採用マーケティングのフレームワーク10選|活用手順までわかりやすく解説
公開日: 2026年04月28日
採用マーケティングに取り組む企業が増えるなかで、「どのフレームワークを使えばよいのか」「自社の採用活動にどう落とし込めばよいのか」と悩む担当者は少なくありません。
採用マーケティングのフレームワークは、知識として覚えるだけではなく、採用ターゲットの整理・訴求設計・施策改善に分けて活用することが重要です。目的に合わないフレームワークを使うと、分析だけで終わってしまい、応募数の増加や採用ミスマッチの改善につながりにくくなります。
本記事では、累計800社以上の支援で培った「採用ノウハウ」をもとに、採用マーケティングで使える代表的なフレームワークと、実務での活用方法を解説します。読み終える頃には、自社の採用課題に合わせて使うべきフレームワークと、具体的な活用手順が分かります。
採用マーケティングとは
採用マーケティングとは、企業が求める人材を獲得するために、マーケティングの考え方や手法を取り入れて採用活動を設計・実行する取り組みを指します。従来の「求人を出して応募を待つ」という受動的な採用手法とは異なり、求職者に選ばれるための戦略を立て、接点づくりから応募、入社までを一貫して設計する点に特徴があります。
具体的には、自社がターゲットとする人材像を明確にし、その人材に適したチャネルやメッセージを設計します。そのうえで、認知獲得、興味喚起、応募、選考、内定承諾といった一連のプロセスを最適化しながら、継続的に改善を行います。
また、採用活動を単発の施策として捉えるのではなく、「データに基づいて改善を繰り返す仕組み」として設計することも重要な要素です。応募数や選考通過率、内定承諾率などの指標をもとに、どの工程に課題があるのかを可視化し、施策の精度を高めていきます。
このように、採用マーケティングは「誰に・何を・どのように届けるか」を体系的に設計し、採用成果の最大化を目指す考え方といえます。
なぜ今、多くの企業が採用マーケティングに力を入れ始めているのでしょうか。その背景には、いくつかの構造的な変化があります。
採用マーケティングが注目されている背景
なぜ今、多くの企業が採用マーケティングに力を入れ始めているのでしょうか。その背景には、いくつかの構造的な変化があります。
極度な売り手市場と労働人口の減少
採用マーケティングが注目されている最大の背景は、少子高齢化に伴う労働人口の減少と、それによる採用競争の激化です。かつてのように求人媒体へ掲載し、応募を「待つ」だけの採用手法では、母集団すら十分に集まらないケースが増えています。
こうした環境下では、不特定多数に向けた訴求ではなく、特定のターゲットに対して自社の魅力を的確に伝え、「選ばれる状態」をつくることが不可欠です。この考え方が、採用マーケティングが必要とされる大きな理由の一つです。
働き方に対する求職者の価値観の変化
求職者が企業選びで重視するポイントも、大きく変化しています。マイナビの「2026年卒大学生就職意識調査」(2025年4月)によると、最も多くの学生が挙げた就職観は「楽しく働きたい」(51.4%)でした。
また、「個人の生活と仕事を両立させたい」という回答も年々増加しており、特に女性や文系学生を中心にその傾向が強まっています。
このように、求職者は「誰にとっても良さそうな企業」ではなく、「自分に合った企業」を探すようになっています。だからこそ、採用活動においてはターゲットを明確にし、その層にしっかりと刺さるメッセージを定め、届けることが重要になっているのです。
※出典:マイナビ「2026年卒大学生就職意識調査」https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250423_95696/
採用マーケティングで活用できるフレームワーク10選
採用マーケティングでは、感覚的に施策を行うのではなく、フレームワークを活用して体系的に設計することが重要です。ここでは、採用活動に応用できる代表的なフレームワークを紹介します。
ペルソナ分析
ペルソナ分析とは、自社が採用したい人物像を具体的に言語化し、ターゲットを明確にする手法です。単なる「20代・営業経験あり」といった表面的な条件ではなく、思考や価値観、行動特性まで踏み込んで設計する点が特徴です。
例えば、「なぜ転職を考えているのか」「どのような情報収集をしているのか」「仕事において何を重視するのか」といった観点で深掘りすることで、より解像度の高い人物像を描くことができます。
