【2026年10月法改正】就活ハラスメントとは?求職者等セクハラ防止の義務化と企業の対策
公開日: 2026年08月26日

採用活動におけるハラスメントは、面接時の不適切な質問だけでなく、インターンシップやOB・OG訪問、リクルーター面談、内定後の懇親会、SNSでのやり取りなど、さまざまな場面で起こる可能性があります。
そして2026年10月1日から、改正男女雇用機会均等法により、企業には求職者やインターンシップ生等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が義務づけられます。対象は企業規模を問わず、すべての事業主です。
ただし、採用現場で注意すべきなのはセクハラだけではありません。圧迫面接やオワハラ、家族構成・結婚・思想信条などに関する不適切な質問も、企業の信用や採用力を損なう要因になります。これらは法律上の扱いが異なるため、区別して理解したうえで一体的に対策することが重要です。
本記事では、就活ハラスメントの具体例を紹介したうえで、2026年10月の法改正で何が変わるのか、企業に求められる防止措置や、採用現場で進めておきたい対策についてわかりやすく解説します。
【2026年10月法改正】就活ハラスメント対策が義務化
2025年6月11日に公布された改正法により、2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、求職者等セクハラ)の防止措置が事業主に義務づけられます。
就活ハラスメントには、セクハラのほかにも圧迫面接やオワハラ、不適切な質問などがありますが、今回の法改正で新たに防止措置が義務化されるのは「求職者等セクハラ」です。
まずは、法改正によって何が変わるのかを確認しましょう。
法改正で何が変わるのか
2026年10月1日に施行される改正男女雇用機会均等法により、企業は求職者等セクハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じなければならなくなります。
厚生労働省では、求職者等セクハラを「事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等による求職活動等が阻害されるもの」としています。
具体的に企業に求められるのは、求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針の明確化や、求職者との面談・連絡に関するルールの設定、相談体制の整備、問題が発生した際の迅速な事実確認や再発防止などです。
なお、同じ2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策も事業主に義務づけられます。カスハラ対策は労働施策総合推進法、求職者等セクハラ対策は男女雇用機会均等法に基づくものです。
(参考)令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について – 厚生労働省
厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
対象となる「求職者等」と採用場面
法改正の対象となる「求職者等」は、企業の求人に応募している人だけではありません。
厚生労働省では、以下のような人を対象としています。
- 企業の求人に応募する求職者
- 企業が実施する採用につながる活動に参加する人
- 教育実習や看護実習などの実習を受ける人
また、対象となる場面も採用面接だけではありません。
企業の就職説明会、社員訪問、インターンシップなども含まれます。さらに、SNSやメッセージなど、オンラインを介して行われるやり取りも対象です。
そのため、人事・採用担当者だけが注意すればよいわけではありません。面接官やリクルーター、OB・OG訪問を担当する社員など、求職者と接点を持つ社員まで含めて対策する必要があります。
(参考)令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます! – 厚生労働省
厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
すべての事業主が対象|中小企業にも猶予なし
求職者等セクハラの防止措置は、企業規模にかかわらず、すべての事業主が対象です。
厚生労働省の地方機関である神奈川労働局も、2026年10月1日から「企業規模を問わず、すべての事業主」に求職者等セクハラの防止措置が義務づけられると案内しています。
つまり、大企業だけでなく中小企業も2026年10月1日から対応が必要です。
求職者との接触ルールや相談窓口、問題発生時の対応方法などは、施行直前に整えようとしても社内への周知や教育まで間に合わない可能性があります。自社の採用活動で求職者と接点を持つ社員を洗い出し、必要な対策を早めに進めることが重要です。
(参考)職場におけるハラスメント防止対策の改正(カスタマーハラスメント他) – 神奈川労働局
