採用基準の決め方とは?|作り方6ステップと評価項目例をわかりやすく解説
公開日: 2025年06月19日 | 最終更新日: 2026年01月26日

採用活動において 「採用基準」 を明確に定めることは、企業規模や業種を問わず非常に重要です。曖昧なままでは、面接官ごとに評価がブレやすく、採用ミスマッチや早期離職につながりやすくなります。
一方で、何から決めればよいのか分からず、採用基準づくりに悩んでいる採用担当者も少なくありません。
本記事では、採用基準の基本的な考え方から、決め方の具体的な手順、評価項目の例までをわかりやすく解説します。
採用基準とは?決める前に知っておくべき基本
採用基準を正しく理解していないまま「決め方」だけを真似しても、実務ではうまく機能しません。
まずは、採用基準の役割と重要性を整理し、なぜ明確にする必要があるのかを押さえておきましょう。
採用基準とは「候補者を評価する共通のものさし」
採用基準とは、候補者を評価・判断するための共通の判断軸です。
学歴や職歴といった表面的な条件だけでなく、「自社で活躍できる人材かどうか」を見極めるための基準を指します。
採用基準があることで、
- どのポイントを重視して評価するのか
- どこまで満たしていれば採用と判断するのか
といった判断を、面接官全員が同じ基準で行えるようになります。
採用基準は、採否を決めるためのチェックリストではなく、採用判断のブレを防ぐための設計図と考えるとよいでしょう。
採用基準が曖昧なまま起こりやすい問題
採用基準が曖昧なまま採用活動を進めると、さまざまな問題が起こりやすくなります。
代表的なのが、面接官ごとの評価のバラつきです。
ある面接官は「ポテンシャルが高い」と評価し、別の面接官は「経験不足」と判断するなど、評価軸が揃わなくなります。
その結果、
- 合否判断の理由を言語化できない/一貫性がなくなる
- 入社後にミスマッチが起こりやすくなる
といった状態に陥りやすくなります。
特に中途採用では、即戦力を期待して採用したものの、現場で求める役割とズレが生じ、早期離職につながるケースも少なくありません。
採用基準を決めるメリット
採用基準は、形だけ作っても意味がありません。
採用基準を決めるメリットを正しく理解しておくことで、形式的な基準づくりを避け、実務で機能する設計ができるようになります。
面接官ごとの評価ブレを防止
採用活動でよくある課題の一つが、面接官ごとの評価ブレです。
同じ候補者に対しても、面接官によって評価が大きく分かれるケースは少なくありません。
これは、評価の基準や重視するポイントが共有されていないことが原因です。
採用基準を明確にしておくことで、「何を見て、どう判断するのか」という評価軸が揃い、属人的な判断を防ぐことができます。
評価ブレが減ることで、採否判断の一貫性が高まり、採用活動全体の納得感も向上します。
採用ミスマッチ・早期離職を防ぐため
採用基準が曖昧な場合、スキルや人柄が現場の期待と合わない人材を採用してしまう可能性が高まります。
その結果、入社後に「思っていた仕事と違う」「求められる役割が合わない」といったミスマッチが起こりやすくなります。
実際、新卒採用後に 82.5%の企業が「採用のミスマッチ」を経験しており、その結果として57.9%のケースで採用者が早期退職したというデータも報告されています。
参考:マンパワーグループ 新卒採用におけるミスマッチは8割超!ミスマッチによる悪影響の1位は採用した社員の早期退職
採用基準を明確にすることで、入社後に求められる役割や行動をあらかじめ言語化でき、候補者との認識のズレを減らすことができます。
採用活動の効率と精度を高めるため
採用基準が定まっていないと、選考のたびに判断に迷い、無駄な時間や工数が発生しやすくなります。
面接ごとに評価軸が揺れることで、再面接や判断のやり直しが必要になることもあります。
一方で、採用基準が明確であれば、
- 書類選考や面接の判断がスムーズになる
- 不要な選考工数を削減できる
- 採用活動全体のスピードが上がる
といった効果が期待できます。
採用基準の決め方6ステップ
採用基準を設定する際は、経営方針から現場の声までをバランス良く反映し、具体的な評価項目に落とし込むことがポイントです。
ここでは、採用基準設定の手順を5つのステップに分けて紹介します。
ステップ1:経営戦略・採用目的を明確化
まず最初に、自社の経営戦略や採用の目的を明確にすることから始めます。
