【求人票】福利厚生の正しい書き方|競合と差がつくポイント・テンプレ付き
公開日: 2019年05月21日 | 最終更新日: 2025年11月22日
「なかなか応募が集まらない」といった悩みを抱えている経営者や採用担当は多いのではないでしょうか。
そんなときに見直したいのが、求人票の福利厚生の記載内容です。
求人票において、待遇や福利厚生の欄は必要最低限の情報を伝えるためのものだと思われがちですが、工夫次第で十分なPRになります。今回の記事は、自社の待遇記載をブラッシュアップできる内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
福利厚生とは?
福利厚生とは、従業員が安心して働ける環境を整えるために、企業が提供する制度やサポートの総称です。
社会保険など法律で義務づけられているもの(法定福利厚生)と、企業が独自に設ける手当・休暇制度・働き方支援など(法定外福利厚生)の2種類があります。
近年は、求職者が企業を比較する際の重要な判断材料になっており、福利厚生の内容と書き方次第で、応募数・マッチ度・入社後の定着率が大きく変わると言われています。
福利厚生が重要視される背景
近年、求職者が企業を選ぶ際に「福利厚生」を重視する傾向は、明確なデータとして表れています。
株式会社ベネフィット・ワンが2025年に実施した調査では、
若手ビジネスパーソンの約3人に1人が「福利厚生が勤務先選びの決め手になる」と回答しています。
とくに物価高の影響から、“生活コストを抑えられる福利厚生”への関心が高まっていることが特徴です。
出典:株式会社ベネフィット・ワン「福利厚生に関する意識調査(2025)」
https://corp.benefit-one.co.jp/news/pressrelease/2025/20250610/20250610.pdf
一方、企業側も福利厚生の強化に積極的です。
帝国データバンクが2025年10月に発表した調査によると、
「福利厚生を今後さらに充実させる予定の企業」は47.6%にのぼり、約半数の企業が制度強化を検討しています。とくに、人手不足が深刻な業種(建設業58.7%、運輸・倉庫業55.1%)では、高い割合で福利厚生の拡充が進んでいます。
出典:帝国データバンク「福利厚生に対する企業の動向調査(2025年10月)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251023-employeebenefits/
求職者は福利厚生を重視しており、それに合わせて企業は福利厚生を強化し、差別化を図っています。
応募を増やし、入社意欲を高め、売り手市場で採用競合に負けないために、求人票での福利厚生の見せ方は採用成功のカギとなります。
求人票に記載する福利厚生の2分類「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」
福利厚生は大きく 「法定福利厚生」 と 「法定外福利厚生」 の2種類に分かれます。
この違いを理解しておくと、求人票でどの項目を“確実に書くべき部分”、また“他社と差別化できる部分”が明確になります。
法定福利厚生の項目一覧
法定福利厚生とは、法律に基づいて企業が加入・提供しなければならない制度です。
記載漏れがあると「制度がないのでは?」と不安を与えるため、求人票では必ず明記しましょう。
| 項目 | 内容 |
| 労災保険 | すべての労働者が対象。加入は必須。表記例:労災保険加入 |
| 雇用保険 | 週20時間以上勤務する従業員が対象。表記例:雇用保険加入 |
| 健康保険 | 社会保険のひとつ(協会けんぽ or 健保組合)。表記例:健康保険(協会けんぽ)加入 |
| 介護保険 | 40歳以上の従業員が対象。健康保険加入時に自動付帯。 |
| 厚生年金 | 社会保険制度の中心。表記例:厚生年金加入 |
| 子ども・子育て拠出金 | 健康保険加入企業に自動発生。個別表記は不要(社会保険加入で網羅)。 |
法定外福利厚生の項目一覧
法定外福利厚生とは、企業が任意で提供する“プラスαの制度”のことです。
ここをどう整備し、どう見せるかによって応募数・志望度が大きく変わります。
法定外福利厚生の種類は多種多様ですが、大きく7つのカテゴリにわけられます。以下の表では、各カテゴリ別に具体的な福利厚生内容をまとめました。
■ 法定外福利厚生の主要7カテゴリ(具体例つき)
| カテゴリ | 概要 | 具体的な福利厚生内容 |
| 住宅関連 | 住まいに関する支援 | 社宅・社員寮、住宅手当、家賃補助、引越し費用補助 |
| 健康増進・疾病予防 | 健康維持・予防の支援 | 健康診断費用補助、予防接種、フィットネス補助、メンタルヘルス相談 |
