副業したいZ世代。企業はどう対応すべき?
「Z世代と他の世代では、理想とするキャリア設計に違いを感じる」
「Z世代は副業への意欲が強い気がしている」
「Z世代が副業に興味を持つ背景を知りたい」
このようにZ世代の副業を含めたキャリア設計について、より深く理解したいと考える人事担当者や現場担当者の方も多いのではないでしょうか。
これからのビジネスシーンの中心となるZ世代社員の採用や育成を効果的に進めるためには、Z世代社員の考え方や価値観を理解し、企業もそれにあわせて対応していく必要があります。
今回の記事では、Z世代の就業観や、Z世代が副業に興味を持つ理由、Z世代の就業観にあわせて採用や育成を進めるポイントについて解説していきます。
この記事をもとに Z世代が考える就業観やキャリア設計をよく理解し、自社の採用や育成に活かしていきましょう。
Z世代は「副業」を含めた、広い選択肢の就業観を持っている
Z世代は、終身雇用全盛期のように1社でキャリアを終えるというのが当たり前と考えておらず、自己を磨き、広い選択肢からキャリアを自由に設計していきたいと考える方が多いです。
まずは、Z世代の就業観について、一つ一つ紐解いて解説していきます。
Z世代で終身雇用を考える人材は少ない
多くのZ世代が考える就業観の1つとして、終身雇用を考えていないということが挙げられます。
松井証券株式会社が2021年に行った「初任給と理想的な働き方に関する世代別の実態調査」にて、「理想の働き方」に関して質問したところ、ミレニアル世代で「終身雇用」と回答したのは32.0%(2位)という結果に対し、Z世代は21.8%(3位)でした。
この結果から、他世代と比較しても、Z世代は終身雇用を考える人材が少ないことがわかります。
参照元:PRTIMES<「初任給」と「理想的な働き方」に関する世代別の実態を発表>コロナ世代(20年・21年入社)の初任給の使い道No.1は「貯蓄」!?(松井証券株式会社調べ)
Z世代に終身雇用を考える人材が少ない理由は大きく2つあります。
1つは、現代の経済状況が厳しいという理由です。
2019年にトヨタ自動車の豊田章男社長が、「終身雇用を守るのは難しい」という発言をしたことが話題となりました。
日本を代表する企業が、このようなメッセージを発していることから、終身雇用が現実として難しい状況であることがわかります。
もう1つの理由は、Z世代社員は会社に依存しない自由な働き方を望んでいるためです。
Z世代の大半は、会社での出世を一番に考えプライベートの時間の多くを捧げるより、自分らしくいられる時間を大切にして、ワークライフバランスのとれた働き方を望んでいます。
Z世代は、1つの会社に居続けることより、自分の能力を磨き、他の場所、他の方法でも生きていけるキャリアを設計したいと考える傾向が強いようです。
会社への帰属意識が薄いと見られる場面もある
Z世代の中で「会社に全てを捧げる」と考える方は少なく、多くの方が「自分らしく在ること」を価値観の軸として置いています。
そのため、「上司の言うことは絶対聞く」「会社のためにプライベートの時間も使う」といった昔ながらの悪しき風潮には拒否感を示します。
また、終身雇用という前提意識が薄いため、転職をキャリアの選択肢の1つと捉えている方も多くいます。
ですから、今より良い条件、成長できる環境があれば、転職へと積極的に行動へ移すでしょう。
このような特徴は、1つの見方では「会社への帰属意識が薄い」とも捉えられますが、時代にあった合理的な考え方でもあるため、否定することはできません。
「会社への帰属意識が薄い」と悲観するのでなく、価値観を受け入れたうえで、どうしたらZ世代社員が働きやすい環境となるかを考えることが大切です。
副業、転職、起業など自由な選択肢を持ちたいと考える
Z世代には、企業に勤めることに一点集中するより、副業、転職、起業などの幅広い選択肢を自由に持ちたいと思う方が多いようです。
前述のアンケート結果からも、半数以上の方が副業をしたいと考えていることが確認できます。
リスクを分散するために収入の柱を作ることや、合理的に理想のキャリア形成をすることなど、Z世代は今までの世代の「常識」には捉われず現代にあった最適な方法を選択していることが伺えます。
Z世代が副業に強い意欲を示す背景
続いて、Z世代が副業に強い意欲を示す背景について解説いたします。