自社の掲げる中長期ビジョンや事業計画の達成に必要な人材像を洗い出し、「会社としてどんな戦力が欲しいのか」を定義します。
採用の目的(例:新規事業の立ち上げ、人員不足の補充、若手人材の確保など)によって求める人物像は変わるため、経営層の意図を踏まえたうえで基準の大枠を設定します。
例えば、事業拡大フェーズの企業では「変化への柔軟性」や「将来リーダーになり得る資質」を重視するケースが多くあります。逆に安定期の企業であれば「継続力」や「専門性の深さ」などが求められるかもしれません。
このように事業フェーズや戦略に即した採用要件を定めることで、将来を見据えた一貫性ある人材採用が可能となります。経営戦略と採用基準を紐づけることが、ブレない基準設定の出発点となります。
ステップ2:現場ヒアリングで業務と要件を整理
次に、採用予定部署の現場から徹底的にヒアリングを行い、業務内容と必要要件を洗い出します。
実際にそのポジションで求められるスキルや能力は現場の担当者が最も熟知しています。一方で経営者側が考える理想像とはズレがある場合も多いため、人事・現場・経営陣の三者で求める人材像のすり合わせを行うことが重要です。
ヒアリングの際は、「コミュニケーション能力がある人」など抽象的な表現で終わらせず、人物像・必須スキル・経験年数や資格・志向性といった項目をできるだけ具体的に定義するのがポイントです。
例えば「コミュニケーション能力」が必要と言っても、社内調整が得意なタイプなのか、顧客対応での傾聴力なのかで求める人物像は異なります。ただ漠然と「コミュニケーション能力が高い人」とするのではなく、「部門横断プロジェクトを推進できる調整力・発信力を持った人」など、現場のニーズを反映した具体像に落とし込みましょう。
また、現場ヒアリングでは現在組織が直面している課題も重要な手がかりです。
例えば「マネジメント層の人材不足」や「若手の定着率低下」といった課題がある場合、それを解決するヒントが採用段階の見極め軸に隠れています。
現場の課題と、あるべき人材像のギャップを分析し、「今回の採用で補いたい要素は何か」を明確にしましょう。
現場責任者へのヒアリングとあわせて、現在活躍している社員の行動特性(コンピテンシー)を分析することで、実態に即した人物要件を導き出すことができます。
活躍している社員に共通する思考・行動パターンを言語化すれば、「活躍人材の共通項」を基にした、より実効性のある採用基準を設計できます。
ステップ3:評価項目の設定
ステップ1・2で洗い出した要件を基に、評価項目(選考基準となる具体的な観点)をリストアップします。
評価項目は大きく定量要素(例:実績、スキルレベル、資格、経験年数など)と 定性要素(例:価値観や仕事に対する姿勢、行動特性、ポテンシャルなど)に分けて検討すると漏れがありません。
即戦力採用であれば業績やスキルといった定量面が重視されますが、企業文化との適合性や成長意欲 といった定性面を無視すると、「スキルは高いが社風に合わず早期離職してしまう」というリスクがあります。そのため知識・スキル面だけでなく、人柄や行動特性面も含めて、自社独自の評価項目セットを作成することが大切です。
一般的には「人格的要素(価値観・動機)」「行動特性(コンピテンシー)」「知識・スキル」の3つが採用基準の三要素とされています。自社の採用目的に照らし、この3要素をバランス良く網羅する評価項目群を設計しましょう。
ステップ4:評価項目の優先順位付け
評価項目が出揃ったら、各項目に優先順位を付け、必須度合いを明確に定めます。
すべての条件を完璧に満たす候補者はなかなか存在しないため、「絶対に欠かせない条件」、「できれば満たしていてほしい条件」、「無くてもよい条件(極端な場合は不採用となる要因)」に分ける作業が必要です。
具体的には次の3つに分類します。
- 必須条件:
その職務を遂行する上で絶対に必要な要件。これを欠く人材は採用できない最低ラインの基準です(例:営業職における普通自動車免許、専門資格、夜勤シフト対応可能なことなど)。 - 加点条件(希望条件):
持っていれば望ましいが、入社後の研修や経験で習得可能な要素。合否の決定打にはしないが、評価の際プラスに働くポイントです(例:英語力が高い、同業界でのインターン経験があるなど)。 - NG条件:
あると逆に支障をきたす要素。いわゆる不採用に直結する要因もここに該当します(例:明らかな価値観の不一致、勤怠面の重大な懸念など)。
