求人票の必須項目一覧!記載してはいけないNG例も解説

公開日: 2025年11月13日


求人票の必須項目一覧!記載してはいけないNG例も解説

求人票を作成する際、「必要な項目って何?」「反対に、書いたらダメな項目は?」と迷う人事担当者は多いものです。

求人票の記載内容は、労働基準法や職業安定法などで明確に義務づけられており、抜け漏れや曖昧な表現はトラブルの原因にもなります。

本記事では、厚生労働省の最新基準(2025年対応)に基づき、求人票に必ず記載すべき項目一覧と、記載してはいけないNG例をわかりやすく整理しました。

チェックリスト形式で確認できるので、法令遵守+応募者に信頼される求人票づくりの参考にしてください。

求人票の必須項目一覧【最新版2025年対応】

求人票の「必須項目」とは、職業安定法や労働基準法で明示が義務づけられている内容のことです。


企業は求人を出す段階から、労働条件を正確に伝える責任があります。
これは「書いたほうがいい情報」ではなく、法律上の義務です。

以下は、求人票に必ず明示する必要がある主な項目です。

分類主な項目根拠法令・補足
業務内容従事すべき業務、業務変更の範囲職業安定法 第5条の3(2024年改正対応)
契約期間有期・無期の別、更新の有無・更新基準改正職業安定法施行規則
就業場所勤務地、変更の範囲(転勤・リモート含む)同上
労働時間・休日始業・終業時刻、休憩時間、休日、時間外労働の有無労働基準法 第15条
賃金基本給、手当、昇給・賞与の有無、支給時期労働条件明示指針(厚生労働省)
試用期間有無、期間、条件差(給与・勤務時間など)改正職業安定法(2024年4月)
社会保険健康・厚生・雇用・労災の加入状況各保険法・明示指針
受動喫煙防止措置就業場所の喫煙可否・対策健康増進法
募集者名募集主体(法人名・事業所名など)職業安定法 第5条の3

これらを求人票に記載していない場合、「労働条件の明示義務違反」として行政指導の対象になることがあります。特に、曖昧な表現(例:「給与応相談」「勤務地未定」など)は求職者の誤解を招き、トラブルの原因になりやすいため注意が必要です。

また、2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則では、求人票に明示すべき項目が追加・強化されました。

特に「業務内容・就業場所の変更の範囲」「契約更新の基準」など、将来の働き方を見据えた明示が義務化されています。
これらは、求職者との認識のズレを防ぎ、トラブルを未然に防ぐための重要な改正です。

出典:
・厚生労働省「職業安定法(第5条の3)」:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
・厚生労働省「労働基準法(第15条)」:https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article15.html
・厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
・厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html

必須項目の詳細・記載例

以下では、それぞれの項目について「なぜ必要なのか」「どのように書けばよいか」を具体例とともに解説します。

雇用形態・契約期間

雇用形態は、正社員・契約社員・パートなど、雇用の基本形態を示す必須項目です。
特に有期契約(契約社員・パートなど)の場合は、契約期間・更新の有無・更新基準を具体的に書く必要があります(職業安定法第5条の3)。

2024年改正で「契約更新の基準(上限年数・更新回数など)」の明示も義務化されました。
曖昧にすると、「自動更新と思っていた」「更新できる基準が分からない」といったトラブルにつながります。

【記載例】
雇用形態:契約社員(6か月ごとの更新あり・上限3年)
契約期間:初回6か月、勤務評価と事業状況により更新の可能性あり

就業場所・勤務時間・休憩・休日

どこで・いつ働くのかを明示する項目です。
就業場所・勤務時間・休憩・休日の記載は、職業安定法・労働基準法で明示義務ありとされています。

2024年改正では、「就業場所の変更範囲」(転勤・リモート勤務の可能性など)の明示も求められています。
「勤務地未定」「シフト制のみ」など曖昧な書き方は避け、勤務形態がイメージできる具体性を意識しましょう。

【記載例】
就業場所:東京都渋谷区(リモート勤務あり/全国転勤の可能性あり)
勤務時間:9:00〜18:00(実働8時間・休憩60分)
休日:土日祝日(完全週休2日制)

賃金(基本給・手当・昇給・賞与)

賃金は、求人票で最もトラブルが起きやすい項目です。
基本給・手当・昇給・賞与を分けて記載することが、厚生労働省の指針で義務化されています。

「給与応相談」「上限なし」などの曖昧な表現は、虚偽表示とみなされるおそれがあるため避けましょう。
また、固定残業代を含む場合は、金額と時間数の内訳を必ず明記します。

【記載例】
賃金:月給28万円〜35万円(固定残業20時間分/35,000円含む)
手当:通勤手当(月上限2万円)、資格手当あり
昇給:年1回(業績による) 賞与:年2回(昨年度実績2.0か月分)

試用期間の有無と条件

試用期間の有無や内容も、2024年4月の改正職業安定法で明示が義務化されました。
期間だけでなく、試用中と本採用後で労働条件に違いがある場合は、その差を明示する必要があります。

たとえば「給与95%支給」「勤務時間短縮」などの条件差を記載せずに採用すると、不利益変更とみなされるおそれがあります。

【記載例】
試用期間:3か月(期間中の給与・待遇変更なし)
または
試用期間:3か月(期間中は基本給の95%を支給)

社会保険・福利厚生

社会保険の加入状況は、職業安定法および労働条件明示指針で明示が求められる必須項目です。
健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の4つを、それぞれ明確に記載しましょう。
「社会保険完備」とだけ書くのではなく、4種を列挙する形が望ましいです。

