長い採用活動を経て、内定を出せる人材が決まったことに喜びを感じる採用担当者の方は多いと思います。
しかし、内定を出したからと安心し、入社まで何もしなくていいというわけにはいきません。内定者の多くは、他社企業も複数受けており、他社から内定を貰っているケースも多くあります。自社が内定を出しても、自社を選ばず他の企業に就職してしまう可能性も少なくありません。
しっかりと優秀な人材を獲得し、確実に入社してもらうためにも、多くの企業では「内定者フォロー」を行なっています。
内定を出した人材に定期的にコンタクトをとり、イベントや座談会などを企画し、自社を知ってもらい内定者のモチベーションを上げるような動きが必要です。
今回の記事では、「内定者フォロー」の目的や、内定者が企業に求めるもの、具体的な内定者フォローの企画例などを解説していきます。内定者と企業の関係を強固なものにしていき、優秀な人材を逃してしまうことを回避していきましょう。

内定者フォローとは
内定者フォローとは、内定辞退を防ぐ目的などから、企業側が内定者に対しておこなう施策のことを指します。
採用通知後から入社までの期間は、内定者が不安や悩みを抱えやすい時期です。その間、企業側から何も連絡がなければ、内定を辞退して他社へ行ってしまう候補者も増えるでしょう。
内定者の悩みを払拭して企業への興味を強めるためにも、内定者懇親会や面談などの企画を通して内定者をフォローしていくことが必要です。
内定社フォローの重要性は増している
昨今における内定者フォローは、より重要度を増したプロセスとなってきています。
その理由として、売り手優位の採用市場が挙げられます。
リクルートワークス研究所の調査によると、2023年卒の大学求人倍率は1.58倍と、昨年よりも0.08ポイント上昇したという結果が出ています。この結果からも、現在、売り手市場が続いていることがわかります。
売り手市場では、求職者の入社意思がとても価値の高いものになります。求職者に選ばれる企業であるためにも、求職者の心をグリップする内定者フォローは必須であるといえるでしょう。
参考:株式会社リクルート|第39回 ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒) 【大卒求人倍率1.58倍】倍率は上昇、採用意欲は回復へ向かう ―中小企業は採用拡大に慎重な姿勢―
新型コロナウイルス対策により、内定者フォローの形も変化
2020年の新型コロナウイルスの流行以降、労働環境や採用活動において最適化が求められました。その中で、内定者フォローにおいても、課題や手法について変化がありました。
新たな課題となっているのは、選考プロセスをオンライン化する企業が増えたことにより、内定者同士の直接的な接点がなくなったことです。
加えて、会社見学や先輩社員とのリアルな接触機会が減ったことにより、一緒に働く人が見えないことへの不安を感じる内定者も増えました。
これからの内定者フォローでは、オンラインとオフラインを上手に使い分け、内定者同士や既存社員とのつながりを強固にしていくことも求められています。
内定者フォローの3つの目的
まずは、内定者フォローの目的について整理していきましょう。
内定者フォローを行う理由として、大きく下記3つの理由があります。
①内定辞退の防止
②就業前の準備
③入社後、早期退職の防止
①内定辞退の防止
まず、ひとつめは冒頭にも説明したように内定辞退の防止についてです。
内定者は多くの企業を対象に採用活動を行い、そのうち数社から内定を得ていることが多いです。その中で自社を選んでもらう必要があります。
せっかく獲得した内定者に辞退されてしまうと、採用に要した時間・コストは無駄となり、人員計画にも大幅な支障が生まれます。
そのため内定辞退を防止する動きが大切です。
内定防止の一番のポイントは、”内定者の不安を取り除くこと”です。
就職活動中、内定者は内定獲得に向けて必死に取り組みますが、内定をもらい一安心できた後、本当にこの企業に就職して良いのかを考え始めます。
家族からの何気ない一言などで、自分の選択が正しいのか不安が生じることも多くあります。そういった不安を解消するために企業は内定者へアプローチをしていくことが必要です。
不安を解消するためには、下記3つのポイントがあります。
Ⅰ 自社が必要としていることを意識してもらう
Ⅱ 明確な「入社後イメージ」を意識してもらう
Ⅲ 同期との団結力を深める
Ⅰ自社が必要としていることを意識してもらう
内定者の中には就職した後、企業からどのように扱われるかを心配している場合も少なくありません。
その不安を解消するためには、「自社が数ある候補者の中からあなたを選び、自社があなたを必要としている」というメッセージを伝えていく必要があります。人間誰しも、必要とされれば嬉しいものです。
一見、とても当たり前のようなことですが、この「伝える」という作業を怠ることにより、内定者の気持ちが離れてしまうこともあるのです。必ず自社が「あなた(内定者)を必要としている」ことを伝え、モチベーションをあげていくようにしましょう。
