【事例あり】採用課題の原因は?解決策を4つ紹介
公開日: 2025年05月28日

企業にとって「人材の確保」は、事業成長と競争力強化に直結する最重要課題のひとつです。しかし現実には、
- 思うように人が集まらない
- 採用してもすぐに辞めてしまう
- そもそも採用活動にかける時間や人手が足りない
といった課題に直面している採用担当者が多く存在します。
特に近年は少子高齢化や価値観の多様化、労働市場の流動性の高まりといった外部環境の変化が、採用活動をより複雑かつ難易度の高いものにしています。
本記事では、採用活動における代表的な課題とその原因、そしてそれらを乗り越えるための具体的な解決策を4つご紹介します。さらに、外部パートナーを活用したRPO(採用代行)の事例も交えながら、採用力を高めるための現実的なアプローチを解説していきます。
採用活動における一般的な課題とその原因
企業が抱える代表的な課題は以下の4つです。
応募者数の不足
多くの企業で、「求人を出しても応募者が集まらない」という課題が見られます。応募者数が不足する背景には、採用チャネルの選択ミスや母集団形成施策の不足、求人情報の内容不足など複数の原因が考えられます。
例えば、自社のターゲット層に合わない求人媒体を使っていたり、企業の知名度が高くない状態で自社サイトと求人広告だけで募集を待っていては、十分な応募は期待できません。また、求人内容(募集要項)の情報が不十分で仕事内容や魅力が伝わらない場合、求職者の興味を引けず応募につながりにくくなります。
さらに、競合他社がより良い条件を提示している場合や、そもそも市場で該当人材が希少である場合も、応募者数が不足してしまいます。
求める人材とのミスマッチ
「応募はあるが自社が求める人材ではない」というミスマッチも一般的な課題です。これは、理想の人材像(ペルソナ)が明確でないことや、応募要件の設定が高すぎることが原因となります。
例えば、若手を採用したいのに「豊富な経験と資格」を求めてしまえば、応募はミドル層ばかりになるといったアンバランスが生じます。
また募集要項が抽象的すぎたり必須条件・歓迎条件が曖昧だと、優秀な人材が「自分では要件を満たさないかも」と応募を控えてしまう恐れがあります。
このように、自社が求める人物像と発信している求人情報とのズレが、母集団の質の低下やミスマッチを招いてしまいます。
内定辞退や早期離職の増加
苦労して採用に至っても、内定辞退や早期離職が多発するケースも課題です。
内定辞退が増える主な要因としては、候補者に対する自社の魅力付け(モチベーション喚起)が不十分で第一志望になれていないこと、そして内定後の不安や疑問を十分に解消できていないことが挙げられます。
売り手市場の中で候補者は複数社から内定を得ていることも多いため、自社を選んでもらうだけのエンゲージメントが不足していると辞退につながりやすいのです。
また、入社後すぐの早期離職が増加する背景には、面接時に聞いた話と入社後の現実とのギャップ(リアリティショック)や、受け入れ・育成体制の不備、さらには職場環境上の問題(ハラスメントなど)といった要因があります。
特に採用段階で企業側が良い面ばかりを伝えていると、入社後に「聞いていた話と違う」というギャップから短期離職に発展しやすく注意が必要です。
採用プロセスの非効率性
採用活動のプロセス自体に非効率な点が多いことも、しばしば課題となります。たとえば選考フローが冗長で意思決定に時間がかかりすぎる、あるいは社内外の調整業務が煩雑で採用担当者の工数を圧迫しているケースです。
採用では社内の面接官や役員との日程調整、応募者や人材紹介会社との連絡など、多数の関係者とのコミュニケーションが必要になり、その調整に非常に時間を取られがちです。また、統一された評価基準がないまま複数の面接官が各自の主観で判断していると、意思決定に余計な議論が発生し、プロセスが滞る原因になります。さらに、適切な採用管理システムを導入せず手作業で候補者情報管理やスケジューリングを行っている場合、重複業務や確認ミスが起きやすく非効率です。
