【具体例あり】採用リードタイムとは?|平均と改善のための5つの施策

公開日: 2025年06月25日


【具体例あり】採用リードタイムとは?|平均と改善のための5つの施策

最近の採用市場は売り手市場で、人材獲得競争は年々激しくなっています。

このような状況下では、応募から採用決定までのスピード(採用リードタイム)が採用成功の鍵を握ります。

本記事では、新卒採用と中途採用の違いにも触れつつ、「採用リードタイム」の基本から適切な目安、長引くことによるリスク、リードタイムを短縮する具体的な5つの施策、さらには継続的な管理・改善方法までを解説します。

採用に関わる方はぜひ参考にしてください。

1. 採用リードタイムとは

採用リードタイムの定義

採用リードタイムとは、一般的に候補者との最初の接触から内定承諾までに要する時間のことです。

この期間には書類選考、面接(複数回に及ぶこともあります)、適性検査、内定通知と承諾といった一連の選考プロセスがすべて含まれます。

例えば、「応募から内定まで1ヶ月」という場合、応募受付から最終面接・内定承諾まで合計30日程度かかったことを意味します。

企業にとって採用リードタイムを適切に管理することは、効率的かつタイムリーに人材を確保する上で非常に重要な指標となります。

新卒採用と中途採用のリードタイムの違い

新卒採用と中途採用では、リードタイムの長さやプロセスに違いがあります。それぞれの特性を理解しておきましょう。

新卒採用の場合、学生の卒業時期に合わせた長期的な計画に基づいて行われるため、選考開始から内定までのリードタイムが比較的長くなる傾向があります。

エントリーシート提出、筆記試験やグループディスカッション、複数回の面接、内定者フォローなど段階が多く、内定出しまで数ヶ月かかるケースも少なくありません

企業は学生の卒業時期に合わせて余裕をもってプロセスを設計しますが、その分スケジュール管理が重要です。

中途採用の場合即戦力人材をできるだけ早く確保したいケースが多く、より短期間での採用が求められるため、リードタイムが比較的短くなる傾向があります。

応募から内定までのフローを迅速に進める企業が多く、数週間で選考が完了する場合が多いです。中途採用は書類選考と1〜2回の面接で決まることも多く、現職中の候補者が在職中に転職活動をする場合は、スケジュール調整の迅速さが特に重要です。

長引くと他社のオファーに流れてしまうリスクが高いため、中途ではスピード感が一層求められます。

2. 適切なリードタイムの目安

では具体的に、どれくらいのリードタイムが「適切」と考えられるのでしょうか。新卒・中途それぞれの目安を見ていきます。企業規模や業界によっても差はありますが、自社の採用計画の参考値として把握しておきましょう。

新卒採用の目安

新卒採用ではエントリーから内定までおよそ2ヶ月とする企業が多いとされています。

これはエントリー受付から最終面接・内定承諾までの選考プロセスが2ヶ月程度で完結するイメージです。実際には、大学生の就職活動スケジュールに合わせて3〜4月頃に内定を出すケースが多いため、企業の採用活動自体は、前年の夏頃から選考が始まり数ヶ月に及ぶこともあります。しかし、個々の学生について見ると、エントリーしてから内定確定まで2ヶ月程度で進める企業が多いようです。

実際に、エントリー(セミナー参加)から内定までの期間についての調査では、業界によって差はありますが、平均61.2日という結果がでています。

参考:キャリタス就活2017 学生モニター 内定までの日数等に関する調査

中途採用の目安

中途採用では、応募から内定まで1ヶ月以内で完了するケースが多く見られます。

即戦力の採用では、求人票公開からできるだけ早期に書類選考・面接を実施し、スピーディーに内定出しまで進める企業が増えています。

実際に、中途採用の応募から内定までの期間の調査でも「2週間〜1ヶ月未満」が39.2%、「1-2週間未満」が17.2%、「1週間未満」が7.7%で、1ヶ月未満の企業が約6割強となっています。

参考:マイナビ 中途採用状況調査2025年版

優秀な中途人材を逃さないためには1ヶ月を待たずに意思決定するのがトレンドです。中途採用では求職者が複数の企業選考を並行していることも多いため、他社に先んじて内定を出せるよう迅速な選考スケジュールを組むことが重要です。

