2027年卒以降の新卒採用トレンド|26卒データから読む「早期化・売り手市場」の勝ち筋とは?
公開日: 2025年05月30日 | 最終更新日: 2025年06月02日

2027年卒採用を目前に控え、多くの企業が以下のような課題を抱えています。
- 採用スケジュールの早期化に追いつけない
- インターン後のフォローや志望度醸成がうまくいかない
- 従来の手法(ナビサイト・説明会)では母集団が集まりにくくなった
このような状況は一部の企業に限った話ではなく、中小企業やベンチャーを中心に、今や業界を問わず広く共通した課題となっています。
新卒採用のトレンドは、ここ数年で大きく様変わりしました。学生の情報収集の手段や、企業を選ぶ基準、就活のスケジュール感も変化しています。企業側も、採用手法・接点設計・メッセージの出し方まで、従来とは異なるアプローチが求められています。
本コラムでは、
- 2026年卒市場を踏まえた、今後の学生と企業の動向
- 新卒採用を取り巻く構造的な変化
- 2027年卒の成果につながる採用手法・戦略の最新トレンド
これらを、各種調査データと事例を交えて解説します。
新卒採用の成功確率を高めるために、まずは“今、何が起きているのか”を正しく理解することから始めてみてください。
2026年卒採用、市場はどう動いているのか?
新卒採用市場は今、大きな転換点を迎えています。2026年卒の採用活動では、企業・学生の双方において「早期化」「情報の分散」「価値観の多様化」といった明確なトレンドが現れています。
この背景には、少子化による採用母集団の縮小だけでなく、学生の行動スタイルが変わり、「就活=春スタート」という常識がもはや過去のものになりつつあることがあります。
まずは、企業側と学生側の最新動向をそれぞれ確認し、採用活動の前提条件を整理しましょう。
企業側|採用活動の早期化と競争激化
近年、新卒採用の早期化に拍車がかかっています。
キャリタスの調査(2024年10月)によると、「採用活動の開始時期を前年度より早めた」と回答した企業は、前年より10ポイント以上増加。10月以前に面接を開始する企業は年々増え、特に中堅・中小企業やベンチャーでは、夏以降のインターン参加者をそのまま選考に誘導する「実質選考前倒し」が一般化しています。
こうした前倒しは、大手企業による内々定出しの早期化だけでなく、学生の“早期就活”とのミスマッチを避けるための施策でもあります。
つまり、今の採用市場では「例年通りのスケジュール」は通用せず、母集団を確保するためには夏のインターン設計から勝負が始まっているという認識が不可欠です。
出典:キャリタス「2026年卒・新卒採用に関する企業調査」
https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/202502_kigyochosa.pdf
学生側|就職活動の早期化と内定率の上昇
同様に、学生側も、就活の開始・終了が前倒しされています。
キャリタスの2026年卒調査によれば、2025年4月1日時点の内定率は64.9%。前年同期比で2.1ポイントの上昇です。これは、学生の約3人に2人が、春の時点ですでに就活を終えていることを意味します。
また、文系の68%、理系の78%が大学3年の6月までに就活を開始しており、インターン参加やスカウト媒体経由の接触がその起点となっています。
このように、学生も企業も、従来のスケジュールでは出会えない可能性が高まっており、「早期に出会い、関係性を築いた企業が勝つ」構造が前提となっています。
出典:キャリタス「2025年4月1日時点の就職活動調査」
https://www.career-tasu.co.jp/press_release/11729/
学生の就職観と行動スタイルの変化
「採用がうまくいかない…」その根本原因のひとつは、学生の価値観と行動が、ここ数年で劇的に変化していることに気づけていない、あるいは対応しきれていないことにあります。
Z世代(1996年以降生まれ)の学生たちは、情報リテラシーが高く、企業を見極める目を持っています。単に条件が良い企業ではなく、「自分らしく働ける」「考え方に共感できる」企業を選び、就活のスタイルも“狭く深く”が基本です。
ここからは、2026年卒の学生の就職観の変化と、企業との出会い方・接点の持ち方について、最新データとともに解説します。
就職観の変化|「楽しく働きたい」が最多
マイナビの「2026年卒大学生就職意識調査」(2025年4月)によれば、最も多くの学生が選んだ就職観は「楽しく働きたい」(51.4%)。さらに、「個人の生活と仕事を両立させたい」も年々増加し、特に女性や文系学生の間で高まっています。
また、「収入さえあればよい」という“割り切り型”の志向も5年連続で増加。ここには、物価上昇や将来不安に対する現実的な感覚も垣間見えます。
このように、学生の就職観は一言で言えば「多様化」と「合理化」が進んでいる状態です。
重要なのは、“自社が提供する働き方や価値”が、どの志向の学生とマッチするかを見極めることです。