神奈川労働局「職場におけるハラスメント防止対策の改正」
(参考)職場におけるハラスメントの防止のために – 厚生労働省
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
就活ハラスメントの主な種類と具体例
就活ハラスメントには、性的な言動だけでなく、圧迫面接やオワハラ、採用に関係のないプライベートな質問なども含まれます。
代表的なものとして、以下の4つが挙げられます。なお、それぞれ法律上の扱いは異なり、2026年10月の法改正で防止措置が義務化されるのは「求職者等セクハラ」です。
求職者等セクハラ|性的な質問・身体への接触・執拗な誘い
求職者等セクハラとは、採用活動において求職者や学生に対して行われる性的な言動です。
たとえば、面接や面談で恋愛・性的な内容について質問する、必要なく身体に触れる、個人的な食事や交際へ執拗に誘うといった行為が挙げられます。
面接だけでなく、インターンシップや社員訪問、SNSでのやり取りなど、厚生労働省が例示している場面に加え、内定後の懇親会など、採用に関連するさまざまな接点においても十分に注意する必要があります。
圧迫面接|高圧的な態度や人格を否定する発言
面接官が高圧的な態度を取ったり、応募者の人格を否定したりするような面接も、就活ハラスメントとして問題になる場合があります。
たとえば、応募者を威圧するような口調で問い詰めたり、能力や人間性を必要以上に否定したりする行為です。
選考のために厳しい質問をすることと、相手の尊厳を傷つける言動は区別する必要があります。
オワハラ|他社の選考辞退や就活終了を迫る行為
オワハラとは、企業が内定・内々定などを条件に、学生へ他社の選考辞退や就職活動の終了を迫る行為です。
「内定を出す代わりに他社の選考をすべて辞退してほしい」など、学生の自由な意思決定を妨げる行為は避けなければなりません。
採用人数を確保したいという企業側の事情があったとしても、学生の職業選択の自由を尊重した対応が必要です。
プライバシー侵害|家族・結婚・思想信条などの不適切な質問
採用選考では、応募者本人の適性や能力と関係のない事項を質問することにも注意が必要です。
たとえば、家族構成や家族の職業、結婚・恋愛、宗教、思想・信条などに関する質問が挙げられます。
面接官としてはアイスブレイクや応募者を知るための質問のつもりでも、採用判断に必要のないプライベートな情報を尋ねることは避けるべきです。
重要なのは、「悪意があるかどうか」だけで判断しないことです。採用する側と求職者側には立場の違いがあり、応募者は不快に感じても拒否しにくい場合があります。企業として共通の判断基準を持ち、採用に関わる社員へ周知しておくことが重要です。
なぜ今、就活ハラスメント対策が必要なのか
2026年10月の法改正への対応だけでなく、採用力や企業ブランドを守るという観点からも、就活ハラスメント対策は重要です。
実際に、就職活動中にセクハラを経験した人は少なくありません。また、企業と求職者の立場の違いから、問題が表面化しにくい点にも注意が必要です。
約3人に1人が就活等セクハラを経験している
厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、2020~2022年度卒業で就職活動またはインターンシップを経験した人のうち、就活等セクハラを一度以上経験した割合は、インターンシップ中で30.1%、インターンシップ以外の就職活動中で31.9%でした。
また、就活等セクハラを受けた後の影響として、「就職活動に対する意欲が減退した」と回答した割合は、インターンシップ中で34.6%、インターンシップ以外の就職活動中では40.0%となっています。
就活ハラスメントは、一部の企業だけで起こる特殊な問題ではありません。求職者の就職活動そのものに影響を与えるだけでなく、企業への志望度低下や採用機会の損失につながる可能性があります。
(参考)令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査 – 厚生労働省
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について」
求職者は選考への影響を恐れて声を上げにくい
就職活動では、企業側が評価や合否を判断する立場にあるため、求職者との間に力関係が生まれやすくなります。
そのため、不適切な質問や言動を受けても、「指摘すると選考に影響するのではないか」「内定をもらえなくなるのではないか」と考え、その場で拒否したり不快感を示したりできないケースもあります。
面接官やリクルーター側が「相手も笑っていたから問題ない」「悪気はなかった」と考えていても、それだけで適切なコミュニケーションだったとは判断できません。
企業には、問題が起きてから個別に対応するだけでなく、求職者との接し方について共通のルールや判断基準を設け、就活ハラスメントを未然に防ぐ体制を整えることが求められます。
就活ハラスメントを放置した場合のリスク