3. リードタイム延長が引き起こすリスク

採用リードタイムが長引いてしまうと、企業側にはさまざまなリスクが生じます。ここでは主なリスクを4つ解説します。

内定辞退率・離脱率の上昇

リードタイムが長い最大のリスクは、応募者の離脱(選考辞退・内定辞退)が増加することです。

選考に時間がかかりすぎると、候補者は途中で熱意が冷めて辞退してしまったり、他社の選考で先に内定が出てしまいそちらに流れてしまうケースが発生します。特に転職希望者や優秀な人材ほど複数企業を並行して応募しているため、スピードの遅い企業は後手に回りがちです。

実際、マンパワーグループ株式会社が行った調査では「リードタイムの長さが原因で応募者から辞退された経験がある」と回答した企業が78.7%と、8割弱にも上りました。

参考:内定までのリードタイムが原因で、応募者に辞退された割合は8割超 人事担当者に聞いた「選考が長引く理由」とは?

このように、選考の長期化は選考離脱率・内定辞退率を高め、人材獲得のチャンスを大きく損ねるリスクがあります。逆に言えば、リードタイムを短縮し迅速に内定提示まで進められれば、それだけ優秀な人材の取りこぼしを防ぎ、内定承諾率を高められる可能性が高まります。

候補者の企業イメージ悪化

選考プロセスが必要以上に長引くことは、候補者から見た企業イメージの悪化にもつながりかねません。連絡の遅延や意思決定の遅さは、応募者に「この会社は対応が遅い」「社内調整に時間がかかって非効率なのではないか」という印象を与えてしまいます。

特にベンチャー・中小企業においては、スピード感や成長性が魅力の一つである場合も多いため、採用プロセスにおける遅延は候補者の熱意を冷ましてしまう可能性が高いです。

候補者から「対応が迅速で誠実な会社だ」という良い評価を得るためにも、選考中のコミュニケーションやプロセス進行はスピーディーかつ丁寧に行う必要があります。

採用コストの増大(人件費・求人掲載費用)

リードタイムが長くなるほど、採用にかかる直接・間接的なコストも増大するリスクがあります。

採用活動が長期化すれば、その分だけ面接調整や候補者フォローに割く人件費がかさんでしまいます。また、求人広告の掲載期間が延びれば、媒体掲載費用も追加で発生します。さらに、必要な人材の充足が遅れることで現場の生産性が落ち、機会損失によるコストが発生する可能性もあります。

例えば、中途採用において、新規プロジェクトの立ち上げに必要な人材の入社が遅れれば、そのプロジェクトの開始が遅延し機会損失となります。

このように、採用リードタイムの長期化は目に見える採用費用だけでなく、見えにくい事業コストも増大させる恐れがあるのです。

4. リードタイムを短縮する5つの施策

以上のようなリードタイム長期化のリスクを踏まえ、ここからは採用リードタイムを短縮する具体的な施策を5つ紹介します

「自社の選考に時間がかかっている原因は何か?」を振り返りつつ、実施できそうな改善策から取り入れてみましょう。

1. 選考フローの最適化

まず基本となるのは、採用選考フロー自体を見直し最適化することです。必要以上に複雑だったり冗長になっているプロセスを簡素化し、最短ルートで選考を完了できる設計に変更します。

具体的には、効果が薄いと感じられる選考ステップがあれば思い切って削減を検討します。例えば、面接回数が多すぎる場合には1〜2回に減らす、筆記試験や適性検査を省略する、複数の選考工程を1日でまとめて実施する「1Day選考会」を開催する等です。実際、最近では選考プロセスを1日で完結させる企業や、一次面接と最終面接を同日に行うケースも増えています。

また、各面接の間隔が空きすぎていると感じたら選考スケジュールを詰める工夫も重要です。候補者に合わせてゆっくり日程を組むより、可能な限り連続した日程で短期間に集中して実施した方が双方にとって効率的です。

ただし短縮のあまり選考の質が落ちてしまっては本末転倒なので、見極め精度とスピードのバランスを意識しながらフロー設計を見直しましょう。

2. 日程調整の効率化

面接日程の調整に時間がかかっている場合、そこを効率化するだけでも大幅なリードタイム短縮につながります。

例えば、候補者と面接官のスケジュール調整で往復の連絡に時間がかかっているなら、手法を改善しましょう。まず、あらかじめ面接可能な日時を複数設定して提示するようにします。候補者に候補日時を尋ねる際、漠然と「ご都合の良い日を教えてください」ではなく、「例:◯月◯日~◯日の○時〜○時で調整可能です」と具体的な候補枠を示すと調整がスムーズです。また、面接官側の都合も事前にブロックしておき、予め確保した枠に候補者を当てはめていく方式にすると日程調整の手戻りが減ります。

