【中途採用】カジュアル面談実践ガイド|流れ・質問例・志望度を高めるポイントを徹底解説
公開日: 2024年05月15日 | 最終更新日: 2025年11月11日
近年、さまざまな企業で導入が進む「カジュアル面談」。中途採用では、候補者の志望度を高め、本選考に進んでもらうための重要な入り口です。ところが実際には、
- 面談をしても応募や選考につながらない
- どう進めればよいか分からない
- 候補者に魅力をどう伝えればよいか分からない
といった課題を抱える人事担当者は少なくありません。
本記事では、中途採用におけるカジュアル面談の定義・流れ・質問例・失敗回避策を具体的に解説します。さらに、実務ですぐに使える進行台本・質問リスト・フォローメールテンプレも紹介し、候補者の意欲を高めるための仕組みをお伝えします。
中途採用における「カジュアル面談」とは?
カジュアル面談とは、選考前に企業と候補者が合否なしで対話し、相互理解を深める場です。
双方がマッチするかどうかを探る貴重な機会であり、候補者に自社への好感を持ってもらい、選考へ進んでもらうことも大切な目的となります。
面接が評価と合否を目的とするのに対し、カジュアル面談は親交を深めてお互いを知ることが中心です。そのため、通常の採用面接よりもリラックスした雰囲気で行われるのが特徴です。
中途採用におけるカジュアル面談の流れ
続いて、カジュアル面談の進め方を説明していきます。
「開始から終了まで、どんな順序で何を話せばよいかわからない」
「どのような流れで進めれば、効果的な面談となるのか知りたい」
と悩んでいる方は、これから説明する方法をぜひ試してみてください。
- ①アイスブレイク・自己紹介
- ②面談の目的の共有
- ③候補者の状態やニーズなど状況を確認
- ④ヒアリングした候補者のニーズに合わせた企業説明
- ⑤質疑応答
- ⑥選考意思の確認と今後の選考案内
①アイスブレイク・自己紹介
アイスブレイクの目的は、候補者の緊張を解き「安心して本音を話せる空気」をつくることです。そのためには、担当者自身が先に自己開示することが効果的です。部署や名前だけでなく「これまでのキャリア」「趣味」「入社の決め手」など、候補者が共感しやすい情報を交えて紹介しましょう。こうした一言があると候補者は「この人には自分の話もしていいんだ」と感じ、後のヒアリングで本音が引き出しやすくなります。
会話の例:
「前職では△△業界で営業をしていたのですが、結婚を機に、今後のライフイベントの変化に対応できない働き方だと感じてしまって…。ワークライフバランスを大事にしたいと思って転職活動をし、この会社に入りました。いまは人事として採用を担当しています。◯◯さんはどんな風に過ごされていますか?」
②面談の目的の共有
面談の冒頭で必ず伝えるべきなのが、「この場は合否を決める選考ではない」という点です。カジュアル面談と聞いていても、候補者の多くは「実際は選考なのでは?」と不安を抱えています。その不安を放置すると、本音を隠したまま表面的な会話に終始してしまい、面談の価値が薄れてしまいます。
候補者の心理的な負担を下げ、安心して会話に臨めるような場作りを行いましょう。
会話の例:
「今日は選考ではなく、弊社のことを知っていただくためのカジュアル面談です。合否とは一切関係ありませんので、気になることや率直なご質問をぜひ遠慮なくしていただければと思います。」
③候補者の状況を確認
このステップの目的は、候補者が転職に何を求めているのかを把握することです。面談の満足度が高ければ「選考に進んでみよう」と思ってもらえるため、そのための土台をつくる工程になります。
確認すべきは以下のようなポイントです。
- なぜ自社の面談に参加したのか
- 現時点でどんなイメージを持っているか
- 転職を考えた背景や重視している条件
- 他にどんな業界・企業を見ているか
候補者の答えをもとに、このあと伝えるべき情報や強調すべきポイントを整理しましょう。
会話の例:
「今回、弊社のカジュアル面談に参加してみようと思ったのは、どんな理由からですか?」
「転職先を選ぶ上で、特に大事にされているポイントはありますか?」
④ヒアリングした候補者のニーズに合わせた企業説明
ここでの目的は「候補者が求めていること」と「自社の魅力」をつなげることです。候補者は転職理由や価値観が一人ひとり異なります。そのため、一般的な会社説明ではなく、ヒアリングで得たニーズに合わせて強調ポイントを変えることが大切です。
たとえば「事業の内容」「働き方」「企業風土」「キャリアの伸びしろ」など、候補者が重視している要素を中心に話を展開しましょう。特に「なぜ転職しようと思ったのか」というきっかけは、最も効果的な訴求材料になります。