こうしたプロセス上の無駄は、優秀な候補者が他社に先に流れてしまうリスクにもつながります。
採用課題に対する具体的な解決策
上記のような課題に対して、以下の4つの解決策が考えられます。
母集団形成の強化
応募者数不足への対策として重要なのは、母集団形成(候補者プール)の強化です。
具体的には、自社のターゲット人材に合わせて採用チャネルを最適化し、様々な手法でアプローチすることが有効です。自社に合った人材が多く集まる媒体・経路を分析して選定し直し、以下の手段を組み合わせると効果的です。
- ダイレクトリクルーティング
- 自社リファラル採用
- 求人広告サイト
- 人材紹介会社
- SNS発信
- 合同説明会
特に従来の「待ち」の採用手法(求人掲載のみ)に頼っていた場合は、ダイレクトリクルーティング(スカウト)や自社リファラル採用など企業側から働きかける攻めの施策も取り入れた方が良いでしょう。
また、企業の認知度向上や雇用ブランド(Employer Branding)を強化し、自社で働く魅力を発信することも、結果的に応募者数の増加につながります。
重要なのは、単に数を集めるだけでなく自社が求める層を狙った母集団形成を計画的に行うことです。そのために、自社の採用ターゲットを明確化した上で各チャネルに適切なリソース配分をする戦略が求められます。
選考基準の明確化と一貫性の確保
求める人材とのミスマッチを防ぐには、選考基準を明確化し、全社で一貫性を持って適用することが不可欠です。
まず採用担当者や現場の協力のもと「どんな人物を求めているのか」を言語化し、スキル・経験だけでなく価値観や将来的なポテンシャルも含めた評価基準を設定します。評価項目と判断基準が明確になれば、面接官ごとに判断軸がぶれるのを防ぎ、公平で的確な選考が可能になります。
実際、後述のRPOサービスを導入した企業で、要件定義ワークショップで理想の人物像を具体化し評価基準を策定、さらに選考フローを見直して評価シートとマニュアルを整備することで、自社の採用プロセスを「構造化」した事例があります。
このように選考プロセスの構造化を行えば、誰が面接しても共通の物差しで候補者を評価でき、主観や勘に頼った採用から脱却できるのです。
候補者とのエンゲージメント向上
内定辞退を減らし入社承諾率を上げるためには、候補者とのエンゲージメント(関係性)の向上が重要です。選考中から内定後にかけて、候補者一人ひとりに対し丁寧かつ密なコミュニケーションを図り、自社への関心と入社意欲を高める施策を講じましょう。
例えば、面接合格者にリファレンスとして社内メンバーとの懇談やオフィス見学の機会を提供したり、内定者には定期的なフォロー連絡や懇親会への招待などを行います。
ポイントは候補者の不安を解消し、「自分は歓迎され大切にされている」と感じてもらうことです。画一的で事務的な対応ばかりでは「自分には関心がなさそうだ」「不親切な会社だ」と思われ、選考辞退や内定辞退につながりかねません。逆に言えば、適切な情報提供と迅速なレスポンスで信頼関係を築くことで、内定受諾率を高めるだけでなく入社後のエンゲージメント向上にもつながります。候補者との接点すべてが入社意欲に影響すると心得て、丁寧なフォロー体制を整えましょう。
採用プロセスの効率化
採用担当者の工数を削減しプロセスの無駄を省くために、採用プロセス自体の効率化にも取り組みましょう。
まず現行の選考フローを洗い出し、不要なステップや重複を見直します。例えば、面接回数が過剰であれば適正な回数(一般的には2~3回程度)に減らし、現場面接と最終面接を一本化することも検討します。
近年は採用難の状況もあり、他社より早く内定を出すために選考回数や期間を短縮する企業も増えています。ただし面接を減らす場合でも、一回一回の面接を構造化して効率的に見極める工夫や、短期間でも候補者の志望度を高めるフォロー施策が欠かせません。