就活ハラスメントは、被害を受けた求職者だけでなく、企業や行為者となった社員にも大きな影響を及ぼします。
特に現在は、採用活動での体験がSNSや口コミサイトを通じて広まりやすいため、ひとつの不適切な言動が企業全体の採用活動に影響する可能性があります。
企業が負うリスク
就活ハラスメントが発生すると、企業には主に以下のようなリスクがあります。
- 社会的信用や企業ブランドの低下
- SNSや口コミによる悪評の拡散
- 応募数や内定承諾率の低下など、採用力への悪影響
- 損害賠償請求などの法的・金銭的リスク
- 既存社員のエンゲージメント低下や離職
特に採用活動では、求職者一人への対応が企業全体の印象につながります。
また、2026年10月から義務化される求職者等セクハラの防止措置について、行政による勧告に従わない場合には企業名が公表される可能性もあります。
採用担当者や面接官個人の問題として捉えるのではなく、企業として未然に防止する仕組みを整えることが重要です。
(参考)職場におけるハラスメントの防止のために – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/
行為者となった社員が負うリスク
就活ハラスメントは、企業だけでなく、実際に不適切な言動を行った社員にも影響します。
行為の内容によっては、就業規則に基づく懲戒処分や損害賠償などの責任問題に発展する可能性があります。また、SNSなどで本人が特定されれば、社会的信用やその後のキャリアに影響することも考えられます。
注意したいのは、本人に悪意がなくても問題になり得ることです。
「学生との距離を縮めたかった」「アイスブレイクのつもりだった」といった意図であっても、求職者との立場の違いや受け取られ方を考慮しなければなりません。
そのため企業には、「社員一人ひとりが気をつける」だけではなく、求職者との接し方について明確なルールを設け、採用に関わる社員へ共通の判断基準を浸透させることが求められます。
法改正で企業に義務づけられる4つの防止措置
法改正により、企業には求職者等セクハラを防止するための具体的な措置が義務づけられます。
厚生労働省が示す内容は、大きく「方針等の明確化・周知」「相談体制の整備」「事後の迅速かつ適切な対応」「そのほか併せて講ずべき措置」の4つに整理できます。
防止方針・採用ルールの明確化と周知
まず必要なのが、求職者等に対するセクハラを許さないという企業方針を明確にし、社員へ周知することです。
求職者等セクハラを行った社員には厳正に対処することや、その具体的な内容についてもあらかじめ定めておく必要があります。
また、採用活動における接触ルールの整備も求められます。たとえば、面談を実施する時間や場所、複数名で対応するなどの実施体制、求職者との連絡に使用するSNSなどをあらかじめ決めておく方法があります。
社員個人の判断だけに任せず、「どのように求職者と接するのか」を企業として明確にしておくことが重要です。
相談体制の整備
求職者等がセクハラについて相談できる窓口をあらかじめ設置し、その存在を求職者等へ周知する必要があります。
相談窓口を設置するだけではなく、相談を受けた担当者が内容に応じて適切に対応できる体制を整えておくことも重要です。
選考を受ける立場の求職者は、「相談すると選考に影響するのではないか」と不安を感じる可能性があります。問題を早期に把握できるよう、安心して相談できる環境を整えることが求められます。
事案発生時の迅速な対応と再発防止
実際に相談や申告があった場合に備えて、事後対応の流れも整備しておかなければなりません。
企業には、事実関係を迅速かつ正確に確認したうえで、被害を受けた求職者等への配慮、行為者への適切な対応、再発防止措置を行うことが求められます。
問題が発生してから「誰が対応するのか」「何を確認するのか」を決めていると、初動が遅れる可能性があります。相談を受けた際の報告先や事実確認の方法などを事前に定めておくことが重要です。
プライバシー保護と不利益な取り扱いの禁止
相談者などのプライバシーを保護するための措置も必要です。
相談内容や個人情報が不必要に社内へ広がらないよう、情報を取り扱う範囲や方法を明確にしておく必要があります。
また、社員が事実確認など企業の対応に協力したことを理由として、解雇などの不利益な取り扱いを行わない旨を定め、社員へ周知することも求められています。
制度だけを用意するのではなく、求職者や社員が安心して相談・協力できる状態まで整えることが重要です。
2026年10月までに企業が進めたい採用ハラスメント対策
法改正への対応では、制度や相談窓口を用意するだけでなく、実際の採用現場でハラスメントが起こりにくい環境を整えることが重要です。
特に、求職者との接触ルール、問題発生時の対応体制、採用に関わる社員への教育は、施行前から準備しておきたいポイントです。
面接・面談・SNSなど求職者との接触ルールを整える
まずは、求職者と接する際のルールを明確にしましょう。
たとえば、面談を実施する時間や場所、飲酒を伴う場への参加、社員個人のLINEやSNSを使った連絡などについて、会社として基準を設けておくことが重要です。