| 育児・介護支援 | ライフステージの両立支援 | 育児休業・介護休業、時短勤務、ベビーシッター補助 |
| 慶弔・災害時の支援 | 万が一の際の支援 | 結婚祝金、出産祝金、弔慰金、災害見舞金 |
| 余暇・レクリエーション | 余暇活動の充実 | レジャー施設補助、サークル活動支援、社内イベント、社員旅行 |
| 自己啓発・キャリア開発 | スキルアップの支援 | 資格取得支援、研修費用補助、語学学習補助、社内講座 |
| 資産形成支援 | 将来の資産づくり支援 | 退職金制度、確定拠出年金、財形貯蓄、株式購入制度 |
【例文あり】応募を増やす福利厚生の効果的な書き方
福利厚生は、単に制度を列挙するだけでは効果が半減します。
求職者が知りたいのは、
「自分の生活がどう良くなるのか」
「働くイメージをもちやすいか」
というメリットの具体像です。
そのため、金額・条件・利用シーンをできるだけ具体的に書くことがポイントです。
ここでは、求人票にそのまま使える例文と、採用で効果を発揮する書き方のコツを紹介します。
金額・条件を明確にする
悪い例(NG)
・家族手当あり
・交通費支給
・住宅手当あり
良い例(OK)
・交通費:月5万円まで支給(営業交通費は全額会社負担)
・住宅手当:月2万円を一律支給(単身者・世帯主問わず)
・家族手当:配偶者1万円/子1人につき5,000円
曖昧な表現は「どれくらいもらえるのか」が伝わらず、応募動機につながりません。
数値を具体的に示すことで、求職者は生活のイメージを持てるようになります。
“働く具体的なイメージが湧く”補足を入れる
例文
・社員食堂あり(1食350円で栄養バランスの良いメニューを提供)
・健康診断(人間ドック補助あり:上限3万円/年)
・研修費用補助(資格取得に必要な教材・受験費用を会社が全額負担)
求職者は制度そのものよりも、「どれだけ使いやすいのか?」「実際に活用されているのか?」「自分の生活はどう変わるのか?」を知りたがっています。
そのため、
・具体的な金額
・頻度
・利用シーン
・利用率
上記のいずれかを必ず1つ以上セットで書くと、制度がリアルに感じられる求人票になります。
福利厚生の“独自性”を見せる
他社と差がつく項目です。必ずしも特別な制度である必要はなく、以下のように「背景」や「目的」を一言添えるだけで魅力度が大きく変わります。
例文
・在宅勤務制度(育児・介護との両立をサポートするため導入)
・書籍購入補助(学びを支援するカルチャーの一環として実施)
・クラブ活動支援(部署を超えた交流を促進するため月3,000円支給)
制度そのものより「その制度が存在している理由」に共感が生まれ、応募動機につながりやすくなります。
利用率や実績を数字で見せる(可能なら)
制度があっても“使われているのか”が不透明だと、求職者は不安を感じます。
実績や利用率を記載すると、制度の実効性が伝わり、安心材料になります。
例文
・産休・育休の取得率:100%/復帰率90%
・資格取得支援制度:昨年度の利用者25名
・リモート勤務:週2日利用可能(利用率65%)
まとめて読みやすく“カテゴリ化”する
福利厚生が多いほど情報が埋もれやすくなるため、カテゴリごとに整理すると求職者が読みやすくなります。
例文
【社会保険】
健康保険(協会けんぽ)/厚生年金/雇用保険/労災保険
【手当・補助】
住宅手当(月2万円)/家族手当(配偶者1万円・子5,000円)
【働き方】
在宅勤務(週2日)/副業可/時短勤務制度
【健康・生活】
健康診断(人間ドック補助あり)/社員食堂(1食350円)
【成長支援】
資格取得支援(受験費用を会社負担)/書籍購入補助
【完成版】福利厚生の記載例|そのまま使えるテンプレート付き
以下では、求人票における福利厚生の記載例と、コピーして利用できる汎用テンプレートを紹介します。
具体的な金額や利用イメージを添えることで、応募率が大きく向上します。
<福利厚生(記載例)>
- 社会保険完備
(健康保険〈協会けんぽ〉/厚生年金/雇用保険/労災保険) - 住宅手当:月20,000円
- 家族手当:配偶者10,000円/子5,000円
- 社員食堂あり(1食350円/和洋2種類から選べます)
- 健康診断(人間ドック補助:年1回・上限3万円)
※昨年度の利用率73% - 資格取得支援(教材・受験費用は会社が全額負担)
- 在宅勤務制度(週2日利用可/全社員の約40%が利用)
- 書籍購入補助(年間1万円まで/業務関連書籍が対象)
- 産休・育休取得率100%/復帰率90%
<福利厚生(テンプレート)>
- 社会保険完備(健康保険〈 〉/厚生年金/雇用保険/労災保険)