具体例(20代後半の女性候補者の場合)
- 転職理由:結婚・出産を見据え、フル出社+残業の多い職場では将来が不安
- 訴求ポイント①:働きやすさ → リモートワーク制度、フレックス、休暇の取りやすさなど
- 訴求ポイント②:キャリアの継続性 → 女性管理職の比率、産休後に復帰して活躍している社員の実例
こうした説明をすることで「自分が望む働き方がここで叶う」と感じてもらいやすくなります。さらに、他社では得られない具体的な強みを伝えると、候補者の心に強く残りやすく、選考意欲を高められます。
会話の例:
「先ほど“出産後もキャリアを続けたい”とおっしゃっていましたよね。当社では実際に産休・育休から復帰し、マネージャーとして活躍している社員も多いんです。当社への転職理由も、〇〇さんとほとんど同じでした。制度面ではリモートやフレックスも整えているので、お子さんに何かあったときにも対応しやすいです。」
⑤質疑応答
企業説明のあとは、候補者が気になっていることを解消する時間を設けましょう。最初に「合否には関係ないので、気になることは何でも聞いてください」と伝えると、候補者は安心して質問できます。
また、ここでの質問は単なる疑問ではなく、候補者が大事にしている価値観の表れです。だからこそ「答える」だけで終わらず、相手の価値観に合わせて魅力づけにつなげることが重要です。できる限り具体的に、例なども交えながら魅力づけをしていきましょう。
よくある質問と魅力づけの例:
このように「質問 → 候補者の思い → 魅力づけ」の流れを意識すると、質疑応答が単なるFAQではなく、魅力づけの時間に変わります。
⑥選考意思の確認と今後の選考案内
最後に、ネクストステップとなる選考の案内をしましょう。
ネクストステップは、後日メールなどで案内するのではなく、当日中に案内するのがポイントです。時間が経つにつれ自社への興味・関心は薄れてしまうため、もっとも意向が高まっている面談の最後に案内することで選考参加率を上げられます。
特に面談を通して「ぜひとも選考に参加してほしい」と感じた候補者に対しては、その場で特別な選考フローへ案内するのがオススメです。候補者の志望度をさらに高められるうえに、優秀な人材の早期獲得につながります。
カジュアル面談で志望度を高めるポイント6選
ここからは、カジュアル面談を成功させるために押さえておきたいポイント6選を紹介します。
①候補者に合わせて面談担当をアサインする
カジュアル面談は「この人が必ず担当しなければならない」というような決まりはありません。
そのため、採用担当者、マネージャー、事業部長、現場社員などの中から、候補者に適した人員をアサインすることが重要です。職歴や年齢が近い方だと、話も弾みやすいでしょう。
特にエンジニアなど専門性が高い職種については、具体的な仕事内容の説明や専門用語への対応ができる現場社員に同席してもらうなどすると効果的です。
②面談前に魅力訴求のポイントを言語化し、まとめておく
そもそも自社の魅力はどこなのか、正確に整理しましょう。
- 内容
- 風土
- 給与、福利厚生などの待遇面
- 業務内容
- 評価制度
- 働きやすさ
など、採用競合と比較してどこが強みなのかをあらかじめ明確にしておきましょう。
そうすることで、同じ業界や業種で企業を迷っている候補者に魅力づけを行いやすくなります。結果として、他社決定による辞退を防止することにも繋がるでしょう。
③話しやすい雰囲気づくり
面談中はアイスブレイクや自己開示などを通して、とにかく「話しやすい」と感じてもらえるように注力しましょう。
上記のように、自己紹介の際は部署名や名前だけでなく、出身地・趣味・経歴・入社のきっかけなど、候補者との会話を広げられそうな項目まで開示すると良いでしょう。
④双方向の対話を意識し、候補者のニーズや志向性を見極める
上記の「話しやすい雰囲気づくり」とも繋がりますが、本音で双方向の会話をすることが出来ると、満足度が高まるだけでなく、候補者のニーズや志向性についても分析しやすくなります。
前職における不満、転職先に期待していること、その方の価値観など、そこで得た情報は魅力づけのための大事な情報です。
選考中のフォローでも、候補者のニーズや志向性に合わせた個別対応を心がけましょう。
⑤転職潜在層に対しては、中長期の採用をイメージ
カジュアル面談参加者の中には、今すぐ転職を考えているわけではない層、いわゆる「転職潜在層」であることも多くあります。しかし、カジュアル面談に参加している時点で、自社への興味や転職の意志は備わっていると考えられます。
候補者の求める情報を提供したり、自社への魅力づけを行うことで、中長期的な母集団形成に繋がります。
