新入社員研修の6つの目的と効果を倍増させる3つのポイント
多くの企業が、新入社員を迎える際には新入社員研修を実施しています。
新入社員研修の目的とは何でしょうか? それは、学生から社会人になるステップで必要不可欠なマインドセット、就職する組織の仕組みや事業内容、業務の進め方、社会人マナーなどを習得してもらうことです。
同時に、新入社員が入社直後に抱く想いや心配事に寄り添う姿勢も必要です。自分自身が新しい組織のなかでどう生きていくのか、その組織文化や理念は好きになれるのか、事業内容にコミットできるのか、新しい人間関係のなかでうまくやれるのか、そもそも「この会社に入社して良かった」と感じられるのか。このような不安を研修期間中に解消できない限り、定着率や帰属意識の低下につながります。従って、新入社員研修は、新入社員のこうした想いも意識した内容でなければなりません。
この記事では、こうした新入社員研修の目的について解説します。
新入社員研修に目的が必要な理由
新入社員研修を行う際、なんとなくこんなことを説明すれば良いだろう、では効果のある研修成果は望めません。まずは研修の目的を明確にし、プログラムを組み立てることが重要です。
新入社員研修で目的や目標を定めるのは、以下のような理由からです。
1.テーマを明確にできる
個々のプログラムを考えるにあたり、テーマを明確にします。テーマに沿えば以下のような項目が明らかになります。
○誰が:社長が・人事が・外部講師が
○なんのために(目的):理念を共有するために・会社概要を伝えるために・ビジネスマナーを指導するために
○いつ:初期研修の最初/最後に・入社3ヶ月後に
○何を:講話を・スライド研修を・実践講座を
○どうやって:講演形式で・オンラインで・セミナー形式で
上記の「なんのために(目的)」があればテーマが決まり、どんな研修をどういったスケジュールで組み立てていくのかが整理できます。テーマがなければ講師を誰にするか、どんな内容を話してもらうかも曖昧になります。中身のある研修にするためにもテーマを明確にすることは大切です。
2. 目的・目標を共有できる
新入社員研修はさまざまなプログラムがあり、一度に全てのことを詰め込むのは大変です。そのため研修の冒頭で、「この研修では何を行い、何を理解して欲しいのか」という研修の意図を新入社員に伝えると、新入社員は「この研修は、これを理解するためにある」と目的が共有され、目標を定めやすくなります。闇雲にゴールのわからない研修に付き合わされるよりも集中して向き合うこともできるでしょう。
3. 実態に合った目的が設定できる
目的を明確にすることで、自分たちがどのような人材を育てたいのか、新入社員にどんな活躍を期待しているのか、こうした人材育成目標を踏まえた研修を意識することができます。例えば、講師にそのロールモデルを体現している先輩社員を立てて事業や業務内容、入社後のキャリアパスを紹介してもらうなど、新入社員のモチベーションにつながる研修プランを立てることなどに活用できます。また、研修中にどんなスキルを身につけて配属部署へ送り出すべきか、現場サイドと連携していくためにも目的設定は役に立ちます。
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新入社員研修の6つの目的
新入社員研修には、具体的に以下の6つの目的が考えられます。その他、企業によってはより重要な目的も考えられるかもしれません。
1. 企業理念の浸透
2. 事業内容や組織の理解
3. 学生から社会人へのマインドセット
4. 社内の人脈形成
5. 社内ルール・コンプライアンスの徹底
6. 業務内容の理解
1. 企業理念の浸透
企業理念を浸透させることは、新入社員研修の目的の中でも最も重要です。新入社員が会社の理念に共感できるかどうかは帰属意識の醸成にも影響するからです。
企業理念とは、会社が大切にする考え方や価値観・存在意義などを言葉に表したもの。全従業員が共有し、会社における行動や意思決定の基準になるものです。
経営者が新入社員にミッションやビジョンを熱く語りかけることは非常に効果的です。一方、理念は言葉だけの理解ではなく働きながら身につけていくものでもあり、クレドのような明確な行動指針を持って、企業理念に基づいた判断・行動ができているかどうか定期的に研修を行うことも大切です。
2. 事業内容や組織の理解
新入社員研修では、配属先だけではなく、会社全体の理解を深めることも重要です。各事業内容や組織を理解することで、社内にどのような部署や業務があり、どのような流れで業務が推進されるか、自分がどのポジションに位置し、何をすべき部署・役割なのかが明確になります。
自身の会社の製品やサービス、取引先や社会的な役割・貢献度などを知ることにより、会社への愛着心や誇りを育むこともできるでしょう。
企業によっては時間をかけ、営業部に配属されるとしても、まずは製造現場から製品づくりの流れを研修するケース、全部署をローテーションで経験させる研修なども行われています。
3. 学生から社会人へのマインドセット
新入社員研修には、学生(気分)から切り替え、社会人としての自覚を持ってもらうための研修も欠かせません。学生と社会人の違いと意識変容、仕事や責任とはなにか、組織で働く意味、ビジネスマナーなど、まさに意識改革が必要です。
配属後、スムーズに業務スキルの習得に集中できるよう、名刺交換や電話応対、PCスキル(社内システムの使い方)などを新入社員研修で時間を取って行う場合もあります。詰め込むだけの知識ではなく、社会人基礎力を身につけるロールプレイなど、行動が伴う実践的な研修が効果的です。
4. 社内での人脈形成
新入社員は入社以前より、どんな同期ができるのか、どんな先輩や上司と一緒に働くのか、困った時にはどこに相談すればいいのかといった不安を抱えています。そうした社内ネットワークの構築とその機会を提供してあげることも新入社員研修の目的です。
