【テンプレート付】採用ターゲットの具体的な決め方3STEP
公開日: 2025年04月02日 | 最終更新日: 2025年05月20日

採用活動を成功させるためには、企業にとって最適な人材を見つけ出すことが重要です。そのためには、最初に「採用ターゲット」を明確に決定する必要があります。
採用ターゲットとは、企業が必要としている人材像を具体的に描くことです。これを決めることによって、採用活動の方向性が定まり、効率的な採用が可能になります。
この記事では、「採用ターゲットの決め方」に焦点を当て、ターゲットを決めるメリットや、実際に決めるための具体的な手順、注意点などを詳しく解説します。
採用ターゲットとは
採用ターゲットとは、自社が採用したい人材の“人物像”を明文化したものです。年齢や経験だけでなく、スキル・志向・価値観まで含めた「この人に来てほしい」というイメージを、言語で共有できるレベルまで落とし込むことを指します。
採用活動において、「どの媒体を使うか」「どんな求人票を書くか」「誰が面接するか」といった施策の多くは、すべてこの“誰を採るか”が前提にあるべきです。逆に言えば、ターゲットがあいまいなままでは、どれだけ施策を積み重ねても的外れになるリスクが高くなります。
ターゲットを明確にしないと、何が起きるのか

「とりあえず良さそうな人」では、採用は成功しません。
ターゲットを設定しないまま採用を進めると、以下のような問題が起こりやすくなります。
◆面接官ごとに基準がブレる
ターゲットが曖昧なまま採用を進めると、面接官ごとに「良い人材」の基準がズレていきます。
評価に一貫性がなくなり、ある面接では高評価、別の面接では不合格。そんな状態が続けば、本来採るべき人を落とし、採ってはいけない人を通すという事態に陥ります。
特に多いのが、役職の高い人が感覚的に「良さそう」と判断して採用し、現場に配属された後に力を発揮できなかったり、早期離職につながってしまうケースです。
◆有効応募の割合が減り、無駄が増える
ターゲットが定まっていないと、求人票に書くべき条件や訴求ポイントも曖昧になります。
たとえば、本当は「自走力があり、未整備な環境でも動ける人」が欲しいのに、「チームで協力できる人」など当たり障りのない文言だけが並ぶ。このようなズレは、決して珍しくありません。
こうしたズレがあると、応募は来るのに書類で落とす・面接でミスマッチに気づいて落とす、の繰り返しになります。
結果として、採用担当は「応募があっても誰も通らない」と悩み、現場面接官は「またこのレベル?面接の時間がもったいない」と不満を抱えてしまいます。
求人内容とターゲットがズレていれば、時間もお金も使いながら「最初から違う人」にアプローチしてしまうリスクがあります。
◆「誰でもいい」は、誰からも選ばれない
ターゲットを広げすぎると、「これは自分に向けた求人じゃないな」と候補者が感じてしまい、そもそも応募してきません。
特に中途採用では、「自分に合う会社かどうか」を重視する傾向が強く、誰に向けて書かれたのか分からない求人は、読み飛ばされて終わります。
実際によくあるのが、こんな求人です。
- 「20代〜40代活躍中!若手のフレッシュさも、ベテランの経験も歓迎」
- 「スピード感のある環境で、安定して働ける職場です」
- 「裁量大きく動ける方、チームワークを大切にできる方」
幅広く惹きつけようとした結果、結局誰の心にも刺さらないメッセージになってしまっています。
採用ターゲットの設定3STEP
では、ここからは実際に「採用ターゲットをどう定めていくか」について、具体的な進め方を見ていきましょう。
理想論で終わらせず、現場で活かせるよう、3つのステップに分けて整理します。

①「どんな人が活躍しているか」を把握する
ターゲット設計は、理想の人物像をゼロから作るものではありません。まずやるべきは、すでに自社で成果を出している人材の共通点を、具体的に洗い出すことです。
STEP1|ハイパフォーマーを3〜5名選出する
「誰を分析するか」が曖昧なままでは、ターゲット像も曖昧になります。まずは、現場マネージャーやリーダーにヒアリングを行い、以下のような観点をもとに「活躍している人」「定着している人」を3〜5名ピックアップしましょう。
- 入社後1〜2年で成果を出している
- 周囲からの信頼が厚く、チームに貢献している
- 異動や役職変更にも柔軟に対応できている
- 採用時点で期待値を上回る活躍をしている
この段階では、評価制度のスコアや上司の感覚を組み合わせて構いません。大切なのは「事実として活躍しているかどうか」を起点にすることです。
STEP2|複数の視点から具体情報を集める
選出した社員については、次のような視点で情報を整理していきます。
◆経歴・経験値
中途採用の場合:
・業界経験:例)人材/広告/メーカー/金融など
→ 自社のビジネスモデルに近い業界出身かどうか