勤務時間や雇用形態によって加入条件が異なる場合(例:週20時間未満勤務者など)は、その旨を補足すると誤解を防げます。

福利厚生は法的義務ではありませんが、求職者の安心感や魅力づけにつながる情報です。
実際に運用している制度のみを簡潔に記載すると信頼性が高まります。

【記載例】
社会保険:健康・厚生年金・雇用・労災 各種保険加入
福利厚生:定期健康診断、資格取得支援制度、在宅勤務制度あり

応募資格・業務内容

業務内容は、職業安定法で明示が義務づけられている項目です。
どんな仕事を・どの範囲で担当するのかを具体的に記載します。
職種名だけでは不十分なので、「業務の内容・担当範囲・使用ツール」などを簡潔に示しましょう。

応募資格は法的義務ではありませんが、ミスマッチ防止のための必須情報です。
「必須条件」と「歓迎条件」を分けて記載すると、求職者が応募可否を判断しやすくなります。

【記載例】
業務内容:法人向け人材紹介サービスの営業。新規顧客開拓および既存顧客フォローを担当。
応募資格:【必須】法人営業経験2年以上 【歓迎】人材業界での営業経験

※年齢・性別・国籍などを制限する表現は、男女雇用機会均等法や職業安定法に抵触するおそれがあります。

選考プロセス・応募方法

選考の流れや応募方法は法的義務ではありませんが、応募率を大きく左右する重要項目です。応募後のプロセスが不明確だと、求職者の不安につながります。
書類選考から内定までの流れや、面接回数・所要期間をできるだけ具体的に示しましょう。

応募方法も、媒体経由・メール・自社フォームなど、複数の手段を提示すると応募しやすくなります。
企業側の運用を踏まえ、最もスムーズな経路を先に書くのが基本です。

【記載例】
選考プロセス:書類選考 → 一次面接(オンライン) → 最終面接(対面) → 内定
応募方法:応募フォームから

求人票に記載してはいけないNG項目・表現例

求人票は「書くべきこと」と同じくらい、「書いてはいけないこと」が厳格に定められています。

一見よくある表現でも、法令違反や差別的表現と見なされるケースがあるため注意が必要です。

以下では、法令違反になるNG項目と実務上避けるべき表現を一覧で整理しました。

本章では、求人票で注意すべき内容を「法令で禁止されているNG項目」と、
「法律違反ではないが実務上避けるべきNG表現」に分けて整理しました。
それぞれのポイントとOK例を確認しながら、トラブルを未然に防ぎましょう。

区分NG項目主な内容・ポイント
法令系NG①性別に関する表現(男女雇用機会均等法)・性別で限定/優遇する表現は禁止(例:男性限定・主婦歓迎など)・OK例:男性活躍中/営業スタッフ/主婦(夫)歓迎・例外:芸術・防犯・宗教・風紀・競技などやむを得ない場合/ポジティブ・アクション
法令系NG②年齢に関する表現(雇用対策法)・年齢制限の明示は禁止(例:30歳以下・若者歓迎)・OK例:年齢不問/20代活躍中・例外:定年・長期勤続によるキャリア形成などの場合は「例外事由○号」と併記
法令系NG③国籍・出身地・身体的特徴による制限(職業安定法ほか)・国籍、出身地、体形、容姿、障がいなどの制限は禁止・NG例:日本国籍のみ/外人/通勤30分以内/身長170cm以上・OK例:日常会話レベルの日本語/U・Iターン歓迎/色覚障害/タッチタイピング可
法令系NG④賃金・最低賃金・固定残業の誤記・曖昧(最低賃金法・労基法)・最低賃金を下回る、または固定残業の内訳不明はNG・NG例:給与応相談/上限なし/残業なし(実態あり)・OK例:基本給・手当を区分明示/固定残業○時間・○円
法令系NG⑤労働時間・就業場所の曖昧・乖離(労基法・職安法)・始業/終業、休日、勤務地は具体に・NG例:勤務時間9:00~/勤務地未定・OK例:9:00〜18:00(実8h/休60分)/勤務地と変更範囲・リモート可否を明示
法令系NG⑥受動喫煙防止措置の未記載(健康増進法)・屋内禁煙/喫煙室あり等の区分明示が必要
法令系NG⑦募集者の氏名・名称の未記載(職安法)・募集主体(法人名・事業所名・派遣/紹介の別)を必ず明示
法令系NG⑧虚偽・誇張・おとり広告(職安法)・実際の条件と乖離、上場企業詐称などは罰則対象(職安法第65条)
実務系NG①抽象・精神論の避けるべき表現・「やりがい」「成長できる」などは具体化を・OK例:「新規事業立ち上げに携われる」「OJT研修充実」など・性格系も「明るい人」→「明るい対応ができる人」へ
実務系NG②写真・画像の権利配慮・社員写真は本人同意必須/退職者不可/ロゴ・キャラの写り込み注意

まとめ|NG項目を避けて、信頼される求人票を作ろう

求人票は、採用活動の「入口」です。たとえ悪意がなくても、法令に抵触する表現や曖昧な記載があるだけで、応募者からの信頼を失ったり、掲載停止や行政指導を受ける可能性があります。

特に最近は、法改正やジェンダー・ダイバーシティ意識の高まりにより、「昔はよく見た表現」でもNGになるケースが増えています。

必ず最新のルールに基づき、客観的かつ公平な表現を意識しましょう。

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この記事の監修者:長井 亮

1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。