同期との集合研修では、講義だけでなくグループワーク形式で取り組むと一層コミュニケーションが活発となります。このように同期と協力して課題に取り組むことで仲間意識が醸成され、配属部署が別れた後も励まし合い切磋琢磨する良好な関係が築けます。先輩や上司と行うOJT研修はより早く職場に適応する機会にもなります。また、メンタルヘルスやキャリアなどプライベートなことを相談できる担当者と繋ぐことも研修プログラムに盛り込めるといいでしょう。
5. 社内ルール・コンプライアンスの徹底
新入社員研修で、社員として守るべきルールや重要な機密情報の漏洩などのトラブルに関する教育は徹底しておかなければなりません。これは企業の危機管理を目的とした重要な研修です。
専門部署に配属されない限り、コンプライアンスを頻繁に学ぶ機会は少ないため、コンプライアンス遵守の意識は新入社員研修時にしっかり心に留めてもらう必要があります。
同時に社内独自のルール、報連相などの〝社内の常識〟についても理解してもらいます。社内ルールは企業文化によってオリジナリティが多分にあり、若い新入社員には「古臭い」「自分もやらなければいけないのか」というマイナスイメージを持たれる可能性があります。また、機密情報に関しては、「そんなこともダメなの?」といった認識不足も多々あるようです。なぜそのルールが存在するのか、その理由も含めきちんと理解ができるよう丁寧な研修が必要です。
6. 業務内容の理解
配属先の業務に必要な知識、技術に関する研修は、実践的なスキルを身に付けることが目的です。
具体的な業務フローにより、研修内容は配属先の部門ごとに異なります。
最初に専門知識や専門的なツールの操作が必要な業務は座学で研修を行うケースもあり、営業など対人業務の場合はロールプレイング研修などもあります。また、年次の近い先輩社員がメンター(教育係)として日常業務をサポートする制度を取り入れている企業もあります。
新入社員研修の目的に到達する3つのポイント
最後に。新入社員研修の目的に沿ったプログラムを実施したが、今ひとつ効果が感じられないこともあるでしょう。それは新入社員が研修内容を〝自分事〟として咀嚼できていない可能性、つまり〝聞いて理解しただけ〟になっているのかもしれません。
限られた時間内に行う新入社員研修とはいえ、できるだけ講義だけではない実践型の研修を取り入れることがポイントとなります。
1. 座学だけでなく参加型・アウトプット型にする
2. コミュニケーションの機会を多く設ける
3. 自分事として具体的な活用法を意識させる
1. 座学だけでなく参加型・アウトプット型にする
講義だけの研修では、なかなか身につきません。例えば、社長の企業理念の講話を聴いてグループワークを行うなど、得た知識を自分の言葉でアウトプットする機会を設けるとより一層定着します。
新入社員がどのように研修に取り組んでいるか、またその発言や行動を見て、改めてその個性や適性から配属部署を見極めたり、どの先輩や上司の下に配属すると伸びそうかを判断したり、人事にとってもさまざまな参考になります。
2. コミュニケーションの機会を多く設ける
アウトプット型の研修同様、参加者同士が対話する、協力して課題を成し遂げるなどでコミュニケーションを取る機会を多く設け、人脈形成にも役立てます。同期とのグループワークをはじめ、上司や先輩とのケーススタディ、ロールプレイングなど実践的な研修でコミュニケーションを増やし、「話しやすい」「質問しやすい」関係性づくりを推進します。
最近の新入社員研修はオンライン研修や動画研修なども増えつつありますが、やはり交流の場が多いほど人間関係の構築には効果的です。良好な人間関係が深まるほど、社内の雰囲気にも慣れ、研修時の意見交換も活発になります。
3. 自分事として具体的な活用法を意識させる
研修を一方的な知識やスキルの習得の場にするのではなく、自分はこう考える、自分ならこう行動するといった、自ら考える機会を与えて研修目的の到達度をはかり、効果をチェックしましょう。習得度チェックなどのアンケートにまとめることで、自分が何を習得し、どう業務に活かしていくか、まだ習得できていない目標を明確にすることができるようになります。
人事にとっても次年度の研修に役立つ貴重なデータとなるでしょう。
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まとめ
新入社員研修は、初めて社会に出た新入社員にとってはキャリアの礎となる大事な研修です。
それが何も心に残らない残念な結果に終わってしまってはあまりに惜しいと思います。
「この会社に入社して本当に良かった」
「自社の製品・サービスは本当に素晴らしい」
「私も先輩たちのように生産性の高い社員になり会社の成長に貢献したい」
新入社員がわずかな期間に、この感覚全てを身につけるのは難しいかもしれません。しかし、組織を愛し、高いモチベーションと帰属意識を持った人材育成は、新入社員研修の内容次第でその大半が決定づけられるかもしれません。それだけに目的を明確にした新入社員研修が非常に大切です。
今後の新入社員研修を企画・運営するポイントとして、ぜひ参考にしてみてください。
新入社員研修に最適な研修とは? 目的設定、研修内容やカリキュラムの構築にお困りの際は、ぜひR09までお気軽にお問い合わせください。
1. 研修の目的を明確にし
2. 目的に沿ったプログラムを構築して
3. ポイントを押さえた新入社員研修を行うことが大切です。
1. 企業理念の浸透
2. 事業内容や組織の理解
3. 学生から社会人へのマインドセット
4. 社内の人脈形成
5. 社内ルール・コンプライアンスの徹底
6. 業務内容の理解
など、ほかにも必要があればプログラムに取り入れましょう。
◆新入社員研修の目的に到達する3つのポイント
1. 座学だけでなく参加型・アウトプット型にする
2. コミュニケーションの機会を多く設ける
3. 自分事として具体的な活用法を意識させる
を意識して、一方通行ではなく双方向に、自由に意見を交わし、新入社員それぞれの個性を引き出せる研修を意識してみましょう。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。