一方で、ペルソナが曖昧なままでは、「誰にも刺さらない情報発信」になりやすく、応募数や質の低下を招く要因となります。
採用マーケティングの起点は「誰に届けるか」を決めることにあります。そのため、ペルソナ分析はすべての施策設計の土台となる重要なフレームワークといえます。
ファネル分析
ファネル分析とは、求職者が自社を認知してから応募・入社に至るまでのプロセスを段階ごとに分解し、どこに課題があるのかを可視化する手法です。
一般的には「認知 → 興味・関心 → 応募 → 選考 → 内定承諾」といった流れで整理され、それぞれの段階での数値を把握します。
例えば、「応募数は多いが選考通過率が低い」「説明会参加は多いが応募に繋がらない」といったように、どの工程で離脱が発生しているのかを明確にすることができます。
ファネル分析を行うことで、以下のような改善につながります。
・ボトルネックとなっている工程の特定
・施策の優先順位の明確化
・データに基づいた改善サイクルの構築
採用活動全体を俯瞰し、効率的に成果を高めるためには欠かせないフレームワークです。
4C分析
4C分析とは、顧客視点でマーケティング戦略を整理するフレームワークであり、採用においては「求職者視点」での設計に活用されます。
4つの要素は以下の通りです。
・Customer Value(求職者にとっての価値)
・Cost(入社に伴う負担)
・Convenience(応募・選考の利便性)
・Communication(情報提供・コミュニケーション)
採用活動では、企業が伝えたいことだけでなく、「求職者が何を知りたいか」「どのような不安を感じるか」を起点に設計する必要があります。
例えば、選考フローが長すぎる場合は「Cost」や「Convenience」に課題があるといえますし、情報不足で志望度が上がらない場合は「Communication」に改善余地があります。求職者目線で採用プロセスを見直すことで、応募率や内定承諾率の向上につながります。
3C分析
3C分析とは、「Company(自社)」「Customer(求職者)」「Competitor(競合)」の3つの視点から市場環境を整理するフレームワークです。
採用においては、以下のように整理します。
・Company:自社の強み・魅力・課題
・Customer:ターゲット人材のニーズ・価値観
・Competitor:他社の採用条件や訴求内容
この3つを比較することで、「自社がどのポジションで勝てるのか」「どのような訴求が差別化につながるのか」を明確にできます。
例えば、給与面で競合に劣る場合でも、「成長機会」や「裁量の大きさ」といった別の価値で差別化する戦略を立てることが可能になります。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境を整理し、戦略立案に活用するフレームワークです。
4つの要素は以下の通りです。
・Strength(強み)
・Weakness(弱み)
・Opportunity(機会)
・Threat(脅威)
採用においては、自社の強み・弱みを把握するだけでなく、市場環境や競合状況も踏まえて戦略を検討することが重要です。
例えば、「若手が活躍できる環境(強み)」と「若手人材の採用競争激化(脅威)」を掛け合わせることで、どのような打ち出しが有効かを考えることができます。
STP分析
STP分析とは、「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(ターゲットの選定)」「Positioning(立ち位置の明確化)」の3ステップで戦略を設計するフレームワークです。
採用においては、まず求職者市場を属性や志向で細分化し、その中から自社に適したターゲットを選定します。そのうえで、競合と比較した際の自社の強みや特徴を明確にします。
このプロセスを踏むことで、「誰に対して、どのような価値を提供する企業なのか」が整理され、メッセージ設計の精度が高まります。
ターゲットが曖昧なままでは、訴求がぼやけてしまうため、採用マーケティングにおいて重要なフレームワークの一つです。
PEST分析
PEST分析とは、外部環境を「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの観点から整理するフレームワークです。
採用市場は、社会情勢や技術の進化によって大きく変化します。例えば、リモートワークの普及や副業解禁といったトレンドは、求職者の価値観や働き方に影響を与えています。
PEST分析を行うことで、こうした外部環境の変化を捉え、自社の採用戦略に反映させることができます。