出典:マイナビ「2026年卒大学生就職意識調査」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250423_95696/
情報収集手段の多様化|ダイレクトリクルーティングの活用の主流化
学生が「企業を知る」手段も大きく変化しています。
就活口コミサイト、人材紹介、LINEオープンチャット、YouTube、TikTok、そしてX(旧Twitter)など、情報収集の場はナビサイト以外に分散。ナビ離れは確実に進行しています。
さらに、OfferBoxやdodaキャンパスなどのスカウト型サービス(逆求人)も主流化。たとえば、OfferBoxの26年卒登録学生数は、2025年4月時点で、21万人を超えており、学生の3人に1人が利用している計算です。他にもdodaキャンパスをはじめ、ダイレクトリクルーティングを活用した就職活動が当然の時代になっています。
企業が「会いたい学生に出会う」ためには、これらのプラットフォームを活用し、学生が普段触れる場所に自社情報を届ける発想が不可欠です。
出典:OfferBox「データで見るオファー型採用」
https://offerbox.jp/company/data/
27卒以降の採用トレンドと実践ポイント
学生の行動が大きく変化するなか、採用競争を勝ち抜くためには、「今、どんなアプローチが成果につながっているのか?」「自社にとって最適な打ち手は何か?」を見極める視点が欠かせません。
大切なのは、“どんな手法を選ぶか”以上に、“どう設計し、どう運用するか”。
採用活動に行き詰まったとき、「なにか目新しい手法はないか」と飛びつくのはありがちなパターンですが、それだけでは成果につながりません。
特に、リソースに限りがある中小・ベンチャー企業では、「要点を押さえて、どこに集中するか」が鍵になります。
選ばれる側になった今だからこそ、施策を広げすぎず、接点から内定までの歩留まりをどう上げていくかが問われています。
ここからは、実際に成果を上げている3つの取り組みを紹介します。
2027年卒採用を見据えた具体策として、ぜひ参考にしてください。
①インターンシップの重要性と成果を出す設計
インターンシップは今や、単なる「就業体験の場」ではなく、採用成果に直結する戦略的な接点として設計すべきフェーズになっています。
2026年卒向けにおいても、夏季71.6%、冬季73.6%、秋季66.2%と、年間を通じて約7割の企業がインターンを実施しており、今後も“標準装備”の前提で設計されていくことは間違いありません。
出典:キャリタス 就職・採用戦線の見通し(2026年卒)
https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/saiyomarket2025_3.pdf
とはいえ、成果を出している企業とそうでない企業を分けるのは、**「いつ集めるか」ではなく、「どのように接点を設計しているか」**です。特に近年は、夏本番で母集団を形成するのでは遅く、夏までに接点を確保し、育てておくという前提での設計が成果に直結しています。
実際に、高い歩留まりを実現している企業は、以下のような流れを採用しています。
・4〜6月:接点の先行確保
└スカウト、動画、キャリア相談などを通じ、まずは広く浅い接点を構築
具体例:
・SNS(インスタやティックトック)での社風紹介(限定公開)
・学生向けキャリア相談イベントや
・登録してくれた方へ<先輩社員QA>LIVE配信等
・7〜9月:夏インターン(本命層を選別)
└短期プログラムに加え、フィードバックを交えて印象強化と企業理解の解像度を高める
具体例:
・1day.2dayインターン(業界理解・社員交流)
・インターンシップ後、フォロー面談、実際の仕事のシミュレーション・現場同行、個別フィードバック面談
・10月以降:個別フォロー〜早期選考へ
└接点を通じて、志望度を段階的に育てる
具体例:
・LINEでの継続接点
・座談会、リクルーター面談などで不安の払しょく・魅力づけ
このように、インターンを起点にした「関係性のシナリオ設計」が成果の分かれ目になります。
鍵となるのは、「接点数は6回以上、接触は1ヶ月以内で継続できているか」という点。これは心理的な効果(単純接触効果/ザイオンス効果)にも裏打ちされており、学生の印象に残り続けるためには、継続的な接点と適切な距離感が求められます。
さらに、インターンを単発で終わらせず、動画フォローや面談、クローズドな選考導線へと自然に誘導することで、歩留まりや内定承諾率が大きく改善されたケースも多く見られます。
もはやインターンは、「集めるための場」ではなく、「選ばれる企業になるための布石」です。その後の動線まで見据えて設計できているかが、採用成果を分ける時代です。
② 「送るだけ」では成果が出ない。DRで選ばれるための3つの工夫