・職種経験:例)法人営業/CS(カスタマーサクセス)/経理/製造現場など
→ どんな実務を経験してきたか、何に強みがあるか
・業務内容の深さ・幅:例)「営業経験5年」だけでなく、「新規開拓率80%」「チームリーダー経験あり」など
→ 単なる年数ではなく、中身の濃さ・再現性を判断
・企業の規模・文化:例)100人未満のベンチャー/日系大手/外資系など
→ 社風の違いで適応力・自走力・柔軟性などが変わる
新卒採用の場合:
・学部・学科:例)経済学部・理工学部・教育学部など
→ 論理的思考・課題解決力・コミュニケーション力などのベース
・学生時代に力を入れたこと:例)ゼミでの研究発表、地域活性のプロジェクトなど
→ 自ら動いた経験・成果までのプロセス・役割意識
・バイト・インターン経験:例)飲食の接客でリーダー任された/不動産の長期インターンで新規営業を経験
→ ビジネスマナー・継続力・実務との親和性
・部活・サークル活動:例)体育会で副キャプテン/イベント運営サークルで渉外担当
→ 責任感・組織での立ち回り・対外折衝の適性など
◆志向性・転職理由(または就職観)
「なぜ当社を選んだのか?」「どんな働き方に価値を感じたのか?」という観点から、活躍人材の“志向”と実際の業務環境との相性を見ていきます。
中途採用であれば転職理由、新卒であれば就活の軸をもとに、「何を重視して意思決定したか」を整理しましょう。
特に、「入社後の仕事内容・組織文化と、本人の志向性が噛み合っていたかどうか」がポイントです。
例(噛み合っていたパターン):
- 「安定した環境で長く働きたい」→ 落ち着いた業務と明確な評価制度があり、定着率も高い
- 「困っている人の役に立ちたい」→ 顧客対応が多く、感謝を直接受け取れる職種で高パフォーマンス
- 「専門性を磨いてキャリアアップしたい」→ 資格取得支援や業務の深掘りができる環境でスキルを伸ばしている
- 「裁量を持って働きたい」→ 少数精鋭チームの中で自由度の高い業務を担当し、成果を上げている
逆に、「じっくり教わりたい」人がOJT中心の現場に配属されたなど、志向と環境のズレが早期離職につながったケースも見逃せません。こうした“合わなかった人材”も、ターゲットを見極めるうえで有益な材料になります。
◆性格・行動傾向
成果の出方は、スキルや経験だけでなく「働き方のスタイル」にも大きく影響されます。
現場マネージャーや周囲の同僚に、「どう動いていたか」「どんな場面で頼りになったか」「どこに苦戦していたか」などを具体的にヒアリングすると、定性的な傾向が明らかになります。
例:
【自走タイプ】
未経験業務でも自ら調べて行動し、マネージャーに相談する前に2〜3案を用意していた
【周囲巻き込みタイプ】
プロジェクトの初期段階から他部署を巻き込み、調整や根回しを先回りして進めていた。
【ソルジャータイプ】
依頼されたタスクを即座に処理し、毎日ToDoを前倒しで完了。残業せずに成果を出し続けていた。
【仕組み化タイプ】
属人的だった業務フローを見直し、手順書やチェックリストを自ら整備してチームに共有していた。
【突破タイプ】
既存の提案スクリプトに課題を感じ、独自で改善案をまとめて上長に提案し、実際に成果が向上した。
このように活躍人材に共通する「働き方のクセ」を見つけることで、ターゲット像をより具体的にできるます。同時に、面接時のチェックポイントや質問設計にもつなげられます。
◆適性検査の数値傾向
適性検査を導入している場合は、活躍人材とそうでない人材のスコアを比較することで、成功パターンを定量的に把握できます。特に中途では職務経験の比較がしやすく、新卒では“ポテンシャル”の見極めに役立ちます。
たとえば、
- ストレス耐性が高い人材が、変化の多いプロジェクトやクレーム対応でも安定して成果を出している
- 慎重性が中程度の人材のほうが、スピードと正確性のバランスを取りやすく、定着率も高い傾向にある
- 外向性が高すぎる人よりも、ミドルレベルの人のほうがチーム内での協調性が高く、早期離職が少ない
こうした“傾向値”が見えてくると、新たな採用でも同じスコア帯の人を意識的にターゲティングできるようになります。
あくまでも補助的な指標ではありますが、「感覚では見抜けない特性を可視化できる」という意味で、活用する価値は大いにあります。
STEP3|共通点を抽出し、ターゲット像として整理する
STEP2で収集した情報をもとに、“活躍している人に共通する要素”を明確にしていきます。ここでは、感覚ではなく 「定性的な特徴」と「定量的な特徴」 の両方を具体的に言語化することが重要です。
たとえば:
- 定性的な特徴:前向きで打たれ強い/初対面でも物怖じせず話せる/ルールが曖昧でも自走できる
- 定量的な特徴:営業経験3年以上/個人営業出身/従業員100名以下の企業での勤務経験あり/年齢は28〜35歳が定着・活躍傾向
