中途採用の入社時対応での必要書類【入社手続きもこれで安心】


中途採用の入社時対応での必要書類【入社手続きもこれで安心】

人事として初めて入社手続きをすることになったが…
どのような書類が必要か整理できていない。
いつまでに何をすれば良いか分からない。

初めて入社手続きをする人事担当の方は、このような悩みに直面することもあるでしょう。

入社手続きは、獲得した人材が問題なく自社に入社できるよう、抜け漏れのない正確な対応が求められます。中途採用の場合は特に、前職就業中に必要書類を準備してもらう場合があり、内定者に負担がかからないよう、スムーズな対応を心がける必要があります。

今回の記事では、一般的な中途採用の入社手続きについて解説いたします。

初めて入社手続きを任された人事担当の方でも、この記事を参考に着手できる内容となっております。

中途採用の入社手続きで人事担当者がすること

内定者から内定受諾の返答をもらった後、人事担当者はすぐに入社手続きに着手する必要があります。

  1. 入社日までに内定者へ準備・確認を依頼すること
  2. 入社日までに社内で準備・確認を依頼すること
  3. 入社当日にすべきこと
  4. 入社後速やかにすべきこと

上記1~4の手順にわけて理解していきましょう。

入社日までに内定者へ準備・確認を依頼すること

内定承諾の返答をもらったあと、人事担当者は入社日までに「内定者」と「社内」に向けて対応が必要となります。

まずは内定者について見ていきましょう。入社日までに必要書類の依頼や対応の有無の確認を行います。

<入社日までに内定者へ準備・確認を依頼する事項>
(1)マイナンバー(マイナンバーカード、通知書等)と本人確認
(2)扶養親族(健康保険証を発行する必要がある親族)がいるかの確認と必要書類の取得
(3)前職の源泉徴収票の取得
(4)住民税の「特別徴収」の継続があるかどうかの確認(給与所得者異動届出書)
(5)給与所得扶養控除等申告書の記載依頼
(6)給与振込先口座情報(給与振込同意書)
(7)雇用保険被保険者証

(1)マイナンバー(マイナンバーカード、通知書等)と本人確認

マイナンバー制度施行により、社会保険や税務の手続きにマイナンバーが必要となりました。利用目的(社会保険・税務手続き)を告げ、準備してもらいましょう。

マイナンバーは本人確認が必要となります。写真入りのマイナンバーカードであれば、ナンバーの確認と本人確認が同時に行えますが、通知書やマイナンバーが記載された住民票では、本人確認ができないため、別途パスポートや運転免許証の提示を依頼しましょう。

【参照】日本年金機構:マイナンバーの届出について

(2)扶養親族(健康保険証を発行する必要がある親族)がいるかの確認と必要書類の取得

中途採用では、扶養親族がいる場合が多くあります。扶養者の健康保険証を発行するためには、戸籍謄本などを添付する必要があるため、内定者に扶養親族がいるかどうかを確認し、事前に書類を取得してもらうようにしましょう。

必要書類は、扶養親族の年齢や収入、別居の有無などの条件によって異なりますので、しっかりと確認しながら進めましょう。

【参照】日本年金機構:【事業主の皆様へ 必ずご確認ください】健康保険被扶養者の手続きについて

(3)前職の源泉徴収票の取得

入社年と同年に給与収入がある場合は、前職から源泉徴収票を取得してもらうよう内定者に依頼します。前職の企業が発行した「原本」が年末調整に必要となります。

内定者が年末(11~12月)に入社する場合は、年末調整に間に合うよう準備してもらう必要があります。年末調整の担当者へ提出期日を確認し、連携を取りながら進めましょう。

年末調整に間に合わない場合は、内定者個人で確定申告する必要がある旨を伝えましょう。

(4)住民税の「特別徴収」の継続があるかどうかの確認(給与所得者異動届出書)

給与から住民税を控除(給与天引き)することを「特別徴収」と言います。

前職から間をあけずに転職する時は、転職先でも引き続き特別徴収とすることができます。これを「特別徴収の継続」と言います。継続するためには前職に継続の意向を伝え“給与支払報告に係る給与所得者異動届出書”を発行してもらう必要があります。ただ、企業によっては、退職時は「普通徴収」へ変更することを標準としている場合がありますので前職へ確認しましょう。