この分類を社内に共有することで、合否判断の軸が一層クリアになります。
評価項目ごとの優先度を可視化しておけば、選考過程で迷った際にも「どの項目を重視すべきか」がブレにくくなるでしょう。
例えば、必須条件を満たさない候補者はどれほど他の項目が優秀でも見送る、一方で加点条件が弱いが必須は満たしている候補者は将来性を考慮して採用を検討する、というように判断基準が明確になります。
ステップ5:選考プロセスへの落とし込み
続いて、設定した採用基準を具体的な選考プロセスに組み込みます。
どんなに明確な基準を作っても、現場の面接や書類選考で活用できなければ効果を発揮しません。ステップ3で定めた評価項目ごとに、「どの選考フェーズで・どのように評価するか」を設計しましょう。
まず書類選考では、職務経歴書・履歴書の情報から定量要件を満たしているかを確認します(例:「○○資格保有」「関連職種で〇年以上の経験」などの必須条件をチェック)。
定性的な部分(価値観や志向性)はエントリーシートの自己PRや志望動機を通じてある程度確認します。
例えば、「学生時代に力を入れたこと」などの設問回答からチャレンジ精神や失敗から学ぶ姿勢を読み取り、自社の求める人物像との合致度を見るといった具合です。性格検査や能力検査を併用することで、エントリーシート上では掴みきれない候補者の行動特性も、客観的データで補完できます。
次に面接プロセスでは、各評価項目に沿った質問や試験を準備し、基準に基づいて候補者を評価します。面接官任せにするのではなく、予め「この資質を測るにはどんな質問をするか」「どのような回答なら高評価か」を想定して面接項目を構成しましょう。
面接評価シートを用意し、各評価項目ごとに得点や所見を書き込めるようにしておくと便利です。評価シートには項目ごとの評価基準を明示し、全面接官に共有しておきます。これにより候補者に対する評価の物差しが統一され、誰が面接しても大きくブレない客観的な判断が可能になります。
事前に評価基準が共有されていれば、面接官ごとに着目点がズレて「Aさんは高評価だけどBさんは低評価」という事態を減らせるはずです。
さらに、評価の難しい抽象的な資質は具体的な指標に落とし込む工夫をします。
例えば「リーダーシップ」が評価項目なら、「チームで目標を達成した経験はあるか」「周囲を巻き込む行動を取れたか」といった具体的エピソードを質問し、その受け答えに基づいて評価するようにします。抽象的な価値観や性格面も、具体的な行動例や状況設定を用いて質問することで客観的に判断しやすくなります。
「自社の文化に合うか」を見る場合でも、「当社の理念に共感した点は何か」など問いかけ、候補者の価値観や思考を具体的に引き出して評価するようにしましょう。
こうした選考設計の工夫によって、採用基準と選考方法を連動させ、設定した採用基準を現実の面接・選考で活きる形にします。
ステップ6:社内共有と運用整備
最後のステップは、設定した採用基準を社内で共有し、継続的に運用できる体制を整えることです。
採用基準は人事部だけが知っていても不十分で、実際に評価を行う面接官や現場の責任者まで含めて社内の共通認識とする必要があります。決定した選考基準や評価シート、面接での質問リストなどは関係者全員に展開し、面接前の打ち合わせや面接官トレーニングを通じて解釈の統一を図りましょう。
例えば、「主体性」という評価項目一つとっても、人によって判断基準が異なる可能性があります。事前に「主体性=困難な状況で自ら打開策を提案・実行した経験があること」など、評価ポイントと言葉の定義を擦り合わせておくことで、面接官による判断基準のズレを減らせます。
また、採用基準は一度設定して終わりではなく、運用しながら磨いていくものです。面接を実施する中で「基準が抽象的すぎて評価に迷う」と感じた項目や、「この項目は不要ではないか」と思う点が出てくるかもしれません。その場合は速やかに現場の声をフィードバックし、基準をアップデートしていきます。定期的に人事と現場で面接評価の振り返りミーティングを行い、「評価項目や基準に改善の余地はないか」「選考プロセスで問題はなかったか」を検証しましょう。
例えば、面接評価を数値化して記録しておけば、後から各候補者の評価データを分析できます。「〇〇の項目で高得点だった人が入社後活躍している」といった傾向が見られれば、その項目をより重視する、逆に無関連な項目があれば削除するといった見直しが可能です。このようにPDCAサイクルを回しながら採用基準と運用方法を改善していくことで、より精度の高い採用活動を継続的に実現できます。