こうした共通項の見える化こそが、採用ターゲット像を形づくる軸になります。
この軸が明確になっていると、求人票の訴求ポイントやスカウト文面、エージェントへの説明、面接での評価軸まで一貫性が生まれ、採用活動全体のブレを防ぐことができます。
② 経営・現場・人事で目線を合わせる
ターゲット像がある程度クリアになったら、次に取り組むべきは社内の目線合わせです。
よく発生するのが、以下のようなズレです。
- 経営層は、「将来の幹部候補」「中長期で伸びる人材」など未来志向
- 現場マネージャーは、「すぐに任せられる人」「現場での即戦力」など即戦力志向
- 人事は、「採用市場に存在するか」「母集団は確保できそうか」など現実志向
このように、立場ごとに求める視点が異なるのは当然です。大切なのは、それぞれの視点を整理したうえで、「三者のバランスが取れたターゲット像」を合意形成することです。
ここで人事に求められるのは、「調整役」ではなく「翻訳者」としての視点です。
「経営が言う“幹部候補”とは、どういう業務を任せたいからか?」
「現場が求める“即戦力”とは、具体的にどんなスキルや経験が必要か?」
このように、言葉の裏側にある“意図”を引き出しながら、共通言語に変換していくプロセスが、人事の腕の見せどころです。
③ ターゲットは「広げる」でも「狭める」でもない
採用現場でよくあるのが、「応募数を増やすために条件を広げる」、「優秀な方しか取りたくないから、条件を厳しくする」というやり方です。
しかし、大切なのは、「どこまでを採用ターゲットとして許容するか」というレンジ(幅)を正しく設計することです。
そのためには、以下の4軸で要件の整理を行うのが効果的です。
・MUST(必須条件):
この条件を満たしていなければ、採用してもうまくいかないと判断できる基準
例:営業経験3年以上、自走力がある、〇〇資格の保有
・WANT(歓迎条件):
あると理想的だが、なくても育成やフォローでカバー可能な項目
例:SaaS業界経験、マネジメント経験、英語でのコミュニケーション力
・NEGATIVE(懸念要素):
過去に早期離職やパフォーマンス不全につながった傾向
例:変化の激しい環境にストレスを感じやすい、チーム連携が苦手、手順のない業務に不安を抱く
こうした要件をあらかじめ整理・共有しておくことで、採用基準にブレがなくなり、求人票や面接でも一貫性のある対応が可能になります。
また、ターゲット像が明確になったあとは、採用市場にその人材がどれだけ存在するかも必ず確認しましょう。
求人倍率が高い、希望年収が市場水準と乖離している、競合が多いといった状況であれば、どれだけ理想的でも採れないターゲット=「ユニコーン人材」になります。
MUST/WANT/NEGATIVEを軸に「狙うべきレンジ」を定めることで、採れるターゲットを精度高く定義できるようになります。
採用ターゲットの完成形(例)
ここまでのステップを経て整理された採用ターゲットは、以下のような形でまとめられます。
【職種】法人営業職(中途)
MUST(必須条件)
・大卒以上
・年齢は20代
・正社員経験が2社以内
・顧客折衝経験が3年以上
・指示がなくても、自ら課題を発見し行動できる
・周囲を巻き込み、主体的に社内外との連携を進められる
・変化の多いベンチャー環境に対して、前向きに楽しめるマインドを持っている
WANT(歓迎条件)
・人材業界または無形商材の営業経験がある
・従業員数300名以下の中小企業での就業経験がある
・大手企業に対する営業経験がある
・マネジメント経験がある
・採用・広報・カスタマーサクセスなど、営業以外の部門との協働経験がある
・業務の属人化を改善し、仕組み化・ドキュメント化した経験がある
NEGATIVE(避けたい条件)
・指示待ち傾向が強く、自走できない(受け身でしか動けない)
・業務量や変化に対するストレス耐性が極端に低い。WLB志向が強すぎる
・短期離職経験あり
・チームより個人の成果を重視し、競争志向が強い
・過去の成功体験や「自分流」に強くこだわり、変化への適応に消極的
まとめ
ターゲットが曖昧なままでは、求人票もメッセージも選考基準も、すべてがブレてしまいます。
だからこそ、まずやるべきは、現場・経営・人事それぞれの視点をすり合わせ、ターゲット像を言語化することです。
一度ここを丁寧に設計すれば、以降の施策にブレがなくなり、採用の精度も大きく変わってきます。「なんとなくの採用」を脱却し、再現性のある採用を行っていきましょう。
アールナインでは、15年770社以上の採用支援実績をもとに、採用戦略の立案から、媒体運用・スカウト・面接調整までを一気通貫で支援する採用代行サービス「人事ライト」を提供しています。
採用ターゲットの設計にお悩みの方や、「何から始めればいいかわからない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。