中長期的な視点で採用を考える際に有効なフレームワークです。
5フォース分析
5フォース分析とは、業界の競争環境を5つの要因から分析するフレームワークです。
採用においては、以下のように応用できます。
・競合企業との人材獲得競争
・求職者の交渉力(条件交渉など)
・代替となる働き方(フリーランス・副業など)
・新規参入企業の増加
・採用手法の変化(ダイレクトリクルーティングなど)
これらの要因を整理することで、自社が置かれている採用環境をより深く理解できます。
TMP設計
TMP設計とは、「Target(ターゲット)」「Message(メッセージ)」「Process(プロセス)」の3つを整理し、採用戦略を具体化するフレームワークです。
・Target:どのような人材を採用するのか
・Message:その人材に何を伝えるのか
・Process:どのような手段・流れで接点を作るのか
この3つを一貫して設計することで、採用活動にブレがなくなり、効果的な施策が実行しやすくなります。個別施策ではなく、全体設計を意識した採用マーケティングを実現するために重要な考え方です。
採用カスタマージャーニー
採用カスタマージャーニーとは、求職者が企業と接触してから入社に至るまでの一連の体験を時系列で整理し、可視化するフレームワークです。
求人サイトやSNS、説明会、面接といった各接点において、求職者が得る情報や感じる印象を具体的に洗い出します。単なる接触履歴ではなく、「どのタイミングで関心が高まるか」「どこで離脱や不安が生じるか」といった心理の変化まで捉える点が重要です。
このプロセスを明確にすることで、接点ごとの課題や改善余地を特定しやすくなります。結果として、求職者体験を最適化する施策設計が可能となり、応募率や内定承諾率の向上につながります。
各フレームワークの活用手順
採用マーケティングにおけるフレームワークは、個別に活用するだけでは十分な効果を発揮しません。各フレームワークを役割ごとに整理し、戦略設計から改善まで一連の流れの中で活用することが重要です。ここでは、実務で活用しやすい基本的な手順を解説します。
①ペルソナを設計する
最初に取り組むべきは、採用したい人材像の明確化です。ペルソナ分析を用いて、スキルや経験だけでなく、転職動機や価値観、情報収集の手段まで具体的に整理します。
この工程は、すべての施策の土台となります。ターゲットが曖昧なままでは、メッセージやチャネル選定に一貫性がなくなり、成果につながりにくくなります。そのため、可能な限り具体的に設計することが求められます。
②市場・競合環境を整理する
次に、採用市場の状況を把握します。3C分析やPEST分析、5フォース分析を活用し、求職者の動向や競合企業の採用活動、自社を取り巻く外部環境を整理します。
このプロセスを通じて、「どの領域で競争が激しいのか」「どのような人材に対してアプローチすべきか」といった戦略の前提条件が明確になります。感覚ではなく、環境に基づいた判断を行うことが重要です。
③自社の強みとポジションを明確にする
市場環境を整理したうえで、自社の強みや課題を明確にします。SWOT分析を活用して内部と外部の要因を整理し、STP分析によってターゲットとポジショニングを具体化します。
ここでは、「競合と比較した際に、自社がどのような価値を提供できるのか」を言語化することが重要です。給与や条件面だけでなく、成長機会や働く環境なども含めて整理することで、差別化の軸が明確になります。
④メッセージと導線を設計する
次に、ターゲットに対してどのように情報を届けるかを設計します。TMP設計や4C分析を活用し、「誰に・何を・どのように伝えるか」を具体化します。
求職者の視点に立ち、「どの情報が意思決定に影響するのか」「どのタイミングで接触すべきか」を整理することで、効果的なコミュニケーション設計が可能になります。また、応募までの導線をスムーズに設計することも重要なポイントです。
⑤候補者体験を可視化する
続いて、キャンディデートジャーニーを用いて、求職者の体験を時系列で整理します。各接点において、どのような情報に触れ、どのような印象を持つのかを具体的に洗い出します。
このプロセスにより、志望度が高まるポイントや離脱が発生しやすいポイントが明確になります。結果として、体験の質を高めるための改善施策を設計しやすくなります。
⑥データをもとに改善を繰り返す
最後に、ファネル分析を活用して各工程の数値を可視化し、継続的に改善を行います。認知数、応募数、選考通過率、内定承諾率などの指標をもとに、どのプロセスに課題があるのかを特定します。