ナビサイト離れが進む中、ダイレクトリクルーティング(DR)はもはや選択肢ではなく、採用成功の必須チャネルになりつつあります。特に母集団形成に苦戦している中小・ベンチャー企業にとっては、「会いたい学生に、こちらから出会いにいける」手法として非常に有効です。
成果を出している企業は、単にスカウトを送るのではなく、“マーケティング的視点”でターゲティング・メッセージ・プロセスを緻密に設計しています。
DRで成果を出すための3つのポイント
ターゲットを明確にする
自社にフィットしやすい学生像をあらかじめ定めておくことで、狙い撃ちのスカウトが可能になります。文理の違いだけでなく、志向や性格タイプまでイメージできていると精度が高まります。
メッセージに“自分ごと感”を持たせる
「なぜ自分に届いたのか」が伝わるスカウト文は、学生の目に留まりやすくなります。プロフィールをきちんと読み込んで触れる、学生の関心に寄り添ったワードを選ぶなど、小さなひと手間が差を生みます。
例:「◎◎での活動に共感しました。当社の〇〇の仕事に経験を活かしていただけると思い~」
接点後の導線まで設計する
返信をもらった後の導線設計も重要です。カジュアル面談や座談会など、学生が“気軽に一歩踏み出せる”フローにしておくことで、初回接点から選考への移行がスムーズになります。
返信後、当日中に御礼とカジュアル面談のご案内する、面談後はフォローコールを実施し、選考への導線を意識するなど、工夫しましょう。
加えて、返信が来たら“即レス”と“次の導線設計”が鉄則です。オファー送信後の面談誘導やインターン案内を学生任せにせず、フォロー体制までセットで整えることで、歩留まり改善と志望度醸成の双方が実現できます。
ダイレクトリクルーティングは「打って終わり」ではなく、「誰に・何を・どう伝えて・どう動いてもらうか」までを一貫して設計するマーケティング活動です。特にスカウト文面とタイミングが成果に直結するため、「DRは成果が出にくい」と感じている企業ほど、メッセージの質と運用体制を再設計していきましょう。
③ 面接官における選考体験(採用CX)の向上
せっかく出会えた学生も、最後の面接で「なんか違うかも」と思われてしまえば、それまでの接点がすべて台無しになることもあります。
だからこそ今、面接は“評価する場”から、“企業の魅力を伝え、信頼を築く場”へと役割をシフトさせる必要があります。特に中小・ベンチャー企業の場合、学生が企業を判断する最大の材料が「出会った人の印象」であることを忘れてはいけません。
その中でも重要になるのが、“採用CX(候補者体験)”の設計です。
ただ質問を投げかけるのではなく、面接を通じて「この会社なら安心できそう」「自分らしく働けそう」と感じてもらえる体験をどうつくるか。それが、志望度や内定承諾率に直結します。
- 冒頭で空気を和らげるアイスブレイク
ちょっとした雑談や共通点の話題から入るだけで、学生の表情や受け答えがまったく変わってきます。とくにオンライン面接では“最初の1分”が空気を決めるとも言われています。 - 行動の背景や価値観を引き出す質問
「なぜそう考えたのか」「どんな気持ちで行動したのか」といった深掘りのやりとりは、学生にとって“ちゃんと見てもらえた”という実感につながります。 - 企業側からも情報をしっかり開示する
一方的な質問だけではなく、「社員がどんな働き方をしているか」「入社後にどんな挑戦ができるか」といった話を面接の中で伝えることで、企業への解像度がぐっと高まります。
最近では、選考途中に社員座談会や1on1の逆質問セッションを挟む企業も増えてきました。面接官だけでなく、実際に働く人の雰囲気を感じられる場があることで、「この会社ならやっていけそう」と納得感を得る学生が多いからです。
選ばれる企業になるためには、“何を聞くか”と同じくらい、“どう伝えるか・どう感じさせるか”が大切です。
面接は、企業と学生が価値観をすり合わせ、未来の関係性を描く場。採用CXの中心にあるのは、やはり“人”なのです。
まとめ
いかがでしたか?
2026年卒の採用データから見えてきたのは、「採用スケジュールの早期化」「学生の価値観と行動の多様化」「ナビ離れと情報チャネルの分散化」といった構造的な変化です。もはや“例年通りのやり方”では、成果を出しづらくなってきています。
だからこそ2027年卒の採用に向けては、
早期からの接点設計・個別フォロー・関係性構築の戦略的な仕組みづくりが不可欠です。
・インターンを起点にした“接点→志望化”のシナリオ設計
・スカウトやSNSを活用した“会いにいく採用”の精度向上
・面接を通じた“共感・信頼”の体験設計
中小・ベンチャー企業にとっても、やみくもに手法を増やすのではなく、限られたリソースの中で「どこに集中するか」「どこで選ばれるか」を見極めることが、これからの採用で勝ち筋をつくる鍵になります。
変化をチャンスに変え、「この会社で働きたい」と思われる採用を、今から一緒に設計していきましょう。

この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。