【具体例あり】エンジニア採用におけるペルソナとは?作り方を徹底解説
公開日: 2026年01月26日

エンジニア採用では、同じ技術力を持っていても、価値観や志向、転職理由によって意思決定は大きく変わります。その違いを言語化せずに採用活動を進めると、訴求は画一的になり、ミスマッチや早期離職が起きやすくなります。
そこで重要になるのが「採用ペルソナ」です。
ペルソナとは、単なるターゲット条件ではなく、自社が本当に採用したい人物像を、一人の人間として具体化した設計図です。
本記事では、エンジニア採用におけるペルソナの考え方から、設計に必要な項目、種類別のポイント、実務で使える作り方、具体例までを一貫して解説します。
エンジニア採用における「ペルソナ」とは
まずはエンジニア採用における「ペルソナ」とは何か。「ターゲット」との違いも踏まえて解説していきます。
採用ペルソナとは
採用におけるペルソナとは、自社が採用したい人物像を、具体的な一人の人間として言語化したものです。年齢や経験年数といった表面的な条件だけではなく、価値観、志向性、行動特性まで含めて整理します。
エンジニア採用の場合、ペルソナは次のような情報を統合した設計図になります。
- どのような経験・スキルを持っているか
- どのような考え方で仕事や技術に向き合っているか
- どんな不満や期待を持って転職を考えるのか
「ターゲット」と「ペルソナ」の違い
ターゲットとは、採用活動の対象となる人材を条件で切り取るための考え方です。
「30代」「バックエンドエンジニア」「Java経験5年以上」といった条件を定めることで、狙いを定めることができます。
一方、ペルソナは、その条件に当てはまるエンジニアを一人の人間として具体化したものです。
なぜ転職を考えるのか、何に不満を感じやすいのか、どんな点に期待して企業を選ぶのかまでを含めて、ひとりの具体的な人間として明確にします。
エンジニア採用でペルソナを明確にするメリット
エンジニア採用においてペルソナを明確にすることは、多くのメリットがあります。
候補者の「インサイト(本音)」を突く訴求ができる
ペルソナを設計することで、候補者が現在の職場に対して抱いている「具体的な不満」や、キャリアで「成し遂げたいこと」といったインサイト(深層心理)を捉えた訴求が可能になります。
単なるターゲット設定だけでは、「Java経験3年」などの表面的な属性に留まりやすく、訴求内容も画一的になりがちです。
一方で、「裁量権が少なく、技術選定に関われないことに不満を持つAさん」という具体的なペルソナがある場合、「技術選定から関われる環境で、自分の意思決定がプロダクトに反映される」といった訴求ができます。
このように、候補者一人ひとりに刺さる個別最適化されたメッセージを採用広報やスカウトで発信することで、他社とは一線を画した母集団形成や、ファン化につなげることが可能になります。
採用ミスマッチの防止
エンジニア採用では、技術力(スキル)が高いという理由だけで合格判断をしてしまいがちです。しかし、この判断は入社後のミスマッチや早期離職につながる要因になります。
ペルソナ設計には、「活躍する人材像」を描くだけでなく、「自社では活躍が難しいタイプ(NG要件)」を言語化する役割もあります。
例えば、「自走できる人がいい」といった曖昧な基準ではなく、ペルソナを通じて「困難な状況でも周囲を巻き込みながら課題解決を進める行動特性」や「自社のビジョン・価値観への具体的な共感ポイント」を明確にしておくことが重要です。
これにより、面接では高評価を得やすいものの、実際には自社で活躍しにくいタイプを事前に見極めやすくなり、スキル偏重による採用ミスマッチの防止につながります。
選考プロセスにおける「一貫した体験(採用CX)」の提供
ペルソナが言語化されていると、面接官ごとに評価がバラつく「感覚頼みの採用」から脱却できます。
スカウトからカジュアル面談、最終面接まで、ペルソナが重視する価値観(例:技術的な挑戦、ワークライフバランス)を一貫して伝え続けることで、候補者の信頼を勝ち取ることができます。採用経験の浅い現場のエンジニアも「自分たちがどのような仲間を求めているか」を共通認識として持ち、自信を持って面接に臨めるようになります。