実際の採用現場では、社員本人に悪意がなくても、「学生との関係を深めるため」「相談に乗るため」といった行動がトラブルにつながる可能性があります。
個人の判断に任せるのではなく、どこまでが適切な対応なのかを会社としてルール化し、採用に関わる社員へ周知しましょう。
相談・通報窓口と発生時の対応フローを整える
就活ハラスメントが発生した際に、迅速に対応できる体制も必要です。
求職者が安心して相談できる窓口を設けるとともに、相談があった場合に「誰が事実確認を行うのか」「誰に報告するのか」「求職者へどのように対応するのか」まで決めておきましょう。
対応方法が決まっていなければ、社内確認に時間がかかり、その間に問題が大きくなる可能性があります。
ハラスメントを未然に防ぐ仕組みだけでなく、万が一発生した場合に速やかに動ける仕組みまで整えておくことが大切です。
面接官・リクルーターなど採用に関わる社員を教育する
採用ハラスメント対策では、ルールや相談窓口を整えるだけでは十分とはいえません。
実際に求職者と接する面接官やリクルーター、OB・OGなどが、「何がハラスメントになり得るのか」「どのような言動に注意すべきか」を理解している必要があります。
特に注意したいのが、「悪意がなければ問題ない」という認識です。アイスブレイクや関係構築のつもりで行った質問や連絡でも、求職者との立場の違いによって不適切に受け取られる可能性があります。
採用に関わる社員が共通の判断基準を持てるよう、研修などを通じて継続的に教育することが重要です。
採用ハラスメント対策には社員教育も重要
採用ハラスメントを防ぐためには、ルールや相談窓口、対応フローを整備するだけでなく、採用に関わる社員一人ひとりの理解を深めることが重要です。
どれだけ制度を整えても、実際に求職者と接する社員が「何がハラスメントになり得るのか」を理解していなければ、現場で適切に判断できません。
特に、面接官やリクルーター、OB・OGなどは、人事担当者以上に求職者と直接コミュニケーションを取る場合があります。そのため、採用担当者だけでなく、求職者と接点を持つ社員まで教育の対象を広げることが大切です。
研修では、ハラスメントの基礎知識だけでなく、面接や面談、懇親会、SNSでのやり取りなど、実際の採用場面を想定しながら「どのような言動にリスクがあるのか」「問題が起こりそうな場合にどう行動するのか」を理解できるようにするとよいでしょう。
採用ハラスメントは、「悪意のある行為」だけを防げばよいわけではありません。「応募者との距離を縮めたい」「場を和ませたい」といった善意からの言動が、相手にとって負担になる場合もあります。
企業全体で共通の判断基準を持ち、採用に関わる社員が適切に行動できる状態をつくることが、採用ハラスメントの予防につながります。
アールナインの「採用ハラスメント防止研修」
アールナインでは、採用に関わる社員の理解を深め、現場での適切な対応につなげるための「採用ハラスメント防止研修」を提供しています。
研修は、収録動画による教材と、講師がリアルタイムで実施するオンライン研修の2種類です。企業の受講人数や研修の進め方に合わせて選択できます。
収録動画による「採用ハラスメント防止動画 基本編」
収録動画では、採用ハラスメントの基礎知識やリスク、採用現場で注意したい言動などを約40分で学べます。
収録済みの動画を利用するため、拠点や勤務時間が異なる社員にも同じ内容を届けやすく、短期間で導入できる点が特徴です。
講師と学ぶオンライン研修
オンライン研修は約60分で、講師との対話を交えながら、採用ハラスメントの基礎知識や実際の採用場面で注意すべきポイントを学びます。
面接・面談だけでなく、採用プロセス外での接点や、学生との適切な距離感なども扱うため、より実践的に理解を深めたい企業に適しています。採用ハラスメント対策は、制度やルールを整えるだけではなく、実際に求職者と接する社員が共通の基準を持つことが重要です。
まとめ
2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、企業規模を問わずすべての事業主に義務づけられます。
就活ハラスメントは、面接だけでなく、インターンシップやOB・OG訪問、リクルーター面談、SNSでのやり取り、内定後の接点など、採用活動のさまざまな場面で起こる可能性があります。
また、企業が注意すべきなのは求職者等セクハラだけではありません。圧迫面接やオワハラ、不適切な質問なども含め、採用活動全体を見直すことが重要です。
法改正への対応として、企業は防止方針や接触ルールの明確化、相談窓口・対応フローの整備に加えて、実際に求職者と接する社員への教育も進める必要があります。
株式会社アールナインでは、採用に関わる社員を対象とした「採用ハラスメント防止研修」を提供しています。
就活ハラスメント対策を見直したい企業は、ぜひご相談ください。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。






