシーモデルについては、下記のコンピテンシーディクショナリーや、中央大学のコンピテンシー定義一覧を参考にしてみるのも良いでしょう。
【引用元】
■コンピテンシーディクショナリー
http://www.nsweb.biz/coffee/0409compt_dic01.pdf
■中央大学 コンピテンシー定義一覧
https://www.chuo-u.ac.jp/uploads/2018/10/definition_01.pdf?1639985370131
4. 各項目の必要性を判断し、優先順位を決める
ここまでの流れで、どのような項目を要件定義していくかの大枠が見えてきたと思います。
しかし、全て理想を並べても実際に当てはまる人材を見つけるのは難しいことです。
「Must」とする項目、「Want」とする項目、そして自社には不要な項目を分けて考えていきましょう。
本当に必要な項目は何か、その中でも優先すべき事項は何かを決めていきます。
不要な項目を削ぎ落とすことで、本当に必要な項目に注力することができます。
この作業を行うことで採用活動の軸を太くすることにも繋がり、採用担当者が変わっても、採用活動の質を落とさずに継続することができるようになります。
5. 具体的な人物像をイメージする
採用要件とする項目、優先順位が見えてきたら、それをもとに具体的な人物像をイメージしてみましょう。
実際に採用要件を有する人物はどういった人物であるか具体的にイメージすることで、採用要件の現実性を判断することができます。
自社が求める人物像を詳細に具体化したものをペルソナと言います。
ペルソナのレベルまで人物像のイメージを深めることで、採用活動の質は高まります。
ここまで採用要件を定義できたら、選考フローに反映していきましょう。
採用要件が決まれば、求人原稿に掲載する内容、アプローチすべき人材、採用判断基準など多くのことも明確に決定できるようになります。
判断に迷った際は、採用要件に立ち返って考えるようにしましょう。
採用要件を作る際の3つの注意点
最後に採用要件を決める際の注意点について解説していきます。
注意点は下記3つです。
1. 採用要件に含んではいけない項目があることを知る
2. 書類選考通過者や応募数が少ない場合は採用要件を見直す
3. 労働条件も明確に要件定義しておく
それでは順番に解説していきます。
1. 採用要件に含んではいけない項目があることを知る
採用要件には、含んではいけない項目があります。
雇用について均等な機会を与えるため、以下のような内容は採用基準とすることが禁じられている項目です。
自社の採用要件に含んでいないか確認をしましょう。
・年齢
・性別
・身長
・体重
・障害の有無
・病気の有無
・本籍、出生地
・家族に関すること
・宗教に関すること
・政治に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合、学生運動などの社会運動に関すること
・購読新聞、雑誌、愛読書に関すること
このように本人に責任のない事項や、本人の自由であるべき事項については、採用基準とすることは禁じられています。
採用要件決定後は、必ず確認するようにしましょう。
2. 書類選考通過者、応募数が少ない場合は採用要件を見直す
書類選考通過者や応募者が少ない場合は、採用要件を見直す必要があります。
採用要件が厳しすぎると書類選考に通る人数が少数に制限されてしまいます。
また、そもそも市場のトレンドやニーズと合っていなければ求職者から応募がくることもありません。
このような場合、「Must」「Want」や不要な項目を再度整理する必要があります。
市場トレンドを理解し、客観的判断で再確認するようにしましょう。
3. 労働条件も明確に要件定義しておく
採用要件を定義する際、労働条件についても明確に定義しておくようにしましょう。
労働条件が不明確な場合、求職者が応募しづらくなります。
下記のような労働条件に関する項目も、明確に定義しておくようにしましょう。
・就業場所
・労働契約の期間
・従事すべき業務
・休憩時間や休日
・始業と終業の時刻
・給与について(計算方法、支払い日、賞与、昇給について)
まとめ
今回は、採用要件の重要性や設定方法、決める際の注意点について解説いたしました。
採用要件は採用活動をするうえで、重要な定義です。
採用要件が自社にマッチしていなければ、自社が求める人物の獲得はできません。
また、採用要件が曖昧だと採用関係者間で認識のズレが生じ、一つの方向に向かって採用活動を行うことはできません。
しっかりと採用要件を言語化し、軸に沿った効率的な採用活動を行っていきましょう。
◆採用要件とは、採用活動の際に自社が求める人材の要素を定義したもの
◆採用要件を定義する3つの重要性
1. 採用関係者間で共通認識を作れるため、軸を持った採用活動ができる
2. アプローチすべき指標が決まることで、効率的かつスピーディーな採用活動ができる
3. 採用時のミスマッチを減らすことで、早期退職のリスクがなくなる
◆採用要件の決め方5ステップ
1. 各部署へ現状の確認、要望のヒアリングを行う
2. 転職市場や景気の状況を把握する
3. コンピテンシーを設定する
4. 各項目の必要性を判断し、優先順位を決める
5. 具体的な人物像をイメージする
◆採用要件を作る際の3つの注意点
1. 採用要件に含んではいけない項目があることを知る
2. 書類選考通過者、応募数が少ない場合は採用要件を見直す
3. 労働条件も明確に要件定義しておく