特に希望しない場合は「普通徴収」となりますので手続きは不要です。「普通徴収」とは、自宅に住民税の納付書が送付され「個人で納付する方法」のことを指します。

住民税の継続手続きは必須ではなく、あくまで希望となります。前職で継続手続きをせず転職初年度は普通徴収になったとしても、次年度からは自動的に特別徴収となります。

また、普通徴収から特別徴収への変更も可能です。(時期によっては不可の場合もあり)

内定者が今回初めて特別徴収の継続について知った場合、少々複雑に感じるかもしれません。もし、住民税について内定者が不安に感じているようなら、特別徴収の継続はあくまで任意であり、普通徴収になってもそれは転職初年度のみで、次年度には自動的に特別徴収へ変更になる点を説明してあげると良いでしょう。

(5)給与所得扶養控除等申告書の記載依頼

給与所得扶養控除等(異動)申告書は、給与から控除する源泉所得税の額を決定する際に必要な書類です。扶養する家族がいない場合も提出が必要となります。

押印が省略できますので、PDFへ直接入力しデータで提出してもらうことも可能です。

【参照】国税庁:[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

(6)給与振込先口座情報(給与振込同意書)

毎月の給与を振り込むために、給与振込届出書の提出を依頼しましょう。銀行名、口座番号、口座名義などの振込先情報を記載するフォーマットを自社で用意し、内定者に必要事項の記入と提出を依頼します。企業によっては、万全をとって通帳のコピーの提出を求める場合もあります。

給与を銀行口座振込とするためには、本人の同意が必要となっています。口頭での確認でも問題ありませんが、念のため給与振込届出書へ「賃金の口座払を行うことに同意する」等の一文を追加しておくことをおすすめします。

【参照】東京労働局:給与口座振込同意書フォーマット

(7)雇用保険被保険者証

雇用保険の手続きの際に雇用保険被保険者番号が必要となります。番号を把握するために、雇用保険被保険者証を準備してもらいましょう。

前職を退職した後に資格喪失確認通知書や離職票と一緒に郵送される場合があります。その時は届き次第、提出してもらうように依頼しましょう。

前職の雇用保険被保険者証は原本である必要なく、コピー等でも問題ありません。また、雇用保険被保険者番号が不明な場合でも提出することが可能です。

上記の(5)(6)(7)については、入社日以降の記入・提出でも間に合いますが、抜け漏れを防ぐためにも事前にご案内をしておくと良いでしょう。必要書類は企業ごとに内容も変わるため、法令上必要な書類と、自社のポリシーとして依頼する書類で分けて覚えるようにしましょう。

【法令上必要な書類】
・マイナンバー(本人確認とセットで)
・給与所得扶養控除等申告書
・雇用保険被保険者証
・給与振込先口座情報(給与振込同意書)

【以下は該当する場合のみ】
※前職の源泉徴収票
※住民税 給与所得者異動届出書
※健康保険被扶養者の届出に必要な書類

【その他、企業によっては必要と定めている書類】
・健康診断書
・住民票記載事項証明書
・入社誓約書・入社承諾書
・身元保証書
・免許・資格証明書  …等

必要と定めている書類は企業によって異なります。前任者からの引継ぎ資料などを確認し、内定者に依頼しましょう。内定者に書類を依頼する際は、利用目的を明確にし丁寧に且つ端的に行いましょう。

伝えたい内容が分かり辛く不明点が多い場合、入社前からとても不安になってしまいます。内定者から質問があった場合は、できるだけ早くお返事をするようにしましょう。

その場合でも内定者には丁寧に伝えることが重要です。不安な点を解消し、気持ちよく入社日を迎えられるようにフォローしていきましょう。

入社日までに社内で準備・確認を依頼すること

続いて、内定者を受けいれるために社内で準備や環境を整える事項についてみていきます。

(1)雇用契約書
(2)法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)
(3)アドレスの発行やアカウントの登録等
(4)備品の準備
(5)入社当日の打合せ・内定者への案内

(1)雇用契約書

雇用契約書の作成は義務ではありませんが、通例的に作成している企業も少なくありません。作成する際は、労働条件通知書に沿って細心の注意を払い作成にあたりましょう。

◇雇用契約書と労働条件通知書を一体化しているケースがよくあります。雇用契約書が労働条件通知書と一体化している場合は、内定通知の際に明示する必要がありますので、作成や明示の時期には十分注意しましょう。労働条件通知書は義務であり、書面(※注)で明示する必要があります。