Ⅱ明確な「入社後イメージ」を意識してもらう
内定者が抱える不安要素の一つとして、入社後に自分が活躍している姿がイメージできないという要因があります。
入社後、自分がどのような業務を担当し、どのような人間関係を構築し、どうキャリアをステップアップさせていくのかというイメージです。
「入社後イメージ」が全くできない状態ですと、ネガティブな考えや感情が先行してしまいます。入社後のイメージができない理由として、企業から提供されている情報が少ないことが考えられます。
「入社後イメージ」を膨らませてもらうためには、自社から業務内容や、共に働く社員、キャリアステップなどを理解してもらう機会を設けることが効果的です。情報が不足している部分を内定者フォローで補うことにより、自分が活き活きと働いているイメージが生まれ、内定者の不安も取り除かれます。
Ⅲ同期との団結力を深める
内定者は仕事という新たな挑戦をする際、1人で臨まなければいけないことに不安を感じます。独立して頑張る心構えは必要であるものの、全ての悩みを1人で抱える必要はありません。
内定者には同期がいて、お互い切磋琢磨し、時には悩みを共有しながら、成長していける環境であることを伝えてあげましょう。
内定者フォローを通して、同期はかけがえのない仲間であることを伝え、同期との団結力を深める企画を実施すると良いです。共に挑戦する仲間がいると思うと、不安は大幅に減少します。1人ではないということを、内定者に伝えることは重要です。
②就業前の準備
内定者の中には、入社したら一日でも早く活躍したいと思っているモチベーションの高い人材も多くいます。
内定者のモチベーションを維持するためにも、内定者フォローを活かして入社時から良いスタートを切れるよう準備期間を設けることも必要です。
業務に関する専門分野の知識はもちろん、ビジネスパーソンとしてのマインドを持ってもらえるような企画を考えると良いでしょう。就業前の事前準備をすることで、前述した不安を解消することにも繋がります。
また、後述する入社後の早期退職を防止することにもつながります。入社後、新入社員として少しでも良いスタートを切れるよう、準備ができる環境を提供してあげましょう。
③入社後の早期退職の防止
内定者フォローをする理由の3つめは、「入社後の早期退職の防止」があげられます。新入社員は、入社後3年以内に3割が退職すると言われています。
原因は様々ですが、代表されるものとして「入社後のギャップ」があげられます。
内定をもらう前と、実際に入社して業務をしてみた後で、業務の内容、職場環境がイメージと違ったと感じる内定者も少なくありません。
そのため、入社前に業務の内容、一緒に働く社員、キャリアステップなどをできるだけ具体的に説明してあげることが必要です。
モチベーションの高い社員を育成することで、企業のパフォーマンスはあがります。
このように、内定者フォローは入社後のパフォーマンスや離職率にも影響する重要な施策といえます。
内定者が内定者フォローに求める7つの要素
内定者フォローを企画するにあたり、内定者がどのような内容を必要としているか考えることが大切です。
内定者フォローは自社から内定者に必要なことを伝える機会でもありますが、内定者が必要な情報を収集する機会でもあります。
内定者の目線を考えず、独りよがりで伝えたいことだけを伝えても、内定者は自社から離れてしまいます。
しっかりと内定者が何を考え、何を欲しているかを理解する必要があります。
内定者は下記のような内容を内定者フォローに求めることが多いです。
①不安の解消
②先輩社員との関係構築
③同期社員との関係構築
④業務内容の理解
⑤社風に触れること
⑥自身が準備すべき知識・スキルの整理
⑦自身の役割の理解
①不安の解消
前述したように、内定者は入社を決める段階で様々な不安を持っています。そのため内定者フォローを通して、不安を解消できることを望んでいます。
②先輩社員との関係構築
これから、共に働く職場のスタッフがどのような人間であるか、内定者は知りたいと思っています。
人事や経営陣など、採用段階で接する社員のみでなく、実際に現場で共に働く先輩と接する機会を望んでいる人は多いです。
③同期社員との関係構築
前述した先輩社員との関係構築と同様の理由で、同期社員のことも知りたいと思っています。同期同士で交流を持てる機会を設けてあげるのが良いでしょう。
④業務内容の理解
内定者は、自分は入社後にどのような業務をするのか、どのようなタイムラインで動けば良いのかを理解したいと思っています。
業務イメージが湧くような、内定者フォローの企画を設けてあげると良いでしょう。
⑤社風に触れること
内定者は自分が身を置く場所が、どのような環境であるかを知りたいと思っています。
企業風土として、各社員がどのような価値観で、どのような行動特性を持っているかに興味があります。