スケジュール調整にはメールや電話の代わりに調整専用ツールを使うのも有効です。Googleカレンダー連携や自動リマインド機能を持つツールを活用すれば、煩雑な日程調整の手間を削減できます。

このように、日程調整を効率化して待ち時間を圧縮することで、結果的にリードタイムを短縮できます。

3. 評価プロセスの高速化

候補者の評価・選考にかかる時間そのものを短縮することも重要です。

ポイントは選考基準の明確化迅速な意思決定です。まず、採用チーム内で「求める人物像」や「合否判断基準」を具体的に擦り合わせておきます。選考基準が曖昧なままだと各面接官の判断がブレてしまい、追加面接を重ねたり判断に迷い時間がかかってしまいます。

例えば「必須スキル・経験」「人物面で重視する要素」を事前にリストアップし、短時間で見極められる質問項目を準備しておくとよいでしょう。評価ポイントが明確になれば短時間で判断しやすくなり、面接回数の削減にもつながります。

次に、各選考ステップ終了後の合否決定をできるだけ速やかに行います。面接後に担当者間で意見交換や評価集約を行っていると日数が経ってしまうため、面接直後に即フィードバックを共有しその日のうちに合否判断を下すようなスピード感が理想です。それが難しい場合でも、社内で「一次面接結果は翌日までに連絡」「最終面接後◯日以内に内定可否決定」など明確な期限を設定しましょう

また候補者への連絡も迅速に行います。こまめで丁寧なフィードバック連絡は候補者の意思決定を早める効果もあります。合否連絡が遅いと候補者の気持ちが冷めたり、他社に決まってしまいやすいため、良い結果も悪い結果もできるだけ早く伝える方が良いでしょう。

評価プロセス全体を通じて、「迷ったらすぐ集まり判断する」「候補者対応は迅速に」といったカルチャーを育てることで、選考スピードを格段に上げることができます。

4. ATS(採用管理システム)の導入

限られた人事リソースで効率良く採用業務を進めるには、ATS(採用管理システム)の活用も効果的です。ATSを導入することで、候補者情報や応募経路、選考の進捗状況などを一元管理でき、煩雑な採用事務作業を省力化できます。

例えば、メールでのやり取りやスプレッドシートでの管理をATSに置き換えれば、求人への応募者のデータが自動で蓄積され、各選考状況がひと目で分かるようになります。面接日程の調整メール送信やリマインド、候補者へのステータス通知などもシステム上でテンプレート送信するだけで完了し、手作業のミスや抜け漏れ防止にもつながります。

ツールによっては応募者の絞り込み(検索・フィルタリング)機能や、他の求人媒体との連携機能を備えたものもあり、母集団形成から選考までの時間短縮に寄与します。近年は低コストで導入できるクラウド型ATSも増えており、採用に予算をかけられないベンチャーや中小企業でも気軽に導入できるようになっています。

自社に合ったATSを導入することで、採用業務の効率化とリードタイム短縮の両方を実現できるでしょう。

5. リマインド・内部調整の仕組み化

採用プロセス全体を止まりなく前に進めるため、社内外の関係者へのリマインド徹底と調整フローの仕組み化も重要です。

例えば、候補者への面接日程リマインド(前日確認メールなど)をルール化すれば当日のキャンセル防止になり、不必要な再調整を減らせます。また、面接官や関係部署に対してもスケジュール確認や評価入力のリマインドを適宜送ることで、対応遅れを防止できます。

これらはATSの自動メール機能があれば活用し、ATSを導入しない場合でも予めテンプレートを用意して定期的に送信するだけでも効果があります。「言わなくてもやってくれるだろう」ではなく、システム的・仕組み的に促すことで確実に動かす工夫が重要です。

さらに、採用に関わる社内体制の整備もリードタイム短縮には欠かせません。人事担当者が一人で業務を抱え込み、対応が遅くなってしまう場合は、必要に応じて採用チーム要員を増やしたり、現場面接官に対しても協力を仰ぎやすい体制を作りましょう。

具体的には、現場部門と人事との連携を強化し迅速な意思決定ができる仕組みを整えることが大切です。例えば、最終面接の合否判断に現場責任者の承認が必要なら、その場で判断できるように権限委譲したり、承認フローを簡素化するなどの対応が考えられます。経営層の決裁に時間がかかる場合は、採用に関する意思決定フローを見直し事前に合意形成しておくことでスピードアップできないか検討します。小規模企業では社長の裁量で即日内定を出すケースもありますし、大企業でも内定承認の稟議を迅速化する仕組みを導入するケースがあります。