エンジニア採用のペルソナ設計に必要な項目
エンジニア採用のペルソナ設計では、スキルや経験だけを整理しても不十分です。
採用の意思決定に影響する項目を、下記で具体的に解説していきます。
基本属性・経験・職種
まず整理すべきなのは、ペルソナの前提となる基本情報です。
ここでは理想を詰め込みすぎず、実在するエンジニア像として成立する範囲に収めることが重要です。
具体的には、次のような観点を明確にします。
- 年齢帯(例:20代後半〜30代前半)
- エンジニアとしての実務経験年数
- 現在・直近の職種(バックエンド、フロントエンド、インフラなど)
- これまで在籍してきた企業タイプ(自社開発、SIer、SESなど)
ここでは、人物像を一気に決め切ろうとしてはいけません。後続の項目と組み合わせて一人の人間像を完成させる前提で整理します。
技術スタック・スキルレベル
次に、エンジニア採用で欠かせない技術要件を整理します。
重要なのは、単に使用技術を並べるのではなく、どのレベルまで求めているのかを言語化することです。
- 実務で使用してきた言語
- メインで担当していた開発工程(要件定義、設計、実装、テスト、運用・保守など)
- 自走できるレベルか、指示があれば対応できるレベルか
- 技術選定やレビューに関わった経験があるか
ここを曖昧にしてしまうと、感覚的な判断が増え、評価が属人化しやすくなります。スキル面でも「必須要件」と「歓迎要件」を混在させないよう、注意が必要です。
キャリア志向・価値観・働き方
スキル以上にミスマッチが起きやすいのが、キャリア志向や価値観、働き方の部分です。
同じ技術力を持つエンジニアでも、「どんな仕事を通じて成長したいのか」「どんな環境で力を発揮できるのか」は大きく異なります。
例えば、技術そのものを深く追求したいエンジニアもいれば、技術を使って事業やプロダクトに影響を与えることにやりがいを感じるエンジニアもいます。また、コードを書くことに集中したい人と、将来的にチームを率いたり意思決定に関わりたい人とでは、求める役割や評価のされ方が違います。
これらの価値観をペルソナとして具体的に言語化しておくことで、求人票やスカウト文で伝えるべきポイントが明確になります。
転職理由・不満・情報収集行動
最後に、エンジニアが転職を考える背景と行動を整理します。
ここを明確にすると、母集団形成と訴求設計の精度が大きく変わります。
具体的には、
- 現職で感じやすい不満(技術的な制約、評価、成長環境など)
- 転職を考え始めるきっかけ
- 次の職場に期待していること
- 情報収集に使う媒体(スカウト、求人媒体、SNS、口コミサイトなど)
- 転職活動を始めるタイミングや温度感
この項目を整理しておくことで、 「どんな言葉で声をかけるべきか」 「どのタイミングでアプローチすべきか」といった具体的な施策判断がしやすくなります。
エンジニア種類別:ペルソナ設計のポイント
エンジニアの職種や専門領域は多岐にわたりますが、採用ペルソナ設計において最も影響が大きいのは「どの環境でキャリアを積んできたか」という点です。
ここでは、ペルソナ設計の前提条件として特に差が出やすい「Web系・自社開発」と「SIer・SES」という2つのケースに絞って解説します。
Web系・自社開発エンジニアのペルソナ
Web系・自社開発エンジニアは、プロダクトに継続的に関わる経験を前提にキャリアを積んでいるケースが多いです。そのため、ペルソナ設計では「どんなプロダクトに、どの立場で関われるのか」が重要な軸になります。
例えば、
- 技術選定や設計にどこまで関与できるのか
- プロダクトの改善がユーザーや事業にどう影響するのか
- 開発スピードと品質のどちらを重視する文化か
といった点に関心を持ちやすい傾向があります。
このタイプのエンジニアに対しては、「裁量がある」「成長できる」といった抽象的な表現よりも、実際にどんな意思決定に関われるのか、どこまで任されるのか、どれだけのインパクトを持てるのかを具体的に言語化したペルソナが有効です。