本格的に転職活動を開始する際に、まず選択肢に自社を入れてくれるよう、定期的に連絡をとるようにしましょう。
⑥質疑応答は「魅力を伝える場」と強く意識
質疑応答でよくあるパターンとして、「ネガティブな情報をそのまま伝えてしまう」ということがあります。
確かに嘘をつくことは絶対にNGですが、直接伝えてしまうことで選考への意欲を下げてしまうことも避けなければなりません。
重要なのは伝え方です。
このように、ネガティブな情報を伝える際は
- フォローも併せて伝える
- 裏返してメリットにして伝える
などを意識するとよいでしょう。
カジュアル面談のよくある失敗例
ここからは、カジュアル面談のよくある失敗例を紹介します。
候補者を選考してしまう
先述したように、カジュアル面談は企業と参加者の相互理解を目的としています。そのため、自社に応募するか決まっていない参加者に対して、通常の面接のような質問をしてしまうと、悪い印象を与えてしまう可能性があります。
実際に「カジュアル面談と聞いていたのに合否を出された」「面接のように一方的に質問された」というような転職者の声は非常に多いです。
あくまで企業説明として、自社の参加メンバーにもカジュアル面談の目的を十分に共有しておきましょう。
自社のアピールばかりで一方通行になる
候補者に伝えたいことが多すぎて、企業説明だけで時間を使ってしまうケースもあります。候補者からすると「質問できなかった」「一方的に売り込まれた」と感じ、温度感が下がってしまいます。時間配分を意識し、必ず質疑応答や候補者ヒアリングに十分な時間を確保しましょう。
準備不足で答えられない
制度やキャリアパスについて曖昧な回答をしてしまうと、「この会社は中途半端だ」という印象を与えかねません。特に採用競争が激しい中途採用では致命的です。
よくある質問とその回答は事前に整理し、最新情報を把握しておきましょう。また、わからないことは持ち帰り、必ず後日メールなどで回答しましょう。
【人事→候補者】カジュアル面談で使える質問例20選
いざ面談の場になると「どんな質問をすればよいのか分からない」「つい面接のように聞いてしまう」と悩む担当者も少なくありません。そこでここでは、実際の現場で使いやすい20の質問を厳選しました。
①カジュアル面談に参加した理由は?
意図:応募前の温度感を把握
②現時点で弊社にどんなイメージを?
意図:先入観や情報源を知る
③今後のキャリア希望は?
意図:志向と自社環境を照らす
④現職の良い点と不満点は?
意図:転職理由や改善点を理解
⑤転職活動を始めたきっかけは?
意図:動機の本質を探る
⑥転職で重視している条件は?
意図:優先度(給与・働き方等)を確認
⑦理想の働き方は?
意図:柔軟性や制度へのニーズ把握
⑧やりがいを感じた仕事は?
意図:モチベーション源泉を知る
⑨大変だった経験と乗り越え方は?
意図:課題解決力や粘り強さを理解
⑩今後伸ばしたいスキルは?
意図:成長意欲や学習スタイルを把握
⑪入社後に担いたい役割は?
意図:リーダー志向か専門志向かを確認
⑫現職で不満な制度・仕組みは?
意図:重視する制度や環境を知る
⑬チームで大切にしていることは?
意図:協働スタイルや価値観を理解
⑭上司・同僚に求めるサポートは?
意図:人間関係の期待値を把握
⑮理想の職場環境は?
意図:職場選びの基準を探る
⑯マネジメントと専門職、どちら志向?
意図:長期的なキャリア像を確認
⑰仕事をしてよかった瞬間は?
意図:価値観ややりがいを引き出す
⑱弊社に関心を持った理由は?
意図:応募動機の初期段階を知る
⑲今後5年のキャリアプランは?
意図:長期的なビジョンを把握
⑳面談を通して知りたいことは?
意図:隠れた懸念や本音を引き出す
候補者から人事への質問20選
候補者から人事へのよくある質問を紹介していきます。スムーズに回答できるよう、事前に準備しておくことで、候補者へ安心感を感じさせられます。
まとめ
カジュアル面談の目的は、企業と候補者の相互理解を深めることであり、採用活動において、ミスマッチ防止や転職潜在層へのアピールにつながるメリットがあります。
カジュアル面談は採用面接と違い、選考の場ではないため、志望動機を聞いたり、合否を伝えたりしないように注意が必要です。
一方で、選考ではないからといって事前準備を怠ると、候補者に自社の魅力を伝えられなかったり、候補者の質問に上手く答えられなかったりして、せっかくのカジュアル面談の場を効果的に活かせない恐れがあります。
そのため、カジュアル面談も事前準備を十分に行い、候補者の応募意欲を湧かせるように努めましょう。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。