なお、社内共有の一環として法令やガイドラインの遵守も改めて確認しておきましょう。採用基準を定める際には、厚生労働省の提示する「公正な採用選考の基本」を踏まえ、応募者の適性・能力以外の事項(例:性別、出生地、家庭環境など)を評価項目に含めないことが鉄則です。万一そのような不適切な基準が含まれていれば早急に除外し、全面接官に遵守させるよう運用ルールを整備してください。
採用基準の評価項目例【すぐ使えるテンプレ付き】
採用基準を決めるうえで多くの担当者が悩むのが、「評価項目をどう言語化するか」です。ここでは、採用基準として使いやすい代表的な評価項目を、具体例付きで紹介します。
スキル・経験に関する評価項目例
スキル・経験は、主に中途採用で重視されやすい評価項目です。
即戦力性を見極めるために、事実ベースで判断できる項目を設定します。
例:
- 業務経験:〇年以上の実務経験があるか
- 専門スキル:自社業務に直結するスキル・知識を有しているか
- 実績:過去にどのような成果を出してきたか
ポイントは、「経験があるかどうか」だけでなく、自社業務で再現性があるかという視点で評価することです。
行動特性・コンピテンシーの評価項目例
行動特性(コンピテンシー)は、新卒・中途を問わず重要な評価項目です。
入社後の活躍や成長に直結しやすいため、具体的な行動エピソードをもとに判断します。
例:
- 主体性:自ら課題を見つけ、行動した経験があるか
- 課題解決力:困難な状況にどう向き合い、乗り越えたか
- コミュニケーション力:周囲と協力して成果を出した経験があるか
抽象的な言葉で終わらせず、**「どんな行動が見られたら高評価か」**を面接官間で共有することが重要です。
価値観・カルチャーフィットの評価項目例
価値観やカルチャーフィットは、ミスマッチ・早期離職を防ぐために欠かせない観点です。
スキルが高くても、価値観が合わない場合、定着や活躍が難しくなります。
例:
- 仕事に対する価値観:成果・プロセス・チームのどこを重視するか
- 変化への向き合い方:環境変化を前向きに捉えられるか
- 組織との相性:自社の文化や働き方に適応できそうか
ここでは「合う・合わない」を感覚で判断せず、過去の選択や行動理由をもとに見極めることがポイントです。
【テンプレ-ト】採用基準の評価項目例
ここでは、採用基準を設計する際に使いやすい評価項目テンプレートを紹介します。
必須条件
※満たしていない場合は、原則として採用を見送る条件
- 例:〇年以上の業務経験
- 例:業務遂行に必須となる専門スキル・資格
必須条件は、ステップ1・2で整理した「事業上・業務上どうしても欠かせない要件」に限定します。ここを広げすぎると、母集団が極端に減るため注意が必要です。
加点条件
※満たしていれば評価が高まる条件
- 例:関連業務でのリーダー経験
- 例:業務に活かせる資格・スキル
加点条件は、ステップ4で整理した「優先順位」を反映する項目です。
必須ではないものの、入社後の活躍や早期立ち上がりにつながる要素を設定します。
重視する行動特性
※活躍人材分析(ステップ3)から導いた観点
- 例:主体性
→ 課題に対して指示待ちではなく、自ら考え行動した経験があるか - 例:課題解決力
→ 困難な状況に対し、どのように工夫し乗り越えたかを説明できるか
行動特性は抽象的になりやすいため、具体的な行動やエピソードで評価する前提で整理します。
価値観・カルチャー
※定着・ミスマッチ防止の観点
- 例:チーム志向
→ 個人成果だけでなく、チーム成果をどう捉えているか - 例:変化への柔軟性
→ 役割や環境の変化にどう向き合ってきたか
価値観の評価も感覚判断にせず、過去の選択や行動理由をもとに見極めることが重要です。
採用基準を決める際の注意点
採用基準の決め方を間違えると、採用活動の停滞やミスマッチを招く原因にもなります。ここでは、採用基準を決める際に特に注意したいポイントを解説します。
曖昧な基準にしない
採用基準でよくある失敗が、基準が曖昧であるケースです。
例えば、「コミュニケーション能力が高い」「主体性がある」といった言葉は、
人によって解釈が異なりやすく、
- 面接官ごとに評価の観点がズレる
- 「なんとなく良さそう」という主観判断が増える
- 採否理由を説明できなくなる
