アルムナイ制度って何?5つのメリットと運用事例
ここ最近、人材や採用市場で耳にすることも多くなってきた「アルムナイ」という言葉ですが、聞いたことはありますか?
アルムナイ(alumni)というのは同窓生や卒業生を表す英語です。そして、ビジネスにおいては「退職者やOB・OG」を意味しますが、退職者と言っても定年退職者ではなく、家族の事情や転職など中途退職者を示します。
アルムナイ制度というのは、その言葉通り退職者を再雇用する、という出戻り制度のようなことを指し、最近活用する企業が増えてきました。退職した人が戻ってくる、というのは昔からあることですが、大手企業が具体的に制度として活用し始めている、というのがポイントです。
今回はアルムナイ制度について、なぜ今注目されているのかという背景や運用事例、活用する為のポイントについてご紹介していきます。
なぜアルムナイ制度が注目されているのか?その背景にあるものは?
終身雇用や正社員一括採用等、従来の採用手法や雇用の常識が崩壊しつつあり、フリーランス等の多様な働き方の増加を背景に、人材流動の激化や企業選びの基準が変化、人事担当者も制度面、採用方法等で変化が求められています。 人材の流動化が激しくなると人手不足が加速します。
その結果、新たな人を採用する為の採用コストは増加、そして中途採用を強化してもその中途入社者が風土になじめずに早期離職してしまうケースも多く、1度穴が空いてしまうと自社にマッチした人材を補充するのは至難の業です。
また、新卒採用は一般的に入社後のジョブローテーションがありますが、中途入社者は即戦力、専門性での採用なのでジョブローテーションが難しく、空いた人員補充を中途採用に頼りすぎると、1人に対して1人と充てていかなくてはならなくなり効率が悪いだけではなく組織が硬直化するリスクもあるのです。
自社にマッチする人材を採用すること、また今働いている人がこれ以上辞めないようにするための満足度向上の施策、人事担当者はどちらも力を入れなくてはいけなくなります。つまり全社員とこれから入る社員に対して仕事をするということは、対象者が膨大で負担は増すばかりです。
そうした事情の中、過去に自社で働いていた人を再び雇用できるということは、マッチした人材を探す手間の削減、社内の仕組みや仕事の進め方等を知っていることからもより即戦力としての活躍を望めるため以上に効率の良い方法だと言えるのです。
アルムナイ制度の具体的なメリットは?活用のポイント
アルムナイ制度の具体的なメリットをいくつかご紹介します。
①採用リードタイムの短縮化
「○○な人材が欲しい」と部門から求人が上がってきても、中途採用するとなると人材紹介会社に依頼し、リサーチしてもらって、面接、適性検査等の採用ゲートをいくつもクリアしてもらう、となると欲しい時にすぐ採用できるわけではありません。
退職者ともつながりを持ち続けていれば、人材要件に当てはまる退職者がいた場合、すぐに声かけして入社に繋げることができるのです。必要としたタイミングで声かけし、入社に繋げることができるというのもアルムナイ制度の大きなメリットです。
②採用・教育の手間やコストの削減
対象者も会社側もお互いの事を既に良く知っているために、最初から細かく説明する手間を省く事ができます。入社時の研修も、本人が在籍時から変化したポイントだけ伝えることができれば問題ありません。
また、採用時に人材紹介会社にコストを支払う必要がないということ、入社後のOJTや研修等の教育関連の費用も最小限に抑えることができます。
③自社のブランディングに活用できる
一度退社した会社に戻る、という時点で、その会社がブラック企業ではないこと等、その人の周囲では会社に対する良いイメージが広がりますし、もう一度戻りたいと思える会社である事は社内外にいい影響を与えることができます。
なぜまた戻ろうと思ったのかを話すことで、社内に対しては自社の良さを改めて知る機会になりますし、社外に対しては自社の特徴や良さを他社と比較してより具体的、客観的に話すことができるのです。
④リファラル採用を強化することができる
アルムナイ制度を整える、使うかどうかに関わらず、退職者と良好な関係を維持し続ける、というのは企業にとって非常に大きなメリットです。
小さな視点で見ると、例えば懇親会などで退職者から他社の話を聞くことで制度の見直しや組織についてのアイディアにつながります。退職者本人の再入社に繋がらなかったとしても他に大きなメリットがあります。
退職者の人脈で他に同じように退職をした人を紹介してもらえる可能性もありますし、なかなか繋がることができないような新たな人脈から人材を発掘することができるのです。
⑤安定した活躍を期待することができる
安定した活躍というのは、簡単に言うと「辞めない」ということです。
どれだけ高い能力を持っていても、企業風土や独特の仕事の進め方になじめるかどうかは別問題です。
入念に面接で事前確認をしていても、現場に入ってみないとわからない、という時点で企業は常にリスクを背負っています。しかし、対象者が元社員であれば風土へのミスマッチの心配もないですし、社内に知り合いがいる状態で仕事を開始することができるので、本当の意味での即戦力として入社直後からの活躍が望めるのです。
アルムナイ制度の活用事例をご紹介!風土改善にも役立つ?
最後にアルムナイ制度の活用事例をご紹介します。
いくらアルムナイ制度を運用していきたいと思っていたとしても、退職者が会社を嫌いになった、見切ったというようなネガティブな理由ばかりでは戻ってきてくれるはずがありません。
アルムナイ制度を活用する為には、前提として社内風土の改善が必要です。退職するにしてもポジティブな理由で辞める人を増やしていく必要があります。そうすることで、自然と退職者も減っていきますし、辞めたとしてもまた戻りたいという思える会社にしていく事ができるのです。
またアルムナイ制度は、再雇用というだけではなく、仕事でのコラボレーションも可能です。
某日用品メーカーは、退職した社員が新たに起こした会社のサービスとコラボレーションすることによって、顧客満足度と企業イメージを上げただけではなく、新たな販売経路を見いだせたことにより、売上拡大につながりました。
また、退職者が立ち上げた会社としては、大手メーカーとの取引があるということが信頼性の向上につながり、コラボレーションしている事業以外の事業でも業績、株価が上昇しています。
働き方に縛られない現代において、人が辞めない会社づくりはもちろん大切ですが、そこにばかり固執していても意味がありません。辞めない風土作り、また辞めた人との良好な関係性作りと人脈の活用、という発想の転換や柔軟性が重要なのです。
そのためにも、人事担当者は常に多方面にアンテナをはって情報収集し続けなくてはいけないのです。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。