SIer・SES出身エンジニアのペルソナ
SIer・SES出身エンジニアは、プロジェクト単位での開発経験を積んできたケースが多く、
「自分がどこまで関われるのか分からない」「作るだけで終わってしまう」といった不満を抱えていることがあります。
この場合のペルソナ設計では、次の点を意識する必要があります。
- 上流工程(要件定義・設計)にどこまで関われるか
- 特定の技術・プロダクトに腰を据えて関われるか
- 客先常駐ではなく、自社の開発として位置づけられているか
SIer・SES出身者すべてが同じ志向を持つわけではありませんが、「環境を変えたい」「開発にもっと主体的に関わりたい」という動機で転職を考える人は少なくありません。
そのため、ペルソナでは現職で感じやすい不満と、次に求めている環境を具体的に言語化しておくことが重要です。
エンジニア採用ペルソナの作り方【5ステップ】
エンジニア採用のペルソナ設計は、以下の5ステップで作成します。現場と人事が一丸となって戦える土台を築きましょう。
ステップ1:事業課題から「採用の真の目的」を特定する
まずは「どんな人が欲しいか」というスキルの議論を一旦脇に置き、「なぜ今、その人が必要なのか」という事業課題に立ち返ります。
欠員補充なのか、あるいは生成AIなどの新技術を活用した事業拡大のための増員なのかによって、求める人物の役割やミッションは根本から変わるからです。
「理想のエンジニア」を追求するのではなく、入社後に「どのチームで、いつまでに、何を実現してほしいのか」という現実的な期待値を定義することが、ブレないペルソナ設計の第一歩となります。
ステップ2:現場の「ハイパフォーマー」から活躍する要素を抽出する
ペルソナを作成するにあたって、現場エンジニアへの深いヒアリングが欠かせません。
現在自社で活躍している社員の共通点を探り、「エンジニアとしてどのようなスキル・経験を持っているか」や、「どのように課題を特定し、実行するか」「周囲とどう関わっているか」といったポータブルスキル(行動特性)、「自社に合うのはどんな価値観の人か」を徹底的に議論し、共通の言語を持つことで、人事と現場の認識の乖離を未然に防ぐことができます。
ステップ3:過去の失敗から「NG要件」を明確化する
採用の精度を高める鍵は、「自社では活躍が難しいタイプ」の言語化にあります。
過去の早期離職やミスマッチの事例を振り返り、「面接では魅力的に見えるが、自社の組織文化や現在のフェーズでは活躍が難しいタイプ」「スキルは高いが早期離職に繋がるタイプ」を特定します。
ステップ4:候補者の「インサイト(本音)」を言語化する
収集した情報を統合し、一人の人物像として描き出しますが、ここで最も重要なのは「候補者の転職動機や本音」というインサイトを捉えることです。
その人物が現在の職場で抱いている具体的な不満(例:技術選定の裁量がない、レガシーな環境から脱却したい)と、それを自社がどう解決できるかを結びつけます。
文章で説明できるレベルまで具体化できれば、「なぜあなたに声をかけたのか(Why you?)」が伝わる、個別最適化されたスカウト文章や、面接での魅力付けの武器になります。
ステップ5:選考プロセス全体を「ペルソナ視点」で一貫させる
最後に、作成したペルソナを経営・人事・現場で共有し、全員が同じ視点で候補者を評価できる評価基準(評価シート)へと落とし込みます。
ペルソナが言語化されていれば、カジュアル面談から最終面接まで、候補者が一貫して「自社が必要としているのは自分だ」と感じられる高い候補者体験(採用CX)を提供できます。
一度作って終わりにせず、市場の反応や選考の歩留まりを確認しながら、定例ミーティングなどで柔軟にブラッシュアップし続けることが、再現性のある採用成功への近道です。
エンジニア採用におけるペルソナの具体例
ここからは、実務で機能するペルソナの例を紹介します。
このペルソナは、一定の開発経験を持ちながらも、「決められた範囲でしか動けないこと」に違和感を覚えているエンジニアです。スキル不足ではなく、環境要因によって成長実感を得られていない点が特徴です。
プロフィール:
学歴・経歴:私立大学の理系学部卒。新卒で従業員数300名規模の一般企業に入社し、社内SEとして3年程度勤務。
年収:
420万円〜480万円。
現在の状況:
基幹システムや社内ツールの保守・改修が中心。ベンダーコントロールが主業務となり、自分でコードを書く機会が減っている。
インサイト(本音の転職動機)
・技術的な判断を外部ベンダーに委ねる場面が多く、「自分は調整役で終わるのではないか」という不安がある。
・新しい技術に触れる機会が少なく、市場価値が緩やかに下がっていく感覚がある。
・指示待ちや前例踏襲の文化に疲れ、主体的に考えて動ける環境を求めている。
自社が提供できるベネフィット(刺さる訴求):
・内製開発チームの一員として、設計から実装まで一貫して関われる環境。
・技術選定や改善提案を歓迎する文化。小さな改善でも自分の判断で進められる裁量。
・社内外の調整よりも、プロダクトそのものに集中できる役割設計。
この層のエンジニアは、年収や知名度よりも「自分の判断で価値を出せるか」を重視します。
スカウトでは、「なぜこれまでの社内SE経験が活きるのか」を具体的に伝え、面談では、過去に自分で考えて改善した経験を深掘りし、自社での再現性を示します。こうすることで、入社後にどこまで裁量を持てるのか、曖昧にせず言語化できます。
エンジニア採用の成功事例
ここからは、株式会社アールナインの採用代行(RPO)サービスを利用し、実際にエンジニア採用を成功させた企業の事例を紹介します。
【株式会社クラステクノロジー】IT・DX支援業界|“ひとり人事”でも新卒・中途エンジニア採用を両立。戦略と工数の両面を支援
■企業概要
- 業種:製造業向けDX支援(IT/システム開発)
- 従業員規模:〜100名(99名/2025年2月時点)
- 採用対象:エンジニア職(中途・新卒採用)
■導入前の課題
- 採用専任者は不在。1人で採用業務を兼務しており、工数が足りない
- 新卒採用はエージェント任せで紹介数・質にバラつき、中途採用はノウハウ不足と市場理解の乏しさから戦略的に動けなかった
- エージェント活用も要件伝達が不十分で、ミスマッチが多発
- “何をどう進めればいいか分からない”という状態が続いていた
■RPO導入の目的・背景
- 採用ノウハウと工数、両面での支援が必要だった
- 新卒・中途の両領域で対応できる柔軟性と実務代行+戦略支援のハイブリッド型に魅力を感じた
- すでに研修サービスで取引があり、自社理解がある安心感と信頼感から依頼を決定
■導入内容・範囲
- エージェント対応
- 要件定義・求人票のブラッシュアップ支援
- 媒体選定・意向上げのフォロー戦略の設計と改善アドバイス
- 10社以上のエージェントから月30件以上の推薦を一括管理・スクリーニング
- 学生向け会社説明会・面接への同席と内容改善提案(新卒のみ)
■導入後の成果
- 理系新卒エンジニアの複数名採用に成功。営業職も数年ぶりに目標達成
- 中途ではエンジニア・経理・営業事務など幅広い職種で採用成功
- 要件の明確化・選考プロセスの改善によりマッチ率が向上
- 推薦精度が上がり、採用の質と効率が両立できる体制を構築
- 工数削減により、エージェントへのフィードバックや内定後フォローにも注力可能に
💡この事例のポイント
✔ 「ひとり人事」でも実現できる、戦略型RPOの活用事例
✔ 単なる作業代行ではなく、採用全体をともに設計し育てる“パートナー型支援”
✔ ノウハウ不足×工数不足という中小企業のリアルな課題に、実務と戦略の両軸で支援し成果を創出
まとめ
エンジニアとしてのスキルや経験だけでは見えない「転職理由」「価値観」「行動特性」まで含めたペルソナを言語化することで、採用ミスマッチや早期離職のリスクを大きく下げつつ、「選ばれる採用」に近づけていきましょう。
まずは、本記事で紹介した項目とステップをもとに、「今、自社が本当に採るべきエンジニアは誰なのか」を言語化するところから始めてみてください。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。