- 住宅手当:月◯◯円(対象:◯◯)
- 家族手当:配偶者◯◯円/子一人あたり◯◯円
- 通勤手当(上限:月◯◯円/マイカー通勤:可・不可)
- 健康診断(補助:上限◯◯円/人間ドック:あり・なし)
- 社員食堂あり(1食◯◯円/特徴:◯◯)
- 資格取得支援(対象資格:◯◯/補助内容:◯◯)
- 在宅勤務制度(週◯日利用可/対象部署:◯◯)
- 書籍購入補助(年間上限:◯◯円)
- 育児・介護支援(時短勤務:あり/休暇制度:◯◯)
- その他:◯◯◯(独自制度や自社の特長を記載)
〔2025年最新版〕福利厚生の人気ランキング
実際に、どのような福利厚生が人気なのでしょうか。
ここからは、第一生命グループが運営する「いちラボ(ICHI LAB)」が公開した『2025年版 福利厚生制度ランキング』(社員500名以下の企業に勤める全国の会社員対象)をもとに、従業員が実際に「満足している福利厚生」と「導入してほしい福利厚生」について紹介していきます。
人気の福利厚生制度《総合ランキング》
調査対象:全国の会社員(社員500名以下)/N=698/複数回答
出典:いちラボ「2025年版 福利厚生制度ランキング」
https://ichilab.dai-ichi-life.co.jp/welfare-benefits/00012/
| 順位 | 制度 | 満足度 |
| 1位 | 退職金制度 | 32.4% |
| 2位 | 家賃補助・住宅手当 | 27.4% |
| 3位 | 特別休暇(リフレッシュ・ボランティア等) | 16.6% |
全体を通して、「経済的な支援(退職金・家賃補助)」と「ワーク・ライフ・バランスの向上(特別休暇)」が特に重視されていることが明らかになりました。
2. 若手(入社9年以内)に人気の制度ランキング
調査対象:入社9年以内/N=262/複数回答
出典:同上
| 順位 | 制度 | 満足度 |
| 1位 | 家賃補助・住宅手当 | 37.4% |
| 2位 | 特別休暇 | 16.4% |
| 3位 | 保養所・レクリエーション施設の優待利用 | 14.9% |
若手層は特に 生活費の負担軽減 と 休暇の柔軟性 を重視。住宅補助は経済的不安の解消に直結するため、定着率向上に寄与する制度として評価されています。
ベテラン(入社10年以上)に人気の制度ランキング
調査対象:入社10年以上/N=436/複数回答
出典:同上
| 順位 | 制度 | 満足度 |
| 1位 | 退職金制度 | 43.6% |
| 2位 | 家賃補助・住宅手当 | 21.3% |
| 3位 | 特別休暇 | 16.7% |
入社年数が長い層ほど、退職後の生活を見据えた制度への関心が高い 傾向が顕著です。反対に、家賃補助・住宅手当の割合は若手層に比べて低めです。
在職者が「今後導入してほしい」福利厚生制度ランキング
調査対象:在職者/N=1062/複数回答
出典:同上
| 順位 | 制度 | 希望度 |
| 1位 | 特別休暇 | 26.0% |
| 2位 | 家賃補助・住宅手当 | 25.4% |
| 3位 | 定年退職後の医療保障 | 18.1% |
在職者の要望として最も多かったのは「特別休暇」。
ワーク・ライフ・バランス重視の傾向が続いており、有給休暇とは別枠の休暇制度が求められています。
転職希望者が企業に求める福利厚生制度ランキング
調査対象:転職希望者/N=618/複数回答
出典:同上
| 順位 | 制度 | 希望度 |
| 1位 | 家賃補助・住宅手当 | 58.4% |
| 2位 | 特別休暇 | 42.7% |
| 3位 | 退職金制度 | 42.4% |
転職希望者は 住宅補助のニーズが圧倒的に高い という特徴があります。
住宅費は生活コストの大部分を占めるため、求職者が企業を選ぶ決め手になりやすい項目です。
まとめ
求人票に記載する福利厚生は、応募者の志望度・入社後の定着を左右する重要な要素です。
とくに 金額・条件・利用シーンを具体的に書くこと、制度の背景や意図を一言添えること が、求職者に“働くイメージ”をもたせ、応募意欲を大きく高めます。
おさえておくべきポイントは、
(1)法定・法定外を明確に分けて記載すること
(2)数字でわかる具体性を持たせること
(3)求職者の生活にどうメリットがあるかを示すこと の3つです。
本記事のテンプレートをもとに自社の制度を整理し、ターゲット人材にとって “この会社を選ぶ理由” が伝わる求人票へ仕上げてください。
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この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。



