採用マーケティングとは?選ばれる企業になるための手法やフレームワークまで解説
公開日: 2026年03月17日
「求人を出しても応募が集まらない」「来ても欲しい人材とズレている」そんな採用の悩みを抱える企業は少なくありません。その原因は、企業の魅力や条件ではなく、採用の進め方そのものが今の市場に合っていないことにあります。
売り手市場が続く今、企業が人材を「選ぶ」採用から、候補者に「選ばれる」採用へと発想を切り替える必要があります。そこで注目されているのが、マーケティングの考え方を採用に取り入れた「採用マーケティング」です。
本記事では、採用マーケティングの基本的な考え方から、実践の手順、導入するメリットまでをわかりやすく解説します。採用活動を仕組み化し、再現性のある成果につなげたい方は、ぜひ参考にしてください。
採用マーケティングとは?
採用マーケティングとは、候補者を「顧客」と捉えて採用活動を設計する考え方です。
売り手市場となった現在、企業が一方的に人を選ぶのではなく、候補者に「この会社で働きたい」と選んでもらう姿勢が求められています。採用マーケティングでは、自社を一つの「商品・サービス」と捉え、事業内容や働き方、文化、ビジョン、制度などの魅力を整理したうえで、候補者に伝えていきます。
候補者がどのような心理で、どのような経路で企業を知り、興味を持ち、応募・入社に至るのか(候補者ジャーニー)を整理し、それぞれの段階に合った施策を設計・実行していくことが、採用マーケティングの本質です。
採用マーケティングが注目されている背景
なぜ今、多くの企業が採用マーケティングに力を入れ始めているのでしょうか。その背景には、いくつかの構造的な変化があります。
極度な売り手市場と労働人口の減少
採用マーケティングが注目されている最大の背景は、少子高齢化に伴う労働人口の減少と、それによる採用競争の激化です。かつてのように求人媒体へ掲載し、応募を「待つ」だけの採用手法では、母集団すら十分に集まらないケースが増えています。
こうした環境下では、不特定多数に向けた訴求ではなく、特定のターゲットに対して自社の魅力を的確に伝え、「選ばれる状態」をつくることが不可欠です。この考え方が、採用マーケティングが必要とされる大きな理由の一つです。
働き方に対する求職者の価値観の変化
求職者が企業選びで重視するポイントも、大きく変化しています。マイナビの「2026年卒大学生就職意識調査」(2025年4月)によると、最も多くの学生が挙げた就職観は「楽しく働きたい」(51.4%)でした。
また、「個人の生活と仕事を両立させたい」という回答も年々増加しており、特に女性や文系学生を中心にその傾向が強まっています。
このように、求職者は「誰にとっても良さそうな企業」ではなく、「自分に合った企業」を探すようになっています。だからこそ、採用活動においてはターゲットを明確にし、その層にしっかりと刺さるメッセージを定め、届けることが重要になっているのです。
※出典:マイナビ「2026年卒大学生就職意識調査」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250423_95696/
採用マーケティングの4つのメリット
ここからは、採用マーケティングの代表的な4つのメリットを解説します。
ターゲット理解が深まり、訴求の精度が上がる
採用マーケティングの出発点は、「誰に採用したいのか」を深く理解することです。どのような価値観を持ち、どんな課題や不安を抱えているのか。普段どのメディアに触れ、どんな情報に反応しやすいのか。こうした視点でターゲットを捉え直します。
ターゲット像が明確になることで、どんな言葉で魅力を伝えるべきか、どの情報を、どの順番で見せるべきかを設計することが可能になります。
ミスマッチを防ぎ、早期離職を防ぐ
採用マーケティングでは、企業の良い面だけでなく、仕事の実態や価値観、組織の考え方も含めて発信します。その結果、「自分に合いそうかどうか」を応募前に候補者自身が判断しやすくなります。
スキルや経験が合っているだけでなく、働き方やキャリアに対する考え方、カルチャーとの相性まで含めてマッチした採用が実現しやすくなります。
採用コストの最適化につながる
採用マーケティングの本質は、「無駄の少ない採用」を実現できる点にあります。限られたターゲットに絞り、その層から選ばれる設計を行うことで、採用活動全体のコストを抑えやすくなります。
幅広く母集団を集め、応募から選考、内定までの移行率が低い状態では、広告費だけでなく、書類選考や面接にかかる人的コストも膨らみがちです。一方、採用マーケティングでは、自社が本当に求める人材に狙いを定め、その層に刺さる情報を届けます。
その結果、「最低限の母集団でも、移行率・合格率が高い」状態を作ることが可能になります。広告費の削減だけでなく、選考工数や現場負担の軽減にもつながり、結果として採用コスト全体の最適化につながります。
潜在層への認知が広がり、将来の採用につながる