社内で実際に業務をしている風景を見学できるような機会を設けられると良いです。
⑥自身が準備すべき知識・スキルの整理
モチベーションの高い内定者は、入社後に良いスタートを切りたいと思っています。
そのために、入社までの期間を使って自分がどのような知識・スキルを獲得すれば良いのかを知りたいと思っています。
できるだけ具体的に、業務に関連する知識やスキルについて説明してあげることが必要です。
⑦自身の役割の理解
意識の高い内定者は、会社が自分に何を求めているのかを知りたいと思っています。
これは、入社後のパフォーマンスを上げるためにとても重要なことです。
しっかりと、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の説明、新入社員に求める動きを言語化して伝えてあげる必要があります。
内定者フォローを企画する際に大事な8つのポイント
続いて内定者フォローを企画する際のポイントについて解説いたします。
内定者フォローを効果的にするためには、いくつかのポイントがあります。
内定者フォローを設計する際、下記のようなポイントを意識して考えてみると良いでしょう。
①心を惹く内定通知を出す
②企業との絆を深める
③企業理念や価値観を浸透させる
④社員とのコミュニケーション機会を作る
⑤活躍している社員との交流機会をつくる
⑥SNSを活用して社内の情報をオープンにする
⑦定期的に連絡を入れる
⑧伝える情報や課題を適度な量に絞る
①心を惹く内定通知を出す
内定通知の伝え方は重要です。
例として、一部の企業では人事担当ではなく、社長から直接本人に内定通知を伝えている企業もあるようです。
このように、自分は必要とされているということを分かってもらえる心を惹く内定の伝え方を意識すると良いでしょう。
②企業との絆を深める
内定者フォローは、内定者に「この会社で働きたい」と思ってもらえるよう、企業と内定者のエンゲージメントを深める機会でもあります。
どうしたら、内定者のエンゲージメントを高められるか考えていきましょう。
③企業理念や価値観を浸透させる
企業へのエンゲージメントを深めるためには、会社の向かう方向性や価値観を伝えていく必要があります。
企業が持つ理念や価値観を、内定者フォローを通して浸透していけるように工夫しましょう。
④社員とのコミュニケーション機会を作る
内定者は、自分が働く会社の仲間達がどのような人であるか気になっています。
働いている社員とのコミュニケーションの機会を作ってあげるようにしましょう。
⑤活躍している社員との交流機会をつくる
働いている社員との交流をする際、トップで活躍している社員との交流も作ると良いでしょう。
活躍している社員と関わることで、内定者の目指すべきものが見え、モチベーションも高まります。
⑥SNSを活用して社内の情報をオープンにする
会社の雰囲気を知ることは、自分がその会社で働くイメージにも繋がります。
昨今、多くの企業がSNSを活用して、社内の様子を発信しています。
このように、オープンに社内の情報を発信していくことも、内定者が働くイメージを深めるために必要です。
⑦定期的に連絡を入れる
内定者フォローは、一度の企画を行っておしまいではありません。
内定者と定期的に連絡をとることが重要です。
しばらく連絡がこないと、内定者は放っておかれている、必要とされていないと認識してしまいます。
定期的に連絡をとり、内定者とのコニュニケーションを深めていきましょう。
⑧伝える情報や課題を適度な量に絞る
内定者フォローを設計する際、企業と内定者の双方にメリットがあるものを設計する必要があります。
そのため、内定者に負荷がかかりすぎる内容とならないように、伝える情報や課題のボリュームを調整していく必要があります。
内定者のモチベーションを高め、入社後に活躍できる準備をしてあげましょう。
Z世代の傾向を理解する
内定者フォローを実施するうえでは、Z世代の傾向を理解することが重要です。
従来の内定者フォローでは、メールでやり取りする企業が多かったのですが、Z世代はメールをあまり見ません。
Microsoft Edgeが実施した内定者世代のメール見落とし率は37.5%、未読メールの件数は平均で576件でした。
Z世代はメールより、ライン(LINE)などSNSが連絡ツールの主流であることを理解しておいてください。
また、情報収集もSNSが主流なので、社内報や内定者に向けた発信はSNSが効果的です。
承認欲求が強く、個々の個性を大切にするZ世代には「自分だけへのフォロー」だと感じる内定者フォローに心を動かされます。
不特定多数に向けた内定者フォローより、自分が参加している、自分のために実施されたと思えるイベントや研修が効果的です。
内定者フォローを実施する際には、内定者世代であるZ世代の傾向を理解して、フォロー内容を考案しましょう。
参考URL:エアリーフレッシャーズクラウド|内定者フォロー企画事例集。実用的で使える企画例をご紹介!