Z世代が副業へ意欲を示すのには、前述したようなキャリア設計や、仕事への価値観、育ってきた環境が関係しています。
Z世代は不況を経験して育っているため、リスク管理意識が強い
Z世代が1つの会社の就業だけに捉われず、副業や転職を選択肢として持つ理由には、Z世代が育ってきた環境も関係しています。
Z世代は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災といった、世界的影響の強いテロや経済ショック、災害を経験して育っています。
当時の親や社会の様子を見て育っているため、リスク管理に対する意識が強いといわれています。
1つの企業だけに依存することのリスクも過去の状況から学んでいるため、副業で収入の柱を分散したいという意識へ繋がることが考察できます。
終身雇用に頼ろうとはしていない
前述しているように、Z世代で終身雇用に頼ろうとする人材は少ないことがわかっています。
終身雇用制度の崩壊を前にして、自分の力を磨き選択肢を広げていきたいという考えを強く持っているようです。
そのため、副業や転職といった選択肢を常に持っておき、時代にあわせて最適化ができるキャリア形成を目指すZ世代が多いということを認識しておきましょう。
純粋に収入を増やしたいと考えている
Z世代が副業に意欲を持つ背景には、「純粋に収入を増やしたい」という思いもあります。
株式会社学情が行った「20代の仕事観をひも解くためのアンケート」では、副業をする理由として85.3%が「収入を増やしたいため」と回答しています。
コロナ禍でボーナス支給がされないというケースが増えたことも、Z世代の副業への意欲を促進させるきっかけとなりました。
Z世代の9割が副業をしたいと考えている
株式会社学情が行った「20代の仕事観をひも解くためのアンケート」では、Z世代の9割が副業をしたいと考えていることが確認できています。
これまで解説したように、リスク管理の観点や、会社に依存せず自分の力でキャリアを築いていくことを目的に、副業を積極的に考えているZ世代が多いことがわかります。
新型コロナウイルスの影響により、更にZ世代の副業への意欲は増加している
2019年に発生した新型コロナウイルスは、職場環境や就業観にも大きな影響を与えました。
働き方に関連する様々な環境や価値観が変化したことにより、Z世代の副業への意欲にも影響を与えました。
2021年3月に松井証券株式会社が行った、「初任給と理想的な働き方に関する世代別の実態調査」から、Z世代の意識の変化を確認できます。
参照元:PRTIMES<「初任給」と「理想的な働き方」に関する世代別の実態を発表>コロナ世代(20年・21年入社)の初任給の使い道No.1は「貯蓄」!?(松井証券株式会社調べ)
コロナ禍を経て、Z世代の半数以上に働き方の意識に変化があった
「コロナ禍を経て、働き方の意識に変化はあったか」という質問に対して、Z世代の51.6%が「変化があった」、「どちららかといえばある」という回答をしています。
同じ質問をミレニアル世代にした結果では、49.5%が「変化があった」と回答しているため、コロナ禍を通して将来のキャリア設計を考えた人が、Z世代は他世代より多いことがわかります。
Z世代が一番理想とする働き方は「副業」から収入を得ること
「理想的な働き方」に関する質問に対して、Z世代の回答は、1位(54.3%)で「副業からも収入を得る」という結果が出ています。
本業のみでなく収入の柱を分散しリスクヘッジしたいという考えが伺えます。
副業で得たい金額の理想は本業に加えて+10万円
理想の働き方として「副業からも収入を得る」と回答した人を対象に、副業から得る理想的な金額を質問した結果では、「本業に加えて+10万円」という回答が中央値となりました。
また、実際に副業で収入を得るために取り組んでいることとしては、1位が41.4%で「資産形成/資産運用」、2位が38.6%「副業の情報収集」、3位が28.1%「空き時間の捻出」、4位が24.7%「資格取得/勉強」となりました。
貯蓄や投資といった資産運用や、実際に副業をするための準備に取り組んでいる方も多くいることがわかります。
Z世代には「独立」への意欲を持つ方も多い
理想的な働き方に関する質問に対してのZ世代の回答では、2位で26.6%の方が「お金を貯めて独立したい」と回答しています。