といった問題が起こりやすくなります。
採用基準には、「何をもって評価するのか」が分かる具体性が必要です。
抽象的な言葉を使う場合でも、どのような行動や経験があれば評価するのかまで落とし込むようにしましょう。
差別につながる採用基準を設定しない
採用基準を定める際は、差別につながる内容を含めないことが絶対条件です。
性別、年齢、出身地、家族構成など、応募者の適性や能力と直接関係のない要素を評価基準に含めてはいけません。これらは、法令やガイドラインの観点からも問題となる可能性があります。
採用基準はあくまで、
- 業務を遂行できるか
- 入社後に活躍できるか
という観点に基づいて設定する必要があります。
不安な場合は、「この基準は仕事に直結しているか」という視点で見直すと判断しやすくなります。
理想像を詰め込みすぎない
採用基準を作る過程で、
「あれもできる人がいい」「これもできる人が理想」
と条件を足しすぎてしまうことは少なくありません。
しかし、理想像を詰め込みすぎると、
- 採用基準が現実離れする
- 判断が複雑になり、選考が進まない
- 結果として採用が長期化する
といった問題が起こりがちです。
重要なのは、今回の採用で本当に必要な要素は何かを見極めることです。
「今すぐ必要な能力」と「入社後に育成できる要素」を切り分け、採用基準には前者を優先して反映させましょう。
面接官同士での振り返り会も効果的です。お互いの評価が分かれたケースについて「なぜ判断が割れたのか」を話し合えば、基準の解釈違いがあれば修正できますし、評価プロセス自体の課題にも気づけます。
重要なのは「放置せずアップデートを繰り返す」ことです。採用基準は人材市場や自社の状況変化に合わせて進化させていくものと捉え、常にベストな状態にチューニングしていきましょう。
採用基準を見直しすべきタイミングと指標
では具体的に、どのようなタイミングや指標で採用基準の見直しを検討すべきでしょうか。以下に、基準の再考が必要となる主なケースとその判断材料を示します。
ミスマッチ・早期離職が増えたとき
入社後のミスマッチや早期離職が目立って増えた場合、採用基準の見直しサインと考えられます。
例えば、「採用したものの短期間で退職する新人が続いた」「配属先から“人選ミスでは?”という声が上がった」という場合です。
原因としては、選考基準と実際の仕事内容・職場文化に乖離がある、あるいは面接で候補者のパーソナリティを十分把握できていない、といった点が考えられます。
例えば、求職者が基準以上にオーバースペックだったり逆にスキル不足だったりすると、入社後の業務にストレスを感じやすくなり定着しにくくなります。また「上下関係を超えて自由に意見を言えるコミュニケーション能力」という要素を求めているのに、面接では単に受け答えの明るさだけで評価してしまうと、肝心のパーソナリティの適合を見誤るケースもあります。
そうしたミスマッチが重なれば当然早期離職率は上昇します。 実際、新卒入社者の3年以内離職率は大卒で32.3%、高卒で37.0%にのぼるという厚労省のデータもあります。
参考:厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します
すべてが採用ミスマッチに起因するわけではありませんが、「自社の離職率が明らかに悪化してきた」という場合は採用段階から見直すことで改善できる可能性があります。
現場の受け入れ担当者や退職者へのヒアリングを行い、「どの要素が合わなかったのか」「選考で見抜けなかった点は何か」を洗い出しましょう。その結果、採用基準に不足していた観点(カルチャーフィットを見る項目が弱かったなど)や不要だった基準(重視しすぎて候補者層を狭めていた条件など)が見えてくるはずです。それらを踏まえて採用基準を調整することが、早期離職率改善の一助となります。
面接通過率や内定辞退率の異常
選考プロセス上の指標に異常値が見られた場合も要注意です。
代表的なのが「面接通過率」と「内定辞退率」です。
まず面接通過率について、就職みらい研究所が発表した2024年卒採用における面接通過率の平均は33.11%となっています。
もちろん企業や採用人数によって幅がありますが、もし自社の選考で 面接通過率が極端に低い(例えば10%を切るなど) 場合、選考基準のハードルが高すぎる可能性があります。必須条件を緩和できないか検討したり、現場と経営層で「本当に必要な人物像」のすり合わせを改めて行ったりしましょう。