そのうえで、課題に応じた施策を実行し、再度数値を確認するというサイクルを回していきます。この改善の積み重ねが、採用成果の向上につながります。
採用マーケティングの成功事例
採用マーケティングの視点を取り入れ、自社の課題を解決して採用成功に至った具体的な事例を紹介します。
事例1:株式会社クラステクノロジー
【課題】
専任の採用担当がおらず、新卒・中途ともに母集団形成から見極めまで手探りの状態でした。特に新卒採用では、会社説明会から選考への「移行率(歩留まり)」が低いことが課題であり、理系エンジニアの採用に苦戦していました。
【施策】
プロが定例ミーティングで選考データを分析し、説明会に課題があることを特定。実際に説明会に同席して客観的なフィードバックを行いました。
また、理系学生には技術的な専門用語を交えて具体性を出し、文系学生には平易な表現を用いるなど、ターゲットに合わせて「伝え方」をチューニング。会社概要だけでなく、個人のキャリアパスへと展開するストーリー構成にブラッシュアップしました。
【結果】
学生の満足度が向上し、説明会後の選考移行率が大幅に改善。苦戦していた理系学生のエンジニア採用に成功したほか、複数職種での目標達成を達成し、選ばれる採用を実現できました。
事例2:株式会社ライオンハート
【課題】
会社の成長に伴い、初めての新卒採用に挑戦することになりましたが、社内にノウハウやリソースがありませんでした。ナビ媒体に求人を出すだけでは、自社の魅力が学生に届かず埋もれてしまう懸念がありました。
【施策】
まずは「新卒採用で何を目指すのか」「どんな人材に来てほしいのか」というターゲット戦略部分から言語化し、ターゲット像を明確にしました。
そこから、マス向けのアプローチではなくダイレクトリクルーティング(スカウト)を活用。学生一人ひとりのプロフィールや価値観を読み込み、「なぜあなたに声をかけたのか」という個別最適化された熱量の高いメッセージを作成・配信しました。
【結果】
ターゲットの心に刺さるアプローチにより質の高い母集団が形成でき、初めての新卒採用ながら目標の3名を無事に達成。採用活動そのものが自社の魅力を再定義する機会となりました。
事例3:羽田空港サービス株式会社
【課題】
グランドハンドリング職の採用目標が、前年の約50名から約100名へと倍増。自社サイトやナビ媒体だけでは母集団が集まらず、人材紹介会社(エージェント)の活用を検討しましたが、多数のエージェントと個別にリレーションを築くマンパワーがありませんでした。
【施策】
外部のプロにエージェントとの窓口業務を一元化(エージェントコントロール)。推薦数が伸び悩んでいた際、どの企業が採用競合としてバッティングしているのかを分析し、その上で自社の訴求ポイントを見直しました。
そこから、エージェントが候補者に魅力を伝えやすいよう、職種の内容や魅力を1枚にまとめた資料(ペライチ)を作成・配布しました。
【結果】
エージェントからの推薦数および推薦の「質」が劇的に向上。エージェント経由で毎月安定して入社承諾を獲得できるフローが構築され、目標の約100名採用を見事達成しました。
まとめ
採用マーケティングは、単に手法やフレームワークを知るだけでは成果につながりません。重要なのは、「誰を採用したいのか」を起点に、市場環境の把握、自社の強みの整理、メッセージ設計、そして改善までを一貫して実行することです。
本記事で紹介したフレームワークは、それぞれ単独で使うものではなく、役割ごとに組み合わせながら活用することで効果を発揮します。特に、ペルソナ設計と競合分析を軸に据えることで、採用活動全体の精度が大きく変わります。
また、採用は一度設計して終わりではなく、データをもとに継続的に見直していくことが求められます。応募数や通過率といった数値を確認しながら改善を重ねることで、より効率的かつ効果的な採用活動が実現できます。
採用環境が厳しさを増す中で、マーケティング視点を取り入れた戦略的な採用活動は、今後ますます重要性が高まっていきます。まずは自社の採用プロセスを見直し、できる部分からフレームワークを取り入れていくことが、成果につながる第一歩となります。
この記事の監修者:
1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2,000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5,000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。