(※注)FAXや電子メール、SNS等でも明示可能

【参照】厚生労働省:採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について

雇用契約書は電子契約が可能です。これまでは2部作成の後、雇用主、労働者それぞれが署名捺印し1部ずつ保管していましたが、電子契約であればそれらの事務処理の手間を省くことができます。

昨今、電子契約は様々な契約書に利用されています。採用人数の多い企業や日々多くの契約書を作成している企業は、事務負担を軽減するためにも、電子契約サービスの導入を検討してみるのも良いでしょう。

内定通知書テンプレートはこちら

(2)法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)

内定者の労働者名簿、賃金台帳、出勤簿を事前に準備しておきましょう。労働者名簿は内定者から必要な情報を回収した際にすぐに記載できるように整備しておくと良いでしょう。

賃金台帳や出勤簿は、システムを利用して管理する企業が増えています。システムを利用することで人事担当者、内定者双方の負担軽減につながる可能性があります。様々なツールの活用も視野に入れてみましょう。

(3)アドレスの発行やアカウントの登録等

企業アドレスの発行や、社内システムのアカウント登録など、入社日までにしっかりと準備する必要があります。

対応漏れがないよう、事前に対応リストを作成し発行や登録を管理すると良いでしょう。

(4)備品の準備

入社後すぐに問題なく働けるよう、座席(デスク・チェア)の確保や備品の準備をしておくことも大切です。入館証やパソコン、マウス、社用携帯、名刺、ロッカー、名札、制服…等といった備品のリストを作成し、貸与物を管理すると良いでしょう。

新たに購入が必要なものと、在庫があるものをチェックし、作動確認を行い、入社当日には全て揃うよう手配しましょう。

備品の準備が不足していると、入社後、内定者は自分が期待されていないと感じ、モチベーションの低下につながる恐れがあります。余裕をもって準備に取り掛かりましょう。

(5)入社当日の打合せ・内定者への案内

入社当日の動きを事前に社内ですり合わせしておきましょう。

コロナウイルスの蔓延により、在宅ワークや出社時間をずらすといった対応をしている企業も増えています。

内定者が出社しても、応対者が在宅勤務で居なかった…とならないように、担当者には入社当日のスケジュールをしっかりと把握してもらう必要があります。関係部署にスケジュールを共有し、当日の動きを確認してもらいましょう。

内定者へは、入社当日の集合時間や場所、持ち物(筆記用具、印鑑等)、全体の流れ(タイムスケジュール)を記した簡易表を作成し、事前にお渡ししておきましょう。入社前から丁寧なコミュニケーションをとる事で、内定者の安心感につながります。

入社当日にすべきこと

次に「入社当日にすべきこと」を見ていきましょう。入社日当日は、慌ただしいスケジュールの中で対応する必要があるため、抜け漏れが無いよう注意して対応しましょう。

(1)依頼した書類の回収
(2)就業規則
(3)経費交通費申請・通勤交通ルート登録
(4)社内ルール
(5)従業員情報
(6)雇用契約締結

(1)依頼した書類の回収

入社前に依頼した書類を回収しましょう。回収リストを作成しておくと便利です。回収の際は、内容に不備や不足が無いかをその場で確認し、問題があれば修正してもらいましょう。

(2)就業規則

内定者へ就業規則の掲示場所(データであれば保存先)を伝え、確認するように促しましょう。

(3)経費交通費申請・通勤交通ルート登録

経費や交通費の申請方法や通勤ルートの登録方法を説明しましょう。入社当日から交通費は発生します。申請漏れがないよう、早めに手順を伝えましょう。

(4)社内ルール

就業規則とは異なる会社独自のルールがある場合は、入社当日に伝えるようにしましょう。ルールを一覧表にして提示してあげるとより親切です。

また社員紹介や、同じ部署となる社員の座席表などを作成しお渡しすることをおすすめします。そうすることで内定者がより早く会社や部署に馴染むことが期待できます。

(5)従業員情報

労働者名簿作成に必要な情報の提出を依頼します。履歴書の内容が変更となっている可能性もありますので、改めて提出してもらいましょう。

個人情報保護の観点から、取得する情報は選定し必要な情報のみを取得するようにしましょう。

【参照】厚生労働省:労働者名簿様式

(6)雇用契約締結

雇用契約書を締結します。前述したとおり労働条件通知と一体化している場合は、内定通知の時点で送付が必要ですので注意しましょう。

入社後速やかにすべきこと

最後に「入社後速やかにすべきこと」を確認していきましょう。

(1)社会保険
(2)雇用保険
(3)住民税

(1)社会保険

■雇用開始から5日以内に届出

健康保険・厚生年金保険の手続きを行います。提出期限は雇用開始から5日以内となっています。被保険者資格取得届を作成し日本年金機構 事務センターへ電子申請又は郵送します。