逆に面接通過者が多すぎる場合も見直しのサインです。面接を通過する人が想定以上に多い場合、「採用基準に漏れがないか」「基準の水準が低すぎないか」を確認してください。必要な要件を設定し忘れていたり、評価基準が機能していない可能性があります。
いずれにせよ、面接通過率の極端な低迷・高騰は選考基準や運用プロセスの歪みを示すシグナルです。定めた基準とその運用方法が適切かどうか、データをもとに検証・調整しましょう。
次に内定辞退率です。せっかく最終候補まで進んでも、内定を辞退されては採用計画に影響します。2024年卒採用における内定辞退率の平均は47.34%となっており、この数字は業界や企業規模によっても異なりますが、もし内定辞退率が50%を超えているようなら注意が必要です。
選考プロセスが長引いたり対応が悪かったため他社に流れてしまうケースもありますが、選考中のコミュニケーション不足やミスマッチが原因の可能性も考えられます。この場合、採用基準の伝え方・見極め方に改善の余地があります。
内定辞退率が高いときは、候補者から辞退理由をフィードバックしてもらいましょう。そこで「他社の方が魅力的だった」「社風が合わないと感じた」「選考を通じて不安が拭えなかった」などの声があれば、自社の採用基準や選考プロセスを見直すヒントになります。
例えば自社の魅力を十分伝えられていなかったなら会社説明段階を強化する、基準を見直し社風へのマッチングをもっと初期に確認する、といった対策が考えられます。
極端に辞退が多い場合は採用基準そのものより選考フロー側の課題であることも多いですが、いずれにせよ指標が悪化した際には基準・プロセスの両面から点検を行い、歩留まりの改善策を講じることが大切です。
事業フェーズ変化によるポジション更新タイミング
企業を取り巻く状況は日々変化します。自社の事業フェーズや戦略に大きな変化があったとき、あるいは組織改編や新規事業立ち上げでポジションの内容が更新されたタイミングでも、採用基準の見直しが必要です。
前述したように、成長フェーズによって求められる人材要件は変わります。
例えば、創業間もないスタートアップが社員数50名を超えて スケール期に入った場合、これまでは「何でもこなすゼネラリスト的な人材」を重宝していたのが、今後は「専門領域に強みを持ちチームを牽引できる人材」が必要になるかもしれません。逆に急成長中だった企業が一段落して安定成長期に入れば、「突飛な発想力」よりも「着実にPDCAを回せる実行力」を重視する方向に変わる可能性があります。
このように、企業のステージ変化に伴い“あるべき人材像”も変化するため、その都度採用基準をアップデートすることが求められます。経営戦略を見直した際には、それに即して採用基準も見直す、という流れをセットで行うと良いでしょう。
具体的には、新規事業用の採用ならその領域特有のスキル要件を追加する、DX推進に舵を切るならデジタルリテラシーや変革マインドを評価項目に加える、といった具合です。
また、ポジションの仕事内容が大きく変わった場合も基準の再考ポイントです。例えば営業職でも、これまで「新規開拓」が主だったのが、組織戦略変更で「既存顧客深耕」に比重が移ったのであれば、採用基準も「新規開拓力重視」から「関係構築力重視」へシフトする必要があるでしょう。
ポジションごとの職務記述書を更新した際には、それに対応する 能力要件も見直し、採用基準へ反映させることを忘れないでください。
このように、企業内外の変化を捉えて採用基準を機動的にアップデートしていくことが、常に最適な人材確保につながります。「昔決めた基準だから」と漫然と使い続けるのではなく、節目節目で「今後の我が社に本当に必要な人材は?」と問い直す姿勢が重要です。
まとめ
採用基準は、人材採用の精度を高めるために重要な指針です。
経営戦略との整合性を持たせ、現場の声や活躍人材の特徴を基に設計・運用することで、ミスマッチのない公平な採用が可能になり、着率向上や組織力強化といった成果にもつながります。
また採用基準は一度作って終わりではなく、選考や定着状況を踏まえて定期的に見直すことが重要です。
ぜひ本記事の内容を参考に、自社に合った採用基準を設定し、企業にフィットする優秀な人材を効率的かつ公正に見極めましょう。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。