内定者目線で不安を解消する
内定者フォローは、内定者目線で不安を解消することが大切です。
「何を不安に思うのか」「入社前にどのような情報を知りたかったのか」を考慮してみてください。
前年度の新入社員などに、内定者の頃に感じていた不安や疑問を聞いてみると、内定者目線の内定者フォローを考案しやすいでしょう。
内定者フォローが採用担当者の独り善がりにならないよう、内定者目線で考えてみましょう。
分かりやすい内容で何度も行う
内定者フォローは、複雑なものよりわかりやすい内容が好まれます。
複雑な内容で一気に研修を行うより、わかりやすい内容で何度も行うことが大切です。
例えば、社員インタビューは、長い文面で配信するより、動画にして分かりやすく数回配信する方が内定者に伝わりやすいでしょう。
ポイントは、内定者フォローをただの採用タスクの1つにしないことです。内定者フォローを1度行っただけで終わりにしては、内定者のエンゲージメントは向上しません。
分かりやすい内容で何度も内定者フォローを行うことで、内定者のエンゲージメントを高められます。
内定者フォローは内定者目線に立って実施するようにしましょう。
内定者フォローの企画具体例8選
最後に内定者フォローのコンテンツについて解説していきます。
内定者フォローのアウトプットも様々なものがあります。下記を参考にして、自社の目的に沿った方法を検討していきましょう。
①先輩社員との座談会
②内定者懇親会
③内定者研修
④グループワークの実施
⑤職場見学
⑥内定式
⑦社内イベント
⑧相談窓口の設置
①先輩社員との座談会
内定者と既存社員でざっくばらんに喋ることができる機会は必要です。
仕事のやりがいや社員の人となりなど、お互い直接話すことで見えてくるものがあるでしょう。
②内定者懇親会
内定者同士の親睦を深めることも重要です。
入社後、壁に直面した際、一緒に乗り越えていく仲間がいるのは心強いことです。
懇親会のような形で、内定者同士がコミュニケーションをとる機会を作ってあげましょう。
③内定者研修
入社後、良いスタートができるよう事前に必要な研修を行っていくことをお勧めします。
モチベーションの高い内定者は、入社までの期間を活用し準備をしたいと考えています。
e-Learningや通信教育などのオンライン研修、また、環境を変えての合宿研修も良いでしょう。
自社の目的に沿った研修手法を取り入れていきましょう。
④グループワークの実施
チームで働く力を養うために、グループワークを取り入れるのも良いです。
一つの課題に対して、内定者数人でチームを作り、一つの課題に取り組んでいきます。
その過程でのディスカッションや、ワークを進捗させていく動きから、働く際の実践力が養われます。
⑤職場見学
前述しているように、内定者は実際に自分がどのような環境で働くかに興味があります。
実際に職場を見学する機会を作ってあげ、働くイメージを具体化させてあげましょう。
⑥内定式
内定式を行う意味合いの一つとして、内定者の気持ちの切り替えという狙いがあります。
自社が内定者を大切にしているということを伝え、これからこの会社で働いていくという意識へ切り替えることを目的とします。
⑦社内イベント
企業によっては、入社前に社内イベントを行っているところもあります。
レクリエーション要素を入れたイベントを行うことによって、既存社員、内定者同士の繋がりを深めることができます。
⑧相談窓口の設置
内定者フォローを行う際、必ず内定者が相談できる窓口を設置することが必要です。
人事担当者などの連絡先を伝え、不安や不明点があった場合に相談できるようにし、ネガティブ要因を早めに回収できるようにしましょう。
まとめ
①内定辞退の防止
②就業前の準備
③入社後、早期退職の防止
■内定者が内定者フォローに求める7つの要素
①不安の解消
②先輩社員との関係構築
③同期社員との関係構築
④業務内容の理解
⑤社風に触れること
⑥自身が準備すべき知識・スキルの整理
⑦自身の役割の理解
■内定者フォローを企画する際に大事な8つのポイント
①心を惹く内定通知を出す
②企業との絆を深める
③企業理念や価値観を浸透させる
④社員とのコミュニケーション機会を作る
⑤活躍している社員との交流機会をつくる
⑥SNSを活用して社内の情報をオープンにする
⑦定期的に連絡を入れる
⑧伝える情報や課題を適度な量に絞る
■内定者フォローの企画具体例8選
①先輩社員との座談会
②内定者懇親会
③内定者研修
④グループワークの実施
⑤職場見学
⑥内定式
⑦社内イベント
⑧相談窓口の設置
以上、内定者フォローの目的、重要ポイント、具体例について解説いたしました。
最近では、コロナウイルスの影響により内定者フォローも形を変えており、オンラインでの企画が主流となっています。
状況によって、アウトプットの形は都度変化していく必要がありますので、人事担当者は常にその時代にあった方法を考えていきましょう。
内定者フォローの目的を理解し、自社にあった内定者フォローを行い、優秀な人材を入社まで繋げられるようにしていきましょう。