【参照】日本年金機構:被保険者資格取得届

※「報酬月額」には給与の他に、通勤交通費や家族手当等も含まれますので、注意が必要です。

【参照】日本年金機構:標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

※例:賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、管理職手当、勤務地手当、休職手当、休業手当、待命手当

扶養親族の届出を同時に行う場合は、健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届も作成しましょう。扶養親族については前述したように、添付書類が必要な場合があります。忘れずに対応しましょう。

【参照】日本年金機構:健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届

提出期限は雇用開始から5日以内となっています。

試用期間中であっても、社会保険の加入手続きは必要ですので忘れずに申請しましょう。

健康保険証の発行にはかなり時間がかかります。届出が遅れるとその分、発行が遅くなってしまいます。入社日すぐに届出ができるように事前に準備しておきましょう。

そのためには、給与額だけでなく報酬月額に含まれる額(通勤交通費や家族手当等)を把握しなくてはなりません。内定者からできるだけ早く交通ルートの情報を提出してもらうようにしましょう。

(2)雇用保険

■被保険者となった日の属する月の翌月 10 日までに届出

雇用保険の手続きは、雇用保険被保険者資格取得届をハローワークへ提出します。添付書類は基本的に不要ですが、一部、添付が必要になる場合があります。

【参照】日本年金機構:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 厚生年金保険 70 歳以上被用者該当届

提出期限は被保険者となった日の属する月の翌月10日までとなっています。

前職から間をあけず転職した場合で、前職の資格喪失届の処理が終わっておらず、自社の取得届がすぐに受理されないことがあります。その場合でもハローワークで処理を待機してくれますので、入社から15日程経った時点で提出してもよいでしょう。

(3)住民税

■速やかに届出

入社者が特別徴収の継続を希望した場合、または、普通徴収から特別徴収に変更してほしいと申し出があった場合に手続きを行います。

  • 特別徴収の継続を希望した場合

入社者から回収した住民税の資料「給与所得者異動届出書」に必要事項(自社の情報等)を追記し、各市町村へ提出します。

  • 普通徴収から特別徴収へ変更を希望した場合

入社者から普通徴収の納付書を提出してもらい、該当の市町村のHPから“特別徴収切替届出(依頼)書”をダウンロードし、必要事項を記載の上、提出先へ郵送します。

普通徴収の納付期日が過ぎている場合は切り替えができませんので、各市町村に問い合わせの上、対応しましょう。

まとめ

今回は、中途採用の入社手続きですべきことや必要書類について解説いたしました。

中途採用の場合、内定者は現職で働きながら必要書類を準備しなければいけないため、多かれ少なかれ負担が生じます。必要書類の取得方法や記載方法などを丁寧にアドバイスし、配慮ある対応が必要です。

また、取得まで時間がかかる書類もあるため、余裕を持った期限を設定しましょう。今回の記事を参考に、自社に内定者がスムーズに入社できるよう、入社手続きを進めていきましょう。

◆中途採用の入社手続きで人事担当者がすべきこと
➊入社日までに内定者へ準備・確認を依頼すること
(1)マイナンバー(マイナンバーカード、通知書等)と本人確認
(2)扶養親族(健康保険証を発行する必要がある親族)がいるかの確認と必要書類の取得
(3)前職の源泉徴収票の取得
(4)住民税の「特別徴収」の継続があるかどうかの確認(給与所得者異動届出書)
(5)給与所得扶養控除等申告書の記載依頼
(6)給与振込先口座情報(給与振込同意書)
(7)雇用保険被保険者証
➋入社日までに社内で準備・確認を依頼するべきこと
(1)雇用契約書
(2)法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)
(3)アドレスの発行やアカウントの登録等
(4)備品の準備
(5)入社当日の打合せ・内定者への案内
➌入社当日にすべきこと
(1)依頼した書類の回収
(2)就業規則
(3)経費交通費申請・通勤交通ルート登録
(4)社内ルール
(5)従業員情報
(6)雇用契約締結
➍入社後速やかにすべきこと
(1)社会保険
(2)雇用保険
(3)住民税