ミレニアル世代の同質問の結果では、「お金を貯めて独立」という回答は4位の17.5%に留まっているため、Z世代の方がより強く独立意欲を持っていることがわかります。
この結果からも、Z世代は副業や起業など、自分らしさを活かして働いていける環境を目指す傾向にあると考察できます。
Z世代の就業観にあわせて採用・育成を進める3つのポイント
これまでZ世代の就業観や副業への考えについて解説いたしました。
最後にZ世代を理解したうえで、企業としてはどのような対応をとるべきかを解説していきます。
1. 副業の容認を検討する
Z世代の9割は副業をしたいと考えています。
そのため、もし自社で副業を禁じている場合、Z世代社員の採用や定着には大きなハンデを負うことになります。
2021年4月20日~5月10日に労務行政研究所が行った「副業・兼業への対応アンケート」によると、副業を容認している企業が35.4%、副業を禁止している企業 が49.3%という結果が出ています。
政府が2018年に副業を推奨する宣言をしましたが、未だ多くの企業が副業禁止としている事実があります。
副業を容認することで、「社員の労働量の低下」や「情報や技術の流出リスク」を懸念する企業もあります。
しかし、今後は副業禁止によるZ世代の離職というデメリットの方がより大きくなるという可能性も予想されます。
副業を禁止している企業は、今一度メリット・デメリットを整理したうえで、改めて副業容認の検討をおすすめします。
2. 「会社に全てを捧げて欲しい」という前提認識を持たない
Z世代には、「プライベートの時間を犠牲にしてでも働く」という価値観を持つ方は少ないでしょう。
多くの方がワークライフバランスのとれた働き方を望んでいるからです。
そのため、企業がZ世代に対してプライベートにも影響するような強い要望を伝えれば、Z世代が離れてしまうリスクは高まります。
会社への帰属意識を問題視する意見もありますが、一歩引いて客観的視点で考えてみると、Z世代の対応は終身雇用の難しいこの時代の最適解であるとも考えられます。
企業には、時代にあった対応が求められます。
3. Z世代の考えを尊重し、柔軟に対応していく
ここまで解説した内容からもZ世代と他の世代では、就業観に大きな違いがあることが見えてきました。
「仕事に生活の大半の時間を注いでも出世する」「給料を上げるために、躍起になって働く」
従来のこのような感覚は少しずつ薄れてきて、Z世代は自分らしく働くことや、自分らしく生きることに価値観を見出しています。
このように聞くと、「Z世代は仕事への意欲が低い」と思う方もいるかもしれませんが、Z世代は企業や社会へ貢献したいという気持ちも強く持っています。
一方的にZ世代に期待できないと判断するのではなく、Z世代の考えを理解したうえで、柔軟に価値観を尊重した対応をおこなっていくことが大切です。
まとめ
今回は、Z世代が副業へ意欲を示す背景や、Z世代の就業観にあわせて採用・育成を進めるポイントについて解説いたしました。
これから活躍していくZ世代と共に働くうえで、自社の副業への理解もより重要になってきます。
Z世代社員の価値観や考えを理解し、自社の体制を整備していくことで、時代にあった企業の形へ変革していきましょう。
・Z世代で終身雇用を考える人材は少ない
・会社への帰属意識が薄いと見られる場面もある
・副業、転職、起業など自由な選択肢を持ちたいと考える
◆Z世代が副業に強い意欲を示す背景
・Z世代は不況を経験して育っているため、リスク管理意識が強い
・終身雇用に頼ろうとはしていない
・純粋に収入を増やしたいと考えている
・Z世代の9割が副業をしたいと考えている
◆新型コロナウイルスの影響により、更にZ世代の副業への意欲は増加している
・コロナ禍を経て、Z世代の半数以上に働き方の意識に変化があった
・Z世代が一番理想とする働き方は「副業」から収入を得ること
・副業で得たい金額の理想は本業に加えて+10万円
・Z世代には「独立」への意欲を持つ方も多い
◆Z世代の就業観にあわせて採用・育成を進める3つのポイント
1. 副業の容認を検討する
2. 「会社に全てを捧げて欲しい」という前提認識を持たない
3. Z世代の考えを尊重し、柔軟に対応していく
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。