社内のどこで時間がかかっているかを洗い出し、その部分を仕組みで解決することが重要です。リマインドと内部調整の仕組み化によって、「誰かの対応待ち」でプロセスが止まる時間を減らしていきましょう。

5. 継続的に管理・改善する方法

リードタイムを短縮する施策を講じたあとは、その効果を維持しさらに向上させるために継続的な管理・改善を行いましょう。

一度短縮に成功しても、放置すれば再びプロセスが緩みリードタイムが延びてしまう恐れがあります。ここでは、リードタイムを常に最適化するための管理と改善のポイントを紹介します。

リードタイムをリアルタイムで可視化する

まず、自社の採用プロセスの進捗やリードタイムを定量的な数値として可視化することが重要です。

具体的には、「応募から内定までの日数」を平均値や中央値で計測し、ダッシュボードやレポートで常時モニタリングできる状態を作ります。昨今はATS上で基本的な数値を出せるものもありますが、さらにBIツール(業務データ可視化ツール)を用いてダッシュボードを構築すれば、複数求人や複数部門にまたがる採用状況も一元的にリアルタイムで把握が可能です。

例えば「現在応募◯名、◯名が一次面接通過、内定承諾◯名、平均リードタイム◯日」といった指標をグラフや数値で可視化しておけば、採用状況の遅れやボトルネックにすぐ気付けます。数値を可視化することによって、採用プロセス上の課題が明確になるのです。

まずは「応募から内定までの日数」を主要な数値としつつ、各工程の所要日数(書類選考日数、面接調整日数など)も計測・可視化すると良いでしょう。リアルタイムの進捗把握により、遅れが生じても早期に軌道修正の手を打てるようになります。

定期的にデータを振り返り分析する

データを可視化したら、定期的(例:月次や四半期)に採用活動を振り返り、数字を分析する習慣をつけましょう。

例えば、「書類選考から一次面接まで平均7日かかっているが遅くはないか」「二次面接での辞退が多いが、二次面接までの期間は問題ないか」など、データに基づいて課題を発見します。離脱理由は、候補者へのアンケートやリクルーターからのフィードバック情報を集めることで把握できますし、社内での不採用理由も分析すれば選考基準の見直しにつながるでしょう。こうした振り返りを採用チームの定例会議で共有し、問題点への対応策を検討します。

また、選考フロー全体の所要日数が前期間と比べてどう変化したかを確認し、改善策の効果検証も行います。例えば、前月に面接回数を減らす施策を導入したなら、「リードタイムが◯日短縮された」「離脱率は変わらないか?」といった視点で結果を評価します。

定期的にデータに基づいた振り返りを行うことで、採用プロセスの改善点が明確になり、次の手を打ちやすくなります。数字を追うことで、担当者の主観では気付かなかった課題も客観的に浮き彫りになるでしょう。

ベンチマークとの比較で目標値を設定する

自社の採用リードタイムを改善する際には、業界や同規模他社のベンチマークと比較して目標値を設定することも有効です。

他社事例や調査データを参考に、「一般的に◯◯業界では応募から内定まで△週間程度が標準」「従業員100名規模の企業では1ヶ月以内が◯割」といった情報を集めてみましょう。

例えば、前述のデータでは新卒採用のリードタイムは平均61.2日となっているため、自社のリードタイムがこれを大きく上回るようであれば、まずは「61日以内に収める」ことを目標に掲げるのがよいでしょう。中途採用中心であれば「1ヶ月以内」の短期決着を目指すなど、採用ターゲットやポジションに応じた目標リードタイムを設定します。

ベンチマークとの比較は社内関係者への説得材料にもなります。「競合他社はこれだけ早い」「業界平均より遅れている」と数値で示すことで、経営陣や現場面接官にも危機感と目標意識を共有しやすくなります。

設定した目標値に向けて進捗をモニタリングし、達成できていない場合はどこに遅れの原因があるかを再度分析・対策していく流れを作りましょう。

6. まとめ

採用リードタイムは、企業の採用力を左右する重要な指標です。「応募から内定までの時間」を短縮することは、優秀な人材を競合より先に確保し、不必要なコストや機会損失を防ぐ上で欠かせません。

継続的な改善によりリードタイムを適切に管理し、効率的かつ効果的な採用活動で貴社の成長を加速させて行きましょう。

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この記事の監修者:長井 亮

1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。