継続的に情報発信を行うことで、「ターゲットではあるが、今すぐ転職を考えていない層」にも自社の存在や価値観が届きます。その結果、将来求職者になった際に「知っている会社」「気になっていた会社」として想起されやすくなります。
これは採用ブランディングにも直結し、自社に共感するファンを増やす活動として、中長期的な採用力の強化につながります。
採用マーケティング実践のための◎ステップ
採用マーケティングを実践する際、どのような手順で進めればよいのでしょうか。ここでは、6つのステップで解説します。
ステップ1:採用の目的とゴールを明確にする
最初に行うべきは、「なぜ採用するのか」「採用で何を実現したいのか」を整理することです。
- 事業成長のための増員なのか
- 欠員補充なのか
- 将来を見据えたポテンシャル採用なのか
目的が曖昧なままでは、ターゲット設定もメッセージもブレます。採用人数・求める役割・入社後に期待する状態まで言語化しておきましょう。
ステップ2:自社を分析・理解する
経営理念・事業戦略・事業計画を起点に、採用で武器になる要素と弱点を整理しましょう。分析は、次のフレームワークを使うと抜け漏れなく進められます。
3C分析
3C分析は、「誰に、何を、どう差別化して伝えるか」を考えるための土台です。ポイントは、「ターゲットが求めていて」「競合が言いにくく」「自社なら提供できる」重なりを探すことです。ここが採用コンセプトや訴求メッセージの核になります。
・Customer(候補者):ターゲットが求めていることは何か。転職で叶えたいこと、不満、重視する価値観はどこか。
・Competitor(競合):競合はどんな魅力を訴求しているか。条件・成長・安定・カルチャーなど、強みの言い方はどうなっているか。
・Company(自社):自社が本当に提供できる価値は何か。事業の面白さ、裁量、学べる環境、働き方、チームの特徴などを棚卸しする。
SWOT分析で「使える強み」と「弱点の扱い方」を整理する
SWOT分析は、自社の状況を外部環境も含めて整理し、採用戦略の現実性を上げるのに役立ちます。
・Strength(強み):採用で勝ち筋になる要素(例:裁量が大きい、意思決定が速い、顧客に近い、成長機会が多い)
・Weakness(弱み):採用上の不利になりうる要素(例:知名度が低い、待遇で勝てない、制度が整っていない)
・Opportunity(機会):追い風になる外部要因(例:リモート志向の増加、特定職種の転職活性化)
・Threat(脅威):向かい風になる外部要因(例:競合の採用強化、賃上げ、母集団の縮小)
ステップ3:ターゲット・ペルソナを具体化する
ステップ2を踏まえて、「誰を採用したいか」を言語化しましょう。
- 年齢・性別・職種・経験・スキル・人柄・行動特性(コンピテンシー)など
- 転職理由やキャリアの志向性(例:裁量のある環境で挑戦したい)
欲しい要素を足し算で増やすと、そんな人は市場にいない!となります。必ず「MUST(絶対必要)」と「WANT(あったら嬉しい)」に分け、ターゲットの解像度を高めましょう。
ステップ4:採用カスタマージャーニーを設計する
ペルソナが、どのようなプロセスで入社意思を固めるのかを設計します。一般的には、以下の流れで考えます。
- 認知
- 興味・関心
- 理解
- 比較・検討
- 意思決定
各フェーズで「候補者はどんな心理状態か」「何を知りたがっているか」を整理することで、適切な情報提供と導線設計が可能になります。
ステップ5:フェーズごとに施策・チャネルを設計する
ジャーニーに沿って、施策と接点(チャネル)を設計します。
- 認知:求人媒体、スカウト、SNS、イベント
- 興味・理解:求人票、社員インタビュー、採用サイト、カジュアル面談
- 比較・意思決定:座談会、フォロー面談、オファー面談
それぞれの接点で、どの魅力を・どのように伝えていくべきか設計しておきましょう。
ステップ6:数値を見ながら改善を繰り返す
応募数やエントリー率、採用サイトの閲覧状況、メールの反応率、説明会や面談への参加状況、面接通過率、紹介経由の応募割合など、採用活動に関わる数値はできる限り可視化し、継続的に確認しましょう。
こうしたデータを振り返ることで、「どの情報がターゲットに響いたのか」「どんな点に魅力を感じて応募につながったのか」「結果的にどのような人材が活躍しているのか」が見えてきます。求職者の実際の行動と照らし合わせながら、設定したペルソナや採用カスタマージャーニーが現状に合っているかを検証し、必要に応じて見直していくことが重要です。
まとめ
採用マーケティングは、「誰に・何を・どう伝え、どう選ばれるか」を一貫して設計する考え方です。自社理解から始め、ターゲットやペルソナを定め、候補者の行動・心理に沿って施策を組み立て、データをもとに改善を重ねていくことで、再現性のある採用が実現します。
特に中小企業にとっては、無駄なコストやミスマッチを減らし、自社に本当に合う人材から選ばれるための有効な手段です。まずは「誰を採用したいのか」を見直すことから、採用マーケティングを取り入れていきましょう。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。