プロセス効率化のもう一つの柱はテクノロジーやツールの活用です。ATS(応募者管理システム)を導入すれば求人情報や応募者データを一元管理でき、面接日程の自動調整機能などでコミュニケーションの手間も削減できます。
また、チャットボットを採用窓口に連携すれば24時間自動で応募者対応ができるため、問い合わせ対応のスピード向上にもつながります。こうしたツール活用により、採用担当者は戦略立案や候補者との質の高い対話にリソースを振り向けることが可能になります。
最後に、プロセスを効率化する際は現場の協力も得て社内で選考フローの共有を徹底することが大切です。全員が採用の目的と流れを理解していれば、各段階で誰が何を判断し次にどう繋ぐかが明確になり、選考がスムーズに進みやすくなります。
RPOサービスの導入
実際に上記の解決策を実施しようにも、「自社だけでは手が回らない」「ノウハウがなくて上手く進められない」という企業も多いでしょう。
そこで検討したいのが採用代行(RPO: Recruitment Process Outsourcing)サービスの活用です。採用代行とは、企業の採用業務を専門会社に外部委託(アウトソーシング)するサービスで、採用課題を解決するためのプロフェッショナルな支援を受けられます。
RPOのメリット
RPOを導入するメリットとしては、大きく3点挙げられます。
一つ目はマンパワーの確保です。採用専任の人員が足りない企業でも、RPOを使えば不足する人手を迅速かつ柔軟に補うことができます。
二つ目は採用の質の向上です。外部の採用専門家の知識・経験を活用し、戦略設計やターゲット設定、選考プロセスの改善まで一緒に進めてもらえるため、結果的に歩留まりが改善し、より適切な人材の採用につながります。
三つ目はコストの削減・効率化です。自社で新たに採用担当者を増やすより短期間・低コストで専門チームを活用でき、さらに無駄な業務を見直して効率化することで採用全体のコスト圧縮も期待できます。
ただしRPO導入時には委託範囲の明確化や費用対効果の検討が必要で、自社の状況に合ったサービスを選ぶことが重要です。
RPOによる課題解決事例
実際に採用課題をRPOで解決した事例として、採用専任の部署がなく社長含め2名体制で採用を行っていた従業員規模100名以下の企業における中途採用では、担当者の勘に頼らない安定した採用の仕組みを作りたいものの、人手・ノウハウが不足して着手できないという課題を抱えていたため、RPOを導入し、採用プロセスの構築と実務支援を依頼しました。
要件定義のワークショップを実施し、求める人物像の言語化と評価基準を設定、同時に選考フローの見直しを行い、評価シートや面接マニュアルを整備して、属人的だった採用活動の「構造化」に成功しています。
加えて、エージェント(人材紹介会社)対応や応募者との日程調整・連絡といった実務面の代行も依頼し、企業側の工数負担を大幅に削減しました。その結果、導入後の中途採用では4名に内定を出し3名の入社を実現することができました。
この事例は、RPOを活用することで、限られたリソースしかない企業でも採用課題を解決し、人材確保に成功した好例と言えるでしょう。専門家の力を借りることで、自社だけでは難しかった課題の解決を短期間で実現できる点がRPO導入の大きな価値となっています。
まとめ
採用活動には「応募が集まらない」「ミスマッチが多い」「内定辞退や早期離職が相次ぐ」「プロセスが非効率」といった課題が多く見られ、その背景には人手不足やノウハウ不足、やり方の問題など様々な原因が潜んでいます。
これら課題に対しては適切な改善を行い、自社内でリソースが足りない場合は、RPOサービスの活用することが重要です。ビジネス環境の変化が激しい現代において、優秀な人材の獲得と定着は企業競争力の源泉です。本記事の内容を参考に自社の採用課題を解消して、優秀な人材を獲得していきましょう。

この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。