アルバイトにやる気を出させるマネジメント・4つの秘訣
アルバイトにやる気を出して働いてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
時給を上げる?
シフトを最大限考慮する?
とにかく褒める?
確かにこれらは効果が期待できますが、アルバイトのやる気に必要なのは、金銭的な報酬や時間の融通だけではありません。目に見えない「心の報酬」こそが、アルバイトのやる気に繋がるのです。
アルバイトのやる気を引き出す「心の報酬」とは?
「心の報酬」とは、そこで働く従業員が「ここで働けてよかった」「ここで働き続けたい」と思うために必要なもので、
- 「役立ち感」=自分が良い仕事をすると、人に喜んでもらえる
- 「成長感」=この仕事をしていると、自分が成長するのを実感できる
- 「絆・連帯感」=この人たちと働いていると楽しい
の3つに分類できます。
※『社員もパートもみずから動き出す「心の報酬」の与え方』中晶子著/阪急コミュニケーションズ2013
そして、この「心の報酬」を与えることで、アルバイトが仕事に対してやる気を出し、その能力を発揮してくれるようになります。では、この「心の報酬」を与えるマネジメントとはどのようなものか、東京のあるレストランのマネジメントを例に見ていきましょう。
そのレストランのホールスタッフは、社員1名を除いて全員学生アルバイトです。時給は通常の飲食店の相場以下と金銭的な報酬は低いですが、「役立ち感」や「成長感」「絆・連帯感」を高めるマネジメントを行うことで、アルバイトは自ら率先して考え、モチベーション高く働くようになり、卒業まで辞めることがありません。
学生アルバイトのやる気を高め、定着させるのマネジメントの秘訣が、次の4つの教育方法です。
1.ミッションとマインド、アルバイトへの期待を熱く語る
まずその店では仕事を説明する前に、新人アルバイトに料理やサービスの店のポリシーをしっかり伝えます。
- どのような思いで、料理が作られているか。
- 来店したお客様には、どんな価値を提供したいと思っているか。
- サービスで大切にしたいのはどんなことか。
- お客様にどんな気持ちで接してほしいか。
- アルバイトに何を期待しているか。
等、目指すミッションや、大切にしたいマインド、アルバイトへの期待をしっかり共有するのです。
アルバイトが「自分は役に立っている」と感じるためには、「何をすると喜ばしいのか」という目指す状態を明らかにしておく必要があります。そして、職場全員でミッションや大切にしたいマインドを共有することで、絆や連帯感も生まれていきます。
このように業務を始める前に店のミッションやマインドを共有することで、アルバイトは「ミッションに向かって、何をしたらいいのか、どうしたら自分はここで役に立てるのか」を考えて行動しやすくなり、また自分が役に立っていることも実感しやすくなるのです。
2.仕事を通じて成長する機会と実感を与える
店舗では、「レストランのホールスタッフ」としてだけでなく、「社会人として」「人間として」成長できるよう、仕事を任せていきます。
例えば、仕事は手順だけでなく、1つ1つの仕事の意味を丁寧に伝えます。アルバイトから見れば、店舗の業務ルールとしてではなく、「社会人として必要な気遣いや配慮」という視点が学べるので、「社会に出た時に必要な知恵を学んでいる」と実感できるのです。
また、アルバイトには、「自分の贔屓客を作るように」とミッションを与えます(ちなみに「売上〇万円」という数値目標は、単なる目標であってミッションではありません)。
そのためアルバイトは、自分の贔屓客を作るために、料理の知識やサービス知識、顧客との会話術などを必死で磨きます。贔屓客ができたからといって時給が上がるわけではありませんが、顧客から褒められたり、感謝を伝えられたりすることが増え、それがやりがいに繋がっていきます。さらに、サービス対応力が認められるようになると、社員が対応していたような重要顧客の対応を任せていきます。
責任ある仕事を任せることで、アルバイトの成長とやる気をさらに促すのです。
3.「君のおかげで売上が上がった」成果はすぐにとことん褒める
そして、アルバイトのサービス応対は店長や社員ができる限りチェックし、いい応対をしたらその直後に「今の応対はよかった」と伝えます。反対に、まずい対応をした場合にも直後に叱ります。
アルバイトの仕事をきちんと見て、良い点も改善すべき点もすぐにフィードバックすることで、アルバイトの成長は加速します。
またこの店では、売上が上がった日には、「今日は君のおかげで、売上が上がった。いいサービスをしてくれたからだ」と全力でアルバイトを褒めます。売上とアルバイトのサービス対応の直接の相関関係があってもなくても、「売上がよかったのは、いいサービスをしてくれたから」とその日のアルバイトの仕事を認めます。
アルバイトは自分の努力が認められるので、「もっとがんばろう!」とやる気を出すようになるのです。
4.歓迎会、誕生会など職場の仲間意識を高める
職場の絆や連帯感づくりも欠かせません。
例えば新しいアルバイトが入れば必ず歓迎会を開き、その日のまかないは特別メニューになります。誕生会や忘年会なども行われ、アルバイト同士が交流できる場を作ります。さらに、お店の常連顧客に積極的に新人アルバイトを紹介していきます。こうして、新人アルバイトを店全員で受入れ、職場に居場所を作り、お互いの仲間意識を醸成していくのです。
また、仕事上でも社員とアルバイトの連帯感を高める工夫がされています。
たとえば、集客やサービスの課題は社員もアルバイトも同じように情報共有し、一緒に解決策を考え、よいアイデアであればアルバイトの意見も採用します。新メニュー決めの際も、アルバイトに試食させ、感想を聞き、その感想をメニュー開発にも生かしていきます。よいアイデアならば採用してもらえるのがわかっているから、アルバイトも真剣に考え、真剣にアイデアを出すようになります。
こうして歓迎会や忘年会などの「お楽しみ」だけを共有する連帯感だけでなく、店舗運営の課題を一緒に考えるという点でも連帯感が生まれて、強固な絆となっていくのです。
「心の報酬」を与える仕組みづくりを
今回紹介したのはレストランの事例ですが、
- ミッションやマインド、期待している役割を伝える。
- 仕事を通じて成長する機会と実感を与える。
- 成果を直後にきちんと褒める。
- 職場の連帯感を高める。
- アルバイトの意見も取り入れて、役立ち感を高める。
等は、どんな業種の職場にも共通し、応用できる「心の報酬」を与える仕組みです。
「アルバイトにやる気を出させるためには、どうしたらいいのだろう?」と頭を悩ませていたら、まずは1つからでも実践してみるのはいかがでしょうか。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。