【解説】中途入社者の定着率を上げる方法3選
中途入社者の定着は採用と同じくらい大事
「中途入社者」といえば真っ先にテーマに挙がるのは「採用」に関するものではないでしょうか。ネット上にも「中途採用」や「面接ノウハウ」に関する情報がたくさん溢れています。
しかし、「中途入社者」に関して「採用」と同様に大変重要なテーマがもう1点あります。それは中途入社者の「定着」です。以下の理由から「定着」が重要視されています。
- せっかく入社しても定着しなければ、そのポジションに欲しかった人の不在期間が長くなり業務に支障をきたしてしまう
- 中途採用にはコストがかかるため、定着しなければ、採用コストが繰り返し発生してしまうことになる
- 今はSNSなどで評判が拡散しやすい時代。入社したものの定着しなかった方からネガティブな評判が広がると、募集をかけても人が集まらなくなる、という負のスパイラルに陥ってしまいかねない
そこで、今回は中途入社のリアルを明らかにして、定着率を上げるための3つのポイントをお伝えします。
中途入社者のリアル
まず、新卒採用とは違う中途入社者ならではの困るポイントについて触れてみます。
中途入社者は風土・コミュニケーション問題に悩みがち
中途入社者が入社してからその会社に馴染むまでに、多くの方は以下のような点に戸惑いを覚えます。
- 職場の風土・コミュニケーションスタイルが合わない
- 会話の内容や使われている社内用語がわからない
- 誰かに気軽に質問したり協力をお願いできない
上記のように悩みの多くは風土、コミュニケーション問題が大半です。このような悩みは何故起こるのでしょうか。
中途入社者側の要因
中途採用では新卒採用と違い、ポテンシャルだけでなくこれまでの職務経験や実績スキルも検討項目に入ります。つまり、中途入社者は自分自身が採用された理由としてこれまでの経験や実績、スキルが加味されていることを知っています。
それが故に多くの中途入社者は、期待されたパフォーマンスをすぐに発揮しよう、即戦力になろう、という気負いが生じ、その結果、新しい環境に対する戸惑いを自分一人で解決しようとして不安を飲み込んでしまいがちです。その結果、些細な違和感や質問を発信することができなくなってしまうのです。
企業側の要因
中途入社者は都度採用を行う企業が多いため、決まった月にまとまった人数で入社するケースは稀で、入社タイミングはバラバラであることが大半です。
加えて、まっさらの状態で入社してくる新卒入社者とは違い、前職の経験や社歴もそれぞれなので前提条件もバラバラです。
その結果、中途入社者の方々に同一のタイミングで共通施策を打つことは極めて難しく、個別対応にならざるを得ません。その結果、現場で慣れてもらうという方法が多く取られ、風土やコミュニケーション面で一律にケアする機会が失われてしまうのです。
中途入社者に立ちはだかる困難
このように、社会人としての経験は豊富にありながら、中途入社者ならではのつまづきや停滞、葛藤はかなりの確率で発生します。
ここでは中途入社者によく立ちはだかる壁についてまとめてみます。
第一の困難:会社の風土・コミュニケーション
はじめに立ちはだかるのは、先ほど触れた風土・コミュニケーションの壁です。
中途入社者の「即戦力を期待されたからには弱音を吐けない」という自らへのプレッシャーと、個別対応にならざるを得ない企業の対応が重なり、孤立した状況が作られてしまいます。
第二の困難:前職との仕事との葛藤
一定の期間を過ぎると、ある程度は風土にも慣れ仲間もできてきます。その次にやってくるのが「前職の仕事」との葛藤になります。例えば、新しい会社でも前職と同じ職種で働くとしても、仕事の進め方や大事にするポイントが異なってきます。
その背景や根拠から遡って理解できれば葛藤は払拭できるかもしれませんが、「ウチの会社ではこうやるものだ」というルールや進め方だけをインプットされると、理解・納得が追い付かないことがあります。
また、多少でも前職とは違う仕事を任された場合は、新たに覚えるべき、習得すべき知識・スキルがあり、頭で理解できても習熟するまでのタイムラグがあるため、思うようにパフォーマンスが発揮できず、焦ったり不全感が残ったりしてしまいます。
第三の困難:将来に対する不安
中途入社者の多くは覚悟を持って転職をしてきているので、新しい会社でなんとか活躍したい、と考えています。それが故に第一の困難、第二の困難も完全に解決できなくても、何とか不安やストレスを押し殺して日々仕事に向き合います。
しかし、新しい環境下ですぐに結果が出るケースは非常に稀です。一方で同年代のプロパー社員や、先に入社している中途入社者がバリバリと活躍している姿を見ると自分は本当に活躍できるのだろうか、自分は何をやっているんだろうか、という焦り、自身喪失にも繋がってしまいます。
中途入社者の定着率を上げる3つのアプローチ方法
このように、中途入社者は早期の活躍が期待される一方で、「活躍」の手前の「定着」という段階においても多くの困難が立ちはだかります。
では中途入社者の定着を少しでも上げるための3つのポイントをお伝えします。
1.人事が中途入社者の状況を理解し、定期的にモニタリングする
中途入社者は、入社後すぐに現場へ配属されることが大半です。日々の業務については現場で覚えていきますが、配属先も中途入社者の受け入れに慣れていないことも多いため、中途入社者の状況や心境を深く理解できていない可能性もあります。
だからこそ、人事として、中途入社者の陥りがちな状況を見越して定期的に面談などで本音を吐露する機会を設けることが大切になります。
2.現場でOJT担当/メンターをつける
新卒に対してはOJT担当や教育担当といった人をアサインする企業は多いですが、中途入社者に対してそういった人をアサインする企業は少数派です。
中途入社者=経験者、即戦力、というイメージは強いでしょうが、新しい環境に身を置くと、誰しも一時的には戸惑いを覚え、パフォーマンスは落ちてしまいます。その期間をできる限り短くするための、安心安全の土台となるOJT担当か、もしくは相談に乗れるメンターがいるだけでも中途入社者の心理的不安は軽減します。
3.中途入社者同士が繋がる機会をつくる
自ら選択した道とはいえ、中途入社者は孤独になりがちです。加えて昨今のリモートワークが増えてきている環境下では、ますます孤独を感じやすくなり、偶発的に知り合いを増やせる機会が減ってきます。
孤独を解消するために、中途入社者同士を繋げる懇親の場や、先輩の中途入社者と接点を設けることにより、「不安や違和感は自分だけが感じているわけではない」「孤独だと思っていたが同じような仲間がいる」と安心感を持ってもらうことはとても大切です。
以上のように、中途入社者は期待が高い一方でそれが故のプレッシャーや不安を抱えやすくなります。企業側も一律の受け入れやフォロー体制が難しいという現実もありますが、中途入社者の置かれた状況や特徴を掴んだ上で人事と現場の双方でサポートする対応が定着と活躍の鍵になります。
まとめ
◇中途入社者のリアル
「風土・コミュニケーション問題に悩みがち」「即戦力になろうと戸惑いや不安を隠す」「入社後すぐに現場配属され個別にケアする機会が失われる」
◇中途入社者に立ちはだかる困難とは?
「1:会社の風土・コミュニケーション」「2:前職との仕事との葛藤」「3:将来に対する不安」
◇中途入社者の定着率を上げる3つのアプローチ方法
「1:人事が中途入社者の状況を理解し、定期的にモニタリングする」「2:現場でOJT担当/メンターをつける」「3:中途入社者同士が繋がる機